いちまいのお札 〜赤キップ顛末記(其の十五まで)
2003/7/1終了

其の一

ちょっと昔の ある春の日のこと、若者は良い天気なので、中央高速を西へ走っておりました。途中で出会ったスカイラインとカマロとペースが合って、なんとなく一緒に走っていたのですが、だんだんとペースが上がって、いつのまにかとんでもないスピードになっていましたとさ。

追い越し車線にスカイラインと自分。走行車線にカマロという配置だったのですが、スカイラインに引かれるようにじりじりとペースが上がります。振り切ろうなんて甘いぞ、とほくそ笑んでいましたが、その刹那、突然スカイラインが走行車線に移るやいなや、姿が消えたのです! なんとな!

しかし 消えたと思ったのは見間違いで、スカイラインはカマロと共に急減速して、後方に退いたのでした。首をかしげていたその時、いきなり目の前に赤い光が瞬きました! 若者は何が起こったのか分らなかったのですが、やがてあれが噂のオービスというものだと悟りました。あの2台は、あそこにアレがあることを知っていたのです。「やられた…!」


其のニ

それからしばらくはなんだか落ち着かずにいましたが、一週間たち、一月たっても何の音沙汰もありません。これはたまたまフィルム切れか、あるいは発光だけの脅かしだったのかと思い始めていました。そしてそろそろ三月が経とうとしていたある晩、仕事から帰ると1通の茶封筒が届いていました。同窓会の知らせかと差出人を見ると、 「山梨県警」 の四文字が黒々と(文章では赤々と、ですな。笑)刷られているではありませんか。とたん目の前が暗くなり…。いや夜中なんで、もともと暗いんですが〜。

内容は、「 確認したい事があるので、指定されたいずれかの日時に、高速機動隊へ出頭せよ」というお達しです。お上の役所ですから、当然のように平日しか指定がありません。となると遅刻か早退か、いずれにしても仕事に差し障りがでます。やむを得ず、恥をしのんで上司に申し出ました。地蔵顔で許可してくれましたが、内心は閻魔顔であろう事は想像に難くありません。(汗)とにかく出頭です。


其の三

山梨県警高速機動隊は、中央高速大月インター出口の、料金所のとなりにあります。駐車場に車を入れると、建物の中の警官がみんなこちらを見ています。(うわ〜、めちゃくちゃ注目されてるやん。)当然です。普通の警察署と違って、車庫証明とか、道路使用許可とか取りに来る人はいません。ここにくるのは 犯罪者( 笑) がメインです。

機動隊では自分の他にも被疑者が来ていて、調書を取られています。私は柔道部員のような体格の隊員に囲まれて、取り調べを受けました。「これは、あなたですよね?」と示された写真には、愛車のナンバープレートと、まぬけづらの自分がはっきり写っていました。あれほどの速度にも関わらず、記念写真のようにきれいに写っています。すごいもんです。あれではしらばっくれようがありません。

「"…久しぶりの休日で、天気もいいので、気分転換にドライブしていた。道が空いていたので、ついスピードを出し過ぎてしまった…。"と。いい車だからな。試したくなったんだな、 そうだな?」「はあ…。」「よし。」うーむ、誘導されている。「こういうスポーツカーは、目をつけてるんだ。すぐ飛ばすからな。カメラじゃなくて、パトカーだったら、コレだったぞ。(と手錠をかけるジェスチャー。)運が良かったな。」

「じゃ、もう一度読み上げるからね、間違いなければ署名と捺印して。」相手の目を見て丁寧に受け答えしていたので、警官の態度もだんだんやさしくなってきました。態度悪い奴が多いんだろうなあ。調書の内容に異論はないので、サインをします。

ながぁいお説教がようやく終わりかけた時、「十二点減点だからな。あと二点あるんだろう。一年経てば点数戻るから、安全運転でいくんだぞ。」「いえ、じつはこの前に駐禁が一回ありまして……。」「何!ということはプラス二点で十四点じゃないか! おい、お前よぅ!」ひー、御代官様〜、またお説教が始まってしまいました。(泣)


其の四

説教も終了して、ありがたいお札を押し頂いて帰宅しました。俗に言う赤キップです。実際にはピンク色ですが…。さて、これでおしまいと思いきや、これからが本番だったのですよ。しばらくして裁判所から通知が来ました。「刑事処分を決定するので、指定の日時に出頭せよ。」ああ〜、また平日です。(泣)今度は上司の顔も険しくなりました。やばい…。


