最近の映画を見ていて、というより、映画を見るたびにほとんど必ず「この映画ではこんなことが描きたいのだ」ということの押し付けが多い。「私達はこんなに愛しあっているんですよー」「こんなに悲しいんですよー」わかった、わかった。もういいよ。優れた映画とは、描かれることがなかったことを観ている人に描かせる作品のことである。この映画の主人公は柄本明である。そして、柄本明の思いが観ている人には伝わってくる。これこそ、傑作の条件を満たしている。
試合に勝った喜びをどうあらわすか。映画の中で彼らは彼らにしかわからない方法で喜びを表現する。表情やしぐさや台詞ではなく、ぶつかり稽古によって喜びを表現する。この気高さが貴いのだ。我々の’土俵’に下りてくることのない。われわれの”土俵=ことば”なんかに降りてこない気高さには涙、涙。