奥平康弘・憲法市民ゼミナール/08年9月28日(日

<名古屋高裁・自衛隊イラク派遣違憲判決を読み解く>

↓セミナーのようす

セミナーへのお誘いのポスター
・◇会の流れ
・◇意見と質問
・◇奥平氏の話(要約)
判決の骨子


 「戦争をしないための選択・9条を考える道南の会」が主催する、奥平康弘・憲法市民ゼミナールが9月28日の日曜日午後2時~4時30分北海道教育大学函館校講義室で開催され、110名の市民が熱心に奥平氏の講義を学びました。

 今回の企画は、集まった人が参加型の学習会にしたい、奥平先生の講演を聴くというよりも何人かの人が市民感覚で質問を奥平先生に投げかけ、また奥平先生からの参加者への問いかけなどによって参加者一同が「判決をしっかり学ぶ」という意図でなされ、「憲法市民ゼミナール」の集会名としました。

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◇会の流れをいくつかの場面に区切りました。

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 ・第1場面は、参加者には入口で「判決要旨」を配布した。主催者のあいさつ(米倉正夫)の後、判決の骨子をパワーポイントのスライドで提示した。先ずは参加者が判決骨子を共通認識する。

 ・第2場面は、約30分ほど、奥平氏の判決の総論的な意義のとらえ方を講義いただいた。

「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会のニュース」ではこの判決を「歴史的・画期的判決を勝ち取った」と受け止めている。また傍聴人は「感極まった嗚咽が生じたほどに歓喜した」とのこと。何故に歴史的・画期的なのかについて、憲法研究者であり9条の会呼びかけ人である立場から、判決の総論的な意味をお話 いただいた。歴史的評価の一つとして、北海道ではかっての長沼一審判決(福 島判決)にむけた市民 運動を進めた経験もあるので、その福島判決の継承と発展 を含めていただく。

 ・第3場面は「9条世界会議の記録DVD」の一部「法律家のフォーラム」15分を上映した。

 ・第4場面は、質問予定者やフロアーからの意見と質問があり、奥平氏の考えが話された。



◇意見と質問は次のような主旨であった。

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 ・「自衛隊イラク空輸活動 にたいする9条第1項違憲の判断から、日本国民は改めて9条第1項の重み(2項に先だつ1項の重み)を今日的な意味で確信すべきだと思う。陸上自衛隊のサマワ派遣や海上自衛隊の給油活動に判決が触れていない事は市民的な疑問としてあるように思う。」

 ・「平和的生存権を法権利とした判決の歴史的な意味をとらえ、国民が今後その権利を生かしていく、その権利意識を国民生活で醸成することが必要と思う。例えば、5兆円もの日本の国防費の税金支出が平和的生存権を侵害すると言えないか。」

  ・「今回の違憲判決がなぜ政府への法的拘束力を持てないのか。自衛隊のイラク派兵という現実行為に対して「憲法違反」と断定しているのであるからその行為への拘束力があるのが、そもそも憲法なのではないのだろうか。市民感覚からして不可解なところがある。裁判にかかわる法のシステムが解りづらい。」

 ・「長沼ナイキ基地裁判の札幌地裁判決で自衛隊違憲判決を下した福島裁判長はその後左遷され最も低い下級裁判所で裁判官を終えていると聞いているが、今日の裁判所は憲法の番人としての姿勢はあるのかどうか。」

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◇奥平氏は身振り手振りをまじえて大学の講義調の語りで話された。(要約)

・35年前の北海道の長沼ナイキ基地裁判の地裁判決は自衛隊の存在そのものが憲法9条に違反するという判決であったが最高裁で憲法判断を回避して訴えを却下し、その後裁判所はことごとくその判断を回避し今日に至っているが、今回の名古屋高裁の判決は、日本政府が行っている具体的な軍事活動に焦点をあてて違憲であると判断したが、これは憲法9条裁判史上画期的なことである、と強調した。

・また、自衛隊のイラク派兵の違憲性を航空自衛隊に限って判断したのは、「これだったら、国民にわかってもらえる」というところに焦点をあてた(矢の的を定めた)ものである、と解説しました。

・政府は後方支援活動を正当化するために多くの法律を作った。「戦闘地域」の定義など国会答弁で様々なゴマカシをしてきた。その政府をすなわち国家を9条に基づいて裁判することは大変難しい。平和的生存権も国民の具体的な権利として独立した(訴え者権利としての主観訴訟に耐えうるような)権利すなわち「使える権利」にまでなっていないように思われる。

 ・裁判所の判断にすべてをゆだねるのではなく、市民運動の高まりが憲法を生かすという視点が重要である

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(録音記録を忘れるという不手際のため、簡単な要約となったことが残念)(文責:徳永 好治)



