『地獄の警備員』

上映終了後1時間半たって、ようやく失語性から回復した。
1カットが強烈だった経験は本当に久しぶりだった。

★★★
1992/6/26 シードホール


 上映終了後1時間半たって、ようやく失語性から回復した。とにかく、ショックだった。あれほどまでに、1カットが強烈だった経験は本当に久しぶりだった。洞口依子が画面に出てきたとき、とにかく戦慄が走った。彼女はなにもしない。ただ、画面に映るだけだ。しかし、その瞬間ぼくは口がきけなくなったのだ。そして、ようやくしゃべれるようになってこの文章を書いている。

 この映画は信じられないことばかりだ。あまりにリアリティのないセット、照明、だが、それを自然に受け入れてしまう映画という世界がさらに信じられない。そして、手抜きとしかいいようのないパンフ。解説、あらすじは普通のパンフ同様平坦でつまらないし、中に書かれている筒井さんの文章は、あまりおもしろくない上に、「キネマ旬報」からの転載だ。制作秘話など一切ないし、到底アテネフランセが作っているとは思えないほど凡庸なこのパンフは信じられないことに600円もするのだ。詐欺だよ。

 この信じられないことだらけの中でも、この映画自体の持つ力は絶対に信じられる。最後の5分間の充実感は何にもかえがたい。

 といっても、ぼくもこの映画に対し全面的には賛成することはできない。どうも、セリフにあまりにも力がないのだ。映像、演出で見せようとするのはいいが、バランスが悪いような気がした。非常に恐いのだが、映画自体は連続性に欠けるように思われる。

また、せっかく、”人を守るはずの警備員が人に襲いかかる”という素晴らしいプロットを持っているのにそれがうまくいかされていなかった。これは理由はよくわかりません。

 だが、この映画は1シーンだけからでも絶賛したくなる映画であるし、数ある不満を黙らせる力がある。

 前の回に藤田敏八大先生もいらしていた。彼は映画を撮らないのだろうか。