ぼくは、阪本順治のファンです。好きな映画監督の一人に必ず挙げるほどです。しかし、だからといって彼の作品のすべてを絶賛しているわけではありません。『どついたるねん』『王手』などは文句なしに好きですが、『ビリケン』はあまり気に入ってはいません。『トカレフ』を観た時には、座席から立ち上がれないほど打ちのめされましたが、この映画を他の人に否定されても文句は言えません。失敗作ぎりぎりの作品だとぼくも認めます。逆に、『鉄拳』などは少しも好きにはなれない映画なのですが、なぜかもう1度劇場で観てみたいと思っています。彼はぼくにとってまさに一筋縄ではいかない監督なのです。
そういうわけなので、いつも注目している監督のせいか、ちょっとした不満がすごく大きなもののような気がしてしまうのです。そんなぼくには、この『傷だらけの天使』には満足できなかった。これが、映画を初めて監督するというならそれなりに評価したでしょう。でも、ぼくにとっての彼はそうではない。これは、去年、『クロッシング・ガード』を観た時にも同じ様な感じをうけました。『インディアン・ランナー』を既に観てしまっていた自分には、不幸にも新作を諸手をあげて支持することができなかった。これがもし、処女作だったら、またショーン・ペンじゃなかったら、『インディアン・ランナー』を観ていなかったら、、、この『傷だらけの天使』も同じで、このレベルなら到底満足できないのです。
豊川と真木の掛け合いもあまりおもしろくないし、その間に挟まる子供も魅力的ではない。菅原文太はもっと使い方があったんじゃないの?あと小物の使い方。コートやサングラスや車に対する思い入れは、もう少しうまく使えたのではないだろうか?それがないから、サングラスを手放すという行動がどれだけ深い意味を持つのかが伝わってこないんだよね。例えば、アキ・カウリスマキの『ラヴィ・ド・ボエーム』の中で友人のために本を手放すことや『最高の恋人』で愛車を手放すことに近いレベルのはずなのに、この映画ではそれが感じられない。ここはもう少ししっかり描いて欲しかった。あと、車も同じムスタングだったら『wild life』の方がよかったよ。
豊川悦司は、結構魅力的に描けているとは思うが、真木蔵人はもっといいはずなのに。少なくとも『あの夏、一番静かな海』での彼の方がはるかによかった。役者の魅力を完全に引き出せていないのも不満の原因なんだと思う。この映画中ですごく気に入ったのは、原田知世。彼女は彼女らしさがでていました。彼女はラブシーンなどはだめだろうけど(笑)、こういうのはいいですよね。彼女がうまいアクセントになっていました。
この映画はリアルな映画なんだと思う。それが、もしかしたら阪本順治と合ってないのかもしれない。『どついたるねん』『鉄拳』『王手』『トカレフ』『ビリケン』どれも現代が舞台なのにも関らず、どこかでリアリズムというものをはずしてきていた。それが、今回他人の脚本ということもあってか、どうも”普通すぎる”ような気もした。それが不満なのかもしれません。これは、よくわかりませんが。
でも、こんな揺れが阪本順治の魅力の1つです。市川準にはそれが感じられないのです。