この「フィッシュウォッチングセミナー」というコラムは、ダイレクトメールでダイブログの会員に郵送していましたが、HP開設に伴って、公開することにしました。つたない文面ですが、一人でも多くの人にFWの楽しさが伝われば、幸いです。

 
今回の出演者は…
  くらかけ
フレームインするクラカケトラギス 
 

フィッシュウォッチングセミナーNo.60

 ちょっと前にダヴィンチコードという映画がありました。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵の中に隠された暗号を解読して、キリスト教の秘密を…みたいな内容でした。今まで何万人もが見ている名画の中に暗号化したメッセージが込められていたなんて、何ともニクい設定ですが、そもそも解明されていゆく謎の核心が「キリスト教の秘密」とか「聖杯伝説」とかで、キリスト教に無縁の私にはまるでピンときません。はっきり言って、前評判の割にイマイチでした。実は、魚の模様の中にも、色々な暗号が隠されています。ダ・ヴィンチコード程の大袈裟なメッセージではありませんが、この暗号の存在を知った事で「潜って実物が見たいな」と思って頂けたら嬉しいです。

ナンヨウハギは、ディズニー映画「ファインディングニモ」に脇役で出演していて、ダイバーはもちろんノンダイバーのファンも増やしました。鮮やかな青い体色がまさにトロピカルです。そしてその鮮やかさこと、暗号を隠すトラップだったのです。美しい“青”に目を奪われず、逆に“黒”のエリアに注目して下さい。見えて来ましたか?何と「OKサイン」です。「大丈夫かい?」と問いかけるように…または「大丈夫だよ」と励ますように見守っています。沖縄でなくても沖ノ島(高知)なら実物に会えます。
紀伊大島の泥ハゼコースでは、クラカケトラギスはハゼの観察を邪魔する嫌われ者ですが、もし彼のメッセージに気付いたら、印象が変わるはずです。トラギス独特の意味不明の連続斑紋…クラカケではピースサインに見えます。美ハゼにピンとを合わせてシャッターチャンスを息を詰めて待ってるのに横から「ピース、ピース」と現れます。奴のメッセージは「俺も写して!」と推理できます。こいつはTVレポートの背景によくいる若者と同じただの写りたがりです。できたら一枚ぐらい写してあげて下さい。

何年ぐらい前でしょうか…テグリの仲間の区別について図鑑を開けて考え込んでいました。ニシキテグリはわかるけど、他の赤い系のヤツ…ミヤケ、ヤマドリ、セソコ、アカオビコテグリなど…どれも似ていて、よくわかりません。「南部(みなべ)によくいるのがミヤケで…」と思いながらミヤケテグリの模様を見ていると、突然もつれた糸がほどける様に暗号がとけてメッセージが飛び込んできました。答えは「梅の花」でした。魚の側線を梅の枝に見立てたら、南部梅林の紅梅の一枝にそっくりです。このことで、ミヤケテグリだけはひと目でわかる様になり、やがて連鎖的に他の赤いテグリも見分けられる様になりました。ついでに砂地のテグリ(ネズッポ)の数種に白梅が描かれている事にも気付いて、ネズッポの区別もできるようになりました。ミヤケは南紀各地で、ネズッポは敦賀が見やすいです。

私は作業の関係で日本海の若狭湾沿岸をよく潜ります。太平洋のように派手な魚は少ないですが、仕事の手を止めさせるに十分な面白い魚が多く見られます。アナハゼはこの現場で多く見られる魚のひとつですが、よく似たアサヒアナハゼが少数混在するので、悩ましいながらも楽しい現場です。ある日、手元に現れたのが、アナハゼでもなくアサヒアナハゼでもなく…あとで図鑑を見る時の為に模様を覚えておこうとガン見していました。魚は動くし、模様はつかみどころのない変な形やし…、でも暫くするとだんだん暗号が解けてきて、「綱引きをする人々」に見えてきました。面白くて何度も見てるうちに、それ以外には見えなくなってきました。自宅に帰って図鑑を開いたら、ひと目で確信しました。オビアナハゼでした。同じような例ですが、ダンダラダテハゼの斑紋はラブラブなカップルのシルエットに見えます。観察者の妄想力によって、「寄りそう二人」にも「抱きあう二人」にも「チューする二人」にも見えます。南部でも辛うじて見れますが、柏島にはいっぱいます。

今年はネズミ年…私は4回目の年男です。思えば長いこと魚ばっかり見てきたもんです。たまには沖縄とか遠くの海にも行きますが、やっぱりメインは南紀です。南部や串本の魚達のことは20年以上も定点観察してきたことになります。「同じ所ばっかり潜っててよく飽きないねぇ」と言われます。もし本当に同じだったらすぐに飽きると思いますが、実際は同じポイントでも潜るたびに新しい発見があって、飽きさせてくれません。20年以上魚フェチをやってても、今だに見たことのない魚に出会うんだから、すごい事です。それに、たとえ新しい魚種に会えなかったとしても、常連の普通種が今まで見たことない表情や動き、色彩を見せてくれる事も…そして体の模様の中に暗号を見つける事もあります。
魚の魅力は無限ですね。

 

 E mail    divelog@nifty.com