「あの夏、いちばん静かな海」では少年と少女がつきあっていることは、説明されはしません。しかし、彼らの結び付きの強さは見ているうちに自然に感じられます。おそらくそれは、「あの夏、いちばん静かな海」は愛の映画だからではないでしょうか。愛には説明はいらない。よくある「これはおまえをこれほどまでに愛している」といった押しつけは、真の愛の前には崩れてしまうのです。少年がいて、そのとなりに少女がいる。この映画の愛は、決して画面をおおいつくすような言葉や演技ではない。画面を見ている人が彼らの愛を自分の手で描くのです。そんな気がします。
-恋愛はいくらでも演技できるが、愛は演技できない。ただ、そこにあることだけで素晴らしいものが愛だからだ。 蓮實重彦「映画に目が眩んで」-