伝言 技能者養成所・事務所周辺
写真20 表桟橋

一九四〇年に就職して、四月一日に上陸しました。船が着いたのは、この桟橋第一乗船場です。ここは陸軍大臣の許可がないと上陸できないところでしたが、就職したことによってここに来ることができました。ところが、ここに上がったときに、異様なにおいがしました。のどを刺激するような甘いような何とも言えないにおいがしました。それで一度に不安な思いが感じました。正面に守衛詰所があって、すぐそばまで迎えに来てくれた守衛に、六四名中の一人が「変な臭いがするんですが。」といったら「何の臭いもしない。」と言っていました。永年勤めて慢性になっていたからでしょう。生まれて初めてですから、においがこんなものだと思ったのかもしれません。不安と一緒に入ったというのが、そのときの印象でした。

守衛の案内で慰霊碑のあるあたりの広場にあった庶務会計事務所にむかいました。二列縦隊になってずっと案内してくれて、事務所で入所手続きをしました。入所手続きは、昼までかかりました。その日に、『ここは秘密工場だから、誰にも言ってはいけない。二〇年間ここで働く。その二〇年間は自分の理由で辞めることはできない』などと、主な規則をもとに誓約書に書かされました。その後、この階段を上がって養成所に入りました。次の日からは、船から降りると、守衛が養成工であることをチェックして、ここへ上がっていました。(一九四一年の四月に、養成工も寄宿舎に入所することになり、地元であっても寄宿生活が始まりました。)桟橋を上がったら、軍隊ラッパが鳴り、合わせて歩調をとり、階段を上がっていきました。そういう生活が三年間続きました。そして、卒業とともに、一般工員と同じ出勤時間になりました。七時半の一番の船に乗り、八時からの仕事でした。


写真66 表桟橋