『ヘンリー』

ぼくの完敗だ
ノックアウトさせられた。すごいよ。でもね

★★★★
1992/7/7 新宿武蔵野館 21:00


 「ヘンリー」、あんたの勝ちだ。ぼくは、この映画に対して全面的に賛成するわけではないけど、あんたには完全に負けたよ。ノックアウトさせられた。すごいよ。この制作費でこれを撮られたら、たまんないな。

 主人公にはモデルがいるようだけど、関係ないよね。この映画は絶対フィクションであり、しかもノンフィクションよりはるかにリアルだ。パワーがある。パンフにある「現代社会の異常さを浮き彫りにする」なんてウソだ。この映画は現代社会とは何の関係もない「映画」なんだ。

 とにかく、”描かない”ことをポイントにしている姿勢は買える。だから、次に何が起こるか全然予想もつかないから、恐いんだよ。あの「羊たちの沈黙」よりも全然恐い。デミの大ファンのぼくもそれは認めざるを得ない。

 しかしさぁ、一言だけ言わせてくれ。最後にモーテルから出てきたところで、勝負は決まっていた。あんたの圧勝さ。そこでゲームセットだった。だけど、あんたはそこでゲームを終えずに、その後でバントをするような手堅い攻撃をくらわせたよな。あれは余計だよ。少なくとも、今までの豪快さを裏切ってしまった。それが、残念だった。

 でも、いずれにしてもぼくの完敗には変わりがない。すごいよ、「ヘンリー」は。