 判決の骨子のスライドから

名古屋高等裁判所自衛隊のイラク派兵差し止め等請求控訴事件判決(08年4月17日)
「イラク派兵違憲」判決文骨子
u◆認定事実
Ø平成16年6月28日にアメリカを中心とする連合国暫定当局(CPA)からイラク暫定政府に主権委譲が行われ、これに伴い、多国籍軍が発足し、の多国籍軍に日本の自衛隊も参加する。
Ø
Øイラク各地における多国籍軍の軍事行動
ファルージャ
  アメリカ軍兵士4,000人以上が投入され、クラスター爆弾、ナパーム弾、マスタードガス等の化学兵器、白リン弾が使用された。結果、生活基盤となるインフラ設備・住宅は破壊され多くの民間人が死傷し、死者2,080であった。
首都バグダット
   多国籍軍はバグダットにおいて武装勢力に対する大規模な掃討作戦を展開。平成18年8月からはアメリカ兵約1万5,000をバグダットに集中させて掃討作戦を行う。
   アメリカ軍を中心とする多国籍軍は、時にイラク軍等と連携しつつ、特に平成19年に入ってから、バグダット及びその周辺において、たびたび激しい空襲を行い、同年中にイラクで実施した空爆は、合計1,447に上り、これは前年の平成18年の約6倍の回数となるものであった。アメリカ軍は平成20年1月10日からはバグダット南部において大規模な集中爆撃を行い、40箇所に爆弾を投下た。
その他の地域
   多国籍軍はイラク国内のマハムディヤ、マッサーラ、ラマディ、モスル、カイム、ハディーサ、タルファル、サマワで大規模な掃討作戦および爆撃をおこなった。
Ø武装勢力について
多国籍軍の掃討作戦の対象となった武装勢力には思想や宗派を問わず様々な組織がある。
  フセイン政権の残党、シーア派のサドル師派、スンニ派武装組織
武装勢力の兵員数:平成15年11月時500人、16年11月時2人、18年11月時5万人
武装勢力の兵器
   多連型カチューシャ・ロケット、グラーダやリーリク・ミサイル、ロケット弾、化学兵器等
宗派対立による武力抗争
l武装勢力は単に散発的な発砲や小規模な襲撃を行うにすぎない集団ではなく、一定の政治的な目的を有している国に準じる組織。
Ø被害者
Ø
イラク人
  世界保健機構(WHO)=15万1,000人~22万3,000
                  人の死者
  イラク保健省=10万人~15万人の死者
  英国臨床医学誌ランセット=65万人を超える死者
     家を追われたイラク人は約400万人
アメリカ軍の兵員
  死者は4,000
  重傷者13,000を超える
Ø航空自衛隊の空輸活動
Ø
航空自衛隊はイラクにおける輸送活動にCー130
   H輸送機(アメリカ軍が開発したパラシュート部隊のための輸送機)3機を使用。
空輸活動についての多国籍軍との連携
   アメリカ中央指令部に航空自衛隊の空輸計画部を置き、アメリカ軍やイギリス軍との調整による飛行計画を立て、活動任務をおこなっている。
空輸状況
  週4回程度、平成18年8月4日までに352回
  輸送の対象のほとんどは人道復興支援のための物資ではなく、アメリカ軍を中心とする多国籍軍の兵員であった。
p事実認定にもとづく結論
多国籍軍と武装勢力との争いは、一国国内の治安問題にとどまらない武力を用いた争いであり、国際的な武力紛争である。その地域は「戦闘地域」である。
航空自衛隊の空輸活動は、多国籍軍の戦闘行為にとって不可欠な軍事上の後方支援であり、空輸活動のうち少なくとも武装兵員をバグダットへ空輸するものについては武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行っと評価を受けざるを得ない行動である。
lよって現在イラクおいて行われている航空自衛隊の活動はイラク特措法2条3項、同3条3項に違反し、憲法91項に違反する。
Ø
Ø
u◆平和的生存権について
u
Ø 平和的生存権は、すべての基本的人権の基礎にあってその享受を可能ならしめる基底的権利である。
Ø
Ø 平和的生存権は、憲法上の法的権利として認められるべきであり、裁判所に対してその保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求し得るという意味の具体的権利性が肯定される場合がある。
Ø
Ø 「自由」「平等」ですら、その達成手段や方法は多岐多様というべきことであることから、ひとり平和的生存権のみ平和概念の抽象性等のためにその法的権利性や具体性の可能性が否定されなければならない理由はない。  
u
u
u
u
u◆控訴人らの請求について
u
Ø 民事訴訟制度は、当事者間の現在の権利又は法律関係をめぐる紛争を解決することを目的とするから、同請求は抽象的に違法であることの確認を求めるもので、確認の利益を欠き、不適法というべきである。
Ø
Ø 自衛隊のイラク派遣は防衛大臣に付与された行政上の権限による公権力の行使であり、この公権力の行使にたいして私人が民事上の給付請求権を有すると解せない。
Ø
Ø 現時点において、控訴人らの具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められない。控訴人らには、民事訴訟上の損害賠償請求において認められるに足りる程度の被侵害利益がいまだ生じているということはできない。
l よって、控訴人らの本件訴訟をいずれも棄却する。
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