其の五

当日、八王子裁判所に出向きます。(地検支部も併設されております。)入り口で警備官に止められました。「どちらに御用でしょうか?」オレ、弁護士や検事にはみえないでしょ。(いや、HEROの久利生検事みたいなのもいるかもしれんか。)民間人が裁判所に用事つったらそりゃ…(以下略)…。まあ過激派も来ますしね。当たり前のことですか。

待ち合い室には同類が何人も。みんないらついてます。番号で呼ばれて指定の部屋に入ると、検事さんとマンツーマンで罪状確認です。「不服があれば、正式裁判にして、争う事も出来ますが。」「いえ、結構です。」「では、手続きが済み次第、処分の通知が行きますので、それに従って罰金を納付してください。」罰金かぁ。「あの…、金額はどの程度になりますか。」検事さん、さらっとこう言いましたよ。 「多分10万ぐらいですね。」チョットマテ。マジデスカ!?


其の六

ジュウマンエンってアナタ!コンビニ行けば豪遊しホウダイ、ガソリン何リットル入れられるり?デスクトップPC買えちゃうカモカモ〜ン○×△!ぢゃないですか!!(注・当時の動揺ぶりを表してみました。)…しかし自分がまいた種、仕方ありません。正確には9万半ばでしたが、高額には変わりありません。とぼしい貯えから納付しました。はぁ。これで一段落、と思いきや、実はまだ終わっていないのです。それから一週間後、今度は公安委員会からの呼び出しです。そうです。免許の方です。


其の七

交通違反の場合、刑法による刑事処分と、道路交通法による行政処分の2つが課せられます。刑事処分は裁判所から。行政処分は公安委員会からです。罰金は10万。さて、免許はというと…。 「減点12点+免停90日」というものでした。…めまいがしてきました。仕事で車乗れないぢゃん!しかも、前に書いたように駐車禁止で二点ありますから、計十四点。阻止限界点で取り消しを免れたのですよ。相撲なら徳俵でのこった状態、ラ○ウなら「な、なんと!わが頭上に死兆星が!?(ババァーン!)」(ん?ちょっと違うか。)いや、それ以前に府中で聴聞会とかあるんデスよ。 またまた平日です。上司はもはやおだやか〜に「…好きにしろ。(ニヤリ )」ああ〜っっ!姉さん、マジでピンチです!!
((\(´Д`;)〜(;´Д`)/))


其の八

聴聞会というのは、「違反内容の確認・異議申し立てをする場」とハガキに書いてあります。ふむ。何か言い分を聞いてくれるっぽいです。出席は強制ではありませんが、欠席の際は当日の処理は全て委任と言う事になるので、一応出といた方がイイかなあと。処分の一連の手続きを知っておきたかったし。で、小金井の府中運転免許試験場へ行きました。

あーいます。たくさん同類が。老いも若いも取り混ぜて。さて、説明が始まりました。出欠の確認の後、各々の名前と、違反内容が読み上げられていきます。その内容が取り締まりの時と異なる場合は、異議を申し立てなさい、という訳です。なあんだ。つまり、警察が違法な取締をしたとか、違反はしたがそんなにスピードはでていなかった、という意味での異議は受けてもらえないのです。


其の九

ある方は、
「暴走族に追われて危険を感じたので、加速して振り切ったところで検挙されてしまった。危険回避でやむを得なかったのだから、処分は不当である。」という申し立てをしました。

担当官の返答。
「危険回避としては、停車してやりすごす選択もあったのに、なにゆえ加速をしたのですか。 そのほうが危険だとは思いませんか。 」「ここは単に書類のミスがないか確認・訂正する場です。ここにいらしている以上、皆さんの処分はすでに決定しているのです。そのような異議申し立ては、裁判ですべきものなのですよ。」

処分撤回・軽減のチャンスだと思ってやってきた人も多かったようで、不穏な空気が漂います。職業ドライバーの方は、免停になると仕事ができなくなってしまう。と訴えていましたが、「仕方がないですね。御自分の責任ですから。」とにべもありません。まあ当たり前ですが、もっとこう言い方がありそうなものですがねえ。

ここで免停の助け舟、期間短縮講習の説明が。俗に言う免停講習です。これを二日間受講すると免停期間が90日から30日に短縮されます。当然申し込みました。でも結構お金がかかるのね…。免許証はこの日から取り上げられ、免停が終わるまで戻りません。ああ、さらば自由の日々。さらば999…(泣)


