水 織 音 MI・O・LI・NE
−パリと俳句と私−
世界一短い文学である俳句と音楽が出会う瞬間、
言葉が調べに乗って舞い上がる瞬間、
そして俳句を介して日本とフランスが出会う瞬間の感動を、
このアルバムで体感してください。
俳句からHAIKUへ・・・17音の言の葉が、
今海を越えて飛翔します。 黛まどか
「水織音」は、一茶の俳句の印象からとった造語で、<小さな川のせせらぎが織り成す音>という意味です。「私の大好きな20世紀のフランス音楽」と、「日本文化をCool(カッコイイ)と思う作曲家たちの作品」を通して、東京とパリがもっと近くなって欲しいと願い、このCDが生まれました。 末高明美
1 ペリー 一茶の水織音* 試聴_mp3
2 ドビュッシー ヴァイオリンソナタ
3 ギャヌー 6つの一茶の俳句によるピアノ曲* 試聴_mp3
4 市川景之 虫の心 - 一茶の俳句による歌曲 試聴_mp3
5 プーランク フルート・ソナタ
6 ギャニュー 蕪村の3つの最後の俳句(絶吟三句)によるピアノ曲
7 バッティスタ エレジ *日仏俳句朗読
末高明美(Pf)=1-7
友情出演:谷村由美子(Sop)=1、杉浦美知(Vn)=2、唐澤まゆこ(Sop)=4、加藤克朗(Fl)=5
俳句朗読=1、3、黛まどか(日本語)カトリーヌ・ベルコディア(仏語)
CD: MF23701
税込価格:2,800円
録音:2006年12月27,28日、2007年5月9日 三鷹市芸術文化センター/7月6日花かげホール(山梨市)
録音・制作 N&F Co.,Ltd.Tokyo
販売元: ユニバーサル ミュージック株式会社 IMS
★CDのお申し込みは
HMV http://www.hmv.co.jp/news/article/710180001
又はTel 03-3388-6064(末高)、メールasuetaka@nifty.com までどうぞ
レコード芸術・新譜月評The Record Geijyutu Disc Review
12月号2007
末高明美/水織音(パリと俳句とわたし)
那須田務●Tutomu Nasuda
準推薦
いつだったか、本誌のインタビューでパスカル・ロジェが、ともに洗練された感性を大事にするところがあるなど、日本とフランスの文化の共通点を力説していた。このアルバムを聴いて真っ先に思ったのが、そのときのロジェの言葉だ。タイトルの「水・織・音(み・おり・ね)」とは、同アルバムの主役、末高明美の説明によれば、「一茶の俳句の印象からとった造語で、“小さな川のせせらぎが織り成す音”」という意味だそうだ。プーランクのフルート・ソナタなどのフランス近代音楽に、日本文化に関心をもつ現代のフランスの作曲家たちの俳句にまつわるピアノ曲や歌曲、市川景之の俳句による歌曲が収録されている。歌曲の前に俳句が朗読されるのだが、俳人の黛まどかの日本語とベルコディアによるフランス語でという懲りようだ。たとえば、一茶の「うまそうな、雪がふうはり、ふはり哉」の日本語と仏語訳に続く、フランスの若い作曲家ペリーのフランス語の歌曲が歌われる。
末高のピアノの爪弾きが、暗闇にひらひらと舞う雪片を印象深く奏で、それを背景に歌われる谷村由美子のソプラノが涼やかだ。テキストも一茶の歌の仏語訳が実に自然に音楽に乗せられていて、大変に快い。ヴァイオリン・ソナタには俳句は添えられていないが、その前の俳句の余韻が耳に残っているので説得力があるし、杉浦美知と末高の演奏も秀逸だ。ギャヌーのピアノ小品には、「山寺の鐘の音」や「静かな湖水に映る、雲を頂く峰」など日本の自然を歌った<一茶の歌>が組み合わされているが、音楽は少々説明的。フランスと日本の感性が一つに解け合って、新しい何かが生まれる。クリエイティヴでエキサイティングなアルバムである。黛まどかの声が素敵だ。
「水織音」によせて
武田奈菜子(音楽ジャーナリスト)
世界で一番短い文学である俳句。その17音は、作者の見た情景と心象風景を映すミクロコスモスである。声に出して詠んでみるとよくわかるが、抑揚とリズムがとても音楽的。まさに17音の音楽だ。日本人は四季折々に俳句を詠み、季節と言葉と音とを愛でてきた。
