『ブギーナイツ』のポール・トーマス・アンダーソン監督最新作。
あらゆる悲劇が集まった日、これを声高に描くのではなく、静かに鮮やかにつむいでいく映画。
つらい、悲しいというのをセリフで説明するのは簡単だ。でも、この映画は、”理解させる”よりも”感じさせよう”という困難だけど正しい道をゆっくりと歩んでいる。だけど、完全に成功はしてはいない。3時間という上映時間が”うまくいっていない”というのを示している。
あと、話の運びもちょっと雑。すごくいいAimee Mannの"Wise Up"をキャストが歌うシーンも、設定に無理がある。例えば、ラジオがかかっていて、そこから"Wise Up"が流れるという設定にしておけば、キャストが一緒に口ずさむもの不自然ではない。いいシーンだけに、こういうつめの甘さが本当にもったいない。
ただ、すべてがうまくいくことなんかない。それどころか、あらゆることがうまくいかないことだってたくさんあります。それが集まった日、それが煮つまった時。どうなるのか。自然と上向くなんてことはない。なにかが上向くには、何らかのきっかけというものが必要になる。「なぜそれが」なんて問いかけは意味のないことです。「何がきっかけになったか」なんて、当事者にもわからないものなのだから。
「ちょっと毛色の変わったことをしてみたい」という監督の気持ちが変に出てしまっている部分もたくさんある。それによって全体の完成度が未熟なものになってしまっている。2時間の上映時間でも同じことができたかもしれない。ただ、そういう欠点を感じさせなくなる魅力を持っている映画だと思う。