詩集
おぬし
芥川三平


おぬし


パンツが古くなって

おぬしの眼の前に

穴があいてるのを知っていた

古いものを大切にと

平素婆さんにいってあるのだが

繕いはまだ

むし暑いので

そのパンツ一枚で

仏書を読んだ

疲れて視線を下へ落とすと

なんとパンツの破れから

使い古したおぬしが

亀の頭を出している



お前も読んでいたか

親子二人で読むか

おぬしにいい聞かせ

読み進んでいくうちに

おぬしのことを忘れてしまった

ひと区切り読了して

はっとおぬしに気がついた

小水の用具になり果てたおぬし

せめて若いときの

元気を出してみよと

亀の頭にこっぱちを入れてやると

それでも

まだちんと音がしたので

そうか そうか

おぬしをパンツの穴から

奥へ隠してやった



これからはおぬしと二人で

こころをこめて仏書を読み

仏の境界を考えることにしよう

そう思ったら

ごそごそ

おぬしの動く気配がした