エルンスト・ルビッチは傑作『天国は待ってくれる』について次のようなコメントをしています。
『天国は待ってくれる』はもっとも重要な作品の一つです。私はここで、当時映画というものが獲得しつつあった、型にはまった概念を打ち破ろうと試みたのです。この映画を作る前、皆は口々に反対しました。主人公は理想や志というものは微塵も持ち合わせず、ただ「愉快に生きる」ことだけ考えている男。どうしてこんなメッセージもテーマも明確でない映画を作りたいのか、という映画会社の反対意見に対して、私はこう答えました。「私は、この映画に出てくるいろいろな人々を観客に紹介したいのです。そして映画の観客が彼らを好きになってくれれば、それでこの映画は十分成功したといえるでしょう。」結果的に、私は幸運にも間違っていませんでした。普通の映画の中では”暖炉の傍らの退屈な絵空事”として描かれ続けた「幸福な結婚」を、ほんとうの輝きをもって描くことができたのです。
エルンスト・ルビッチ −(1947年)−
「愉快に生きる」、これはこの『エンパイア・レコード』でもほんとうの輝きを持って描かれています。ここには、哲学などはありません。確かにある種の哲学を持ち得ている素晴らしい映画はほかにもたくさんあります。しかし、そういう映画は気楽に何度も観ることができません。毎日がフランス料理のフルコースだったとしたら、その料理がどんなにおいしかったとしても飽きてしまうでしょう。同じように哲学を持った映画というのは、気楽に何度も観ることができないのです。
『エンパイア・レコード』はビデオで持っているのでもう何十回も見ました。でも、ラストでレニー・ゼルウィガー演じるジーナが”シュガー・ハイ”でリード・ボーカルを取った時、やっぱり涙がとまらなかった。
傑作というとなにか高尚な響きがあります。傑作と呼びたくない傑作がこの作品なのです。
ビデオでは、アメリカで発売されているものも日本語版もスコープがスタンダードにトリミングされています。アラン・モイルの映画はそんな画面サイズどうこうという作品ではありません。でも、好きな映画をきちっとしたフィルムサイズで体験できる、うれしいものです。それにこの映画は観るというより体験する映画です。それにはやっぱ映画館ですよね。でもビデオでも十分楽しめるので、御薦めします。