映画という手法が得意とするシチュエーションに「すれ違い」というものがあります。観客からは両者を同時に見ることができるが、本人同士は気付かない、というのは、カメラの位置を自由に動かせる映画では非常に効果的に見せることができます。最近だと岩井俊二の『ラブレター』がうまくこの「すれ違い」を使っていました。『アパートメント』も複数の登場人物のすれ違いをうまく描いています。
ただ、だからといっても単純な映画ではない。主演であるはずのロマーヌ・ボーランジェがなかなか画面に出てこないのも、映画がいかに複雑だったかということを示している。
また、今一つ感情移入できなかったのは、ヴァンサン・カッセル演じる主人公の行動があまりに場当たり的で、理解に苦しむものだったからだろう。このあたりは、話をもう少し整理する必要があっただろう。奇をてらうのは、悪いことではないのだが、観客を十分に納得させることができないと、その部分が浮き上がってしまうのだから。
けれど、共演のモニカ・ベルッチはすごく魅力的に描かれていたし、楽しめはしたので、この監督ジル・ミモーニはこれから楽しみだと思う。