ケン・ローチは傑作と言われている『ケス』には、ぼくはどうもなじめませんでした。被写体を生々しくとらえているにも関らず、どうもその被写体(主人公)の弱さを中心に描いているために、観ていてつらすぎました。暗すぎました。
でも、『レディバード・レディバード』は被写体(主人公)の力強さがうまく出ている傑作でした。直視を避けたくなるほどの人間の生々しさ、魅力がいっぱいの映画でした。人間の生活から、ちょっとした部分の鮮烈さをうまく画面に描き出せている希有な作品の一つです。
被写体の生々しさに接近しすぎると、かえって直視しにくくなるようなことがあります。だから、映像スタイルというオブラートに包まれたものを出してくる監督もいます。でも、ケン・ローチはそうはしない。馬鹿正直なくらい誠実に被写体に迫っていきます。そして、この『マイ・ネーム・イズ・ジョー』では、それが成功しているのです。
まず、主人公のジョーがとても魅力的。”優しさ”という強さと”優しさ”という弱さを持った、人間味あるジョー。彼がその2つの側面を持つ”優しさ”で苦しめられていくのが、観ていて楽しく、そしてつらい。映画ではジョーがわが事のように体験することことができるのです。