一茶の俳句による歌曲「虫のこころ」と「一茶の『水織音』」は、フランス人俳人マブソン青眼による一茶の句のフランス語訳に、市川景之とシャルロット・ペリーが作曲したもの。俳句がフランス語になり歌になると、どんな世界になるのだろう?興味津々で聴いたその音楽は、密度の濃い緊迫した不思議な美しさをたたえた世界。ソプラノの唐沢まゆこのリリックな声と表現の凝縮感が、フランス語に移された(映された)俳句の世界をそのまま伝える。それはルノー・ギャヌーが作曲した「蕪村の3つの最後の俳句(絶吟三句)によるピアノ曲」にも言える。単彩のウェーベルンの音楽に豊かな色彩を加味したような新しい世界に、私は思わず聴き入った。
これと組み合わせたのが、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ第1番とピプーランクのフルート・ソナタ。プーランクのソナタの第2楽章では「水のたゆたい」、溌溂とした第3楽章では「飛び散る水」を、またドビュッシーのソナタでも水面に映るさざ波や水の色の移り変わりを想起させる。フランス音楽の「水織音」・・・。
俳人黛まどかとフランス人女優カトリーヌ・ベルコディアによる日本語とフランス語の俳句朗読の音的響きも、音楽そのものへの日仏融和のニュアンスを与える。
パリ万博以来、ジャポニズムがフランス人芸術家たちの心を捕らえていたが、現代のフランス人もまた日本贔屓だ。日本の漫画、アニメの支持層が広く、宮崎駿の新作が封切られれば、映画館の前に列ができる。川端康成、三島由紀夫などだけでなく、現代作家の翻訳も近年ますます増えていると聞く。「タタミゼ」(「日本通」「日本ファン」を意味するらしい)という言葉もあるほど。また、昔も今も変わらず、日本人は「花の都パリ」に憧れ続けている。
つねづね私は、構築性の強いドイツ音楽よりも、感覚的なフランス音楽の方が、本来は日本人に受容されやすいのではないかと感じている。日本人とフランス人による、文学と音楽のコラボレーションであるこのCD「水織音」は、異文化の融合という意味合いを越えて、日本人とフランス人の感覚的な共通性をも映し出してみせる。「水織音」によって、日本とフランスは、またひとつすてきな関係を築いたのではないだろうか。
末高明美プロフィール
5歳よりピアノを始める。東京学芸大学付属高校から桐朋学園大学音楽学部に進み三浦みどり氏に師事。
1973年に、パリ・エコール・ノルマル音楽院に入学、ピアノをジェルメール・ムニエ氏に学び1974年にディプロマ(教授資格)取得。
1976年夏、スイスにてアメリカ・インディアナ大学教授ジョルジュ・シェボック氏に師事。デビュー・リサイタルを東京第一生命で開催。
1977年、洗足学園大学音楽学部非常勤講師に就任し現在に至る。
1981年には、ベルギー王立音楽院でジャック・ジャンティー氏にフランス音楽を学びレパートリーとして確立する。
1984年より、アンサンブルグループ「コンセール・トロワ」のメンバーとして室内楽にも取り組みはじめる。
1992年夏より、長野県黒姫童話館にて親子で楽しむ「童話の森アフタヌーンコンサート」を開始、1998年の第8回コンサートでは、一柳慧のオペラ・フファンタジック「モモ」(ミヒャエル・エンデ生誕70周年記念)を上演するなど、着実に成果を上げていった。2001年の第9回より舞台を東京に移し、<北欧の童話と音楽>をテーマに、アンデルセン(デンマーク)やリンドグレーン(スウエーデン)の童話や詩につけられた音楽を取り上げる。
2002年より、俳人小林一茶のふるさと、長野県信濃町で「一茶の俳句コンサート」を開始。現存の一茶の俳句を元に作られた歌曲等を演奏するのと同時に、新曲を日本人・外国人作曲家に委嘱。
2005年、第12回「童話の森アフタヌーンコンサート」では、アンデルセン生誕200年を記念して、アンデルセンの童話によるオペラ「マッチ売りの少女」をイタリア人指揮者トニーノ・バッティスタ氏を招き上演。
2006年には、第2回「フランス語圏俳句協会フェスティヴァル」(パリ天理文化会館)に招待され、ルノー・ギャヌーの「蕪村の絶吟三句によるピアノ曲」を演奏。ブリュッセルの<マエーヌホール>ではモーツアルトのトリオを演奏した。
2007年の第13回「童話の森アフタヌーンコンサート」では、グリーグ没後100年記念コンサートを行い、ノルウエーのピアニスト、リブ・グラーセル女史を招き、音楽物語<ペール・ギュント組曲>を連弾で演奏した。
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