其の十

とぼとぼと午後の遅い出勤です。同僚にはからかわれ、仕事は制限され、(車が使えないから。)踏んだり蹴ったりです。そうそう、(嫌だけど)上司にも報告をしないといけません。

「…と言う事であと講習を受けておしまいです。」「そうか。分かった。でも また平日かぁ〜? うーん。」とちらりと事務所の奥を見る上司。「…え?社長ですか?」社長は社員の出勤状況をチェックしているので、こう立続けに休むと必ず確認をしてくる、とのこと。「仕方ない。聞かれる前に、一緒に報告に行こう。」えっ!しゃちょーに直接ですか。あひ〜。 「ばかやろう。オレだってこんな下らん事、社長にいいたくねーよ!」 それはそふです。あほな部下で申し訳ないっス…。(汗)


其の十一

じっと聞いていた社長、報告が終わるとおもむろに「ふん、それじゃ当然だな。」はぁ。ごもっともで。「しかし、峠を攻めていてつかまったっていうんなら、おおやるなと思うけどな。高速でスピード違反なんて、どうしようもないじゃないか。」ん?なんか話の雲行きが…。

「スピード出すだけなら、若葉マークの学生にだってできるんだぞ?ガキと同じじゃないかよ。」「いや、年喰ってる分よけい悪い。分別がついてるくせにやるんだからな。同情の余地無しだ。」あれれ、違反の内容で叱られ始めちゃったよ〜。

さんざん言われましたが、とにかく状況は理解してもらいました。上司共々退室しようとすると、社長とどめの一言。 「あー、これまでの違反関連の休み、有給扱いにはしないからな。」お…おあとがよろしいようで。(泣)


其の十二

「…この講習は、二日間全て聞いていただくことが前提です。ですから、欠席はもちろんですが、遅刻、早退すると、修了とみなされない場合があります。」免停短縮講習の講師の第一声ですよ。そんなに遅刻・早退が多いのか。
朝9:00から午後までびっちり座学…。おしり痛くなってきました。みんなすさんでるし。

ここは府中の運転免許試験場、別館でございます。まわりは(私もふくめ)全員犯罪者なのでございます。社長公認で来ております。 通常欠勤扱いですが。講習の内容は、おきまりの安全運転や事故原因の解説ですが、寝てるとチェックされて、ひどいと欠席扱いにされます。休憩時間は、みんなタバコか、紙パックジュースをもくもくと飲んでます。はぁぁ、く、くうきがおもい…。借金かえせなくて放り込まれた飯場みたいです。も、もう一日あるんですよねえ。ふう。


其の十三

二日目。朝から雨。ザンザン降りです。早めに家を出たのですが、JR小金井駅から試験場までのバスが…。渋滞で全然すすまないよ!やばい。雨の日は特に混むという事を忘れていました。どうしよう。途中下車して歩いた方が早いかも。いや、急がば回れ、あせって行動すると裏目に出る事が多いので、このままバスに運命をたくすことにしました。

試験場前についたのは8:55。ギリギリで間に合いました。あれ、結構空席がありますよ。くくく…。みなさん雨の渋滞を甘く見て、いつも通りに出ましたね…。だから普段から早め早めの行動が吉だっつってんだろぉ!(って、ギリギリセーフだったくせに、この言動。笑)

…苦行の講習もようやく終わり、気持ちもリラックスして帰途につきました。駅で飲んだ缶コーヒーがうまかった。これで全日程終了しました。でも油断は禁物。そう、免停があけても、点数の残りは一点のままです。駐禁は二点ですし、一点のシートベルトで捕まっても、免許取り消しというこの背水の陣。とにかく点数が戻るまで、一年間安全運転に徹します。明日からまた仕事ですよ。


其の十五

罰金・手数料・交通費・講習費あわせると、約十一万。欠勤三日、遅刻三日、一ヶ月免停 による仕事への支障。給与考課へのマイナス。一年間の運転へのプレッシャー。 ざっとあげただけでこれだけの不利益がありました。

スピード違反といえど、これだけのイベントと、損害が発生するという事を知って欲しかったので、長々と書かせてもらいました。こんなの一生縁のない方がほとんどですけどね。まいったなあ、で済んでいるうちはいいですが、スピード出し過ぎから人身事故につながるケースも多いですから、みなさん安全運転してくださいね。とほほ…。




〜おしまい〜