『ミスティック・リバー』

画面上に現れない些細なことがそれぞれの人生にひずみを生み続けている状態を
うまく描き出した傑作だが、ぼくが好きなイーストウッド映画ではない

★★★
2003/02/3 六本木ヒルズ 21:30 


 「もっとも好きな映画監督は誰か」という問いには「現役ではクリント・イーストウッド」と答えることにしている。それは、今もって変わらない。

 しかし、時に彼は”神の領域”に足を踏み入れそうになる。「トゥルー・クライム」「許されざる者」、われわれ凡人には完璧には理解しきれない作品すら生み出してしまう。

 25年前に偽警官に誘拐された事件が今なお深く当事者にひずみを残し続けている。しかも、その間の25年間を画面では描かないのに、観客にはその間の微妙な確執が見えてくるのだ。

 まるで神が空から操っているような感じ!俳優たちの演技も完璧で100%の映画と言っても過言ではないだろう。しかし、完璧というのはしばしば窮屈な印象を受ける。「目撃」「ガントレット」などは、完璧の一歩手前で踏みとどまっているから傑作といえるのだと思う。

 完璧な映画ではあるが、我々映画ファンにとって傑作とは言えないイーストウッド映画なんだと思う。でも、あまりにもすばらしいことには変わりはない。

 この映画、オープニングヘリコプターによる俯瞰ショットからスタートするのだが、その視点で映画全体がずっと描かれ続けている、そんな印象を受けた。