これは、非常にうまいです。章仕立ての構成、そこに流れる70年代のロックもいいですね。ロックは70年代と信じて疑わない元プログレ小僧にはこういうのもたまりませんね(笑)。
映画自体も抑制が利いた演出で、”うまい”と何度も思いました。しかし、ちょっとできすぎという感じを受けました。痛みすら感じる話なのに、手際よく処理して、口当たりのいい作品に仕上げる、これは本当に高度な技術が要求されます。そして、この映画ではそれに成功しています。それだけでも、価値があるし、かなり高いレベルのものと言えるでしょう。
ただ、その口当たりのよさによって、何かが失われているような気もしました。それは、しっかりとものを見据えるという心構えのような気がします。例えば、『ゆきゆきて、神軍』で病人を蹴りつける奥崎謙三や、映画『ヘンリー』で、高速で走っている車に向かって楽しそうに発砲するヘンリー・ルーカス、『カップルズ』で銃を打ち続けるレッド・フィッシュなど、観客として正視し続けなければならない姿勢を課すような、厳しさがありました。この映画では、そういう部分が希薄だったように思えました。子供たちに石をぶつけられるところなどはそうだったのですが、いろんな部分を観客にぶつけてくるわりには、圧倒されることはなかったです。それが、ちょっと残念でした。しかし、これは個人の好みなのかもしれません。