Carp-Box コイの感覚考

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視覚と聴覚

その昔、どっかの首相経験者の家には大きな池があって、手を叩くと何億円もするコイが一杯寄ってきたとかいう話がありましたが、どうも本当のところは、コイは空中の音よりも、人影や足音に反応するようです。

よく大声で話していると魚が散るとかいう釣り師がおりますが、空気中の音はほとんど水の中には伝わらないようです。99.9%は水面ではねかえって、水中に入っていくのはわずか0.1%しかありません。
ところが水中の音の伝わり方はものすごく、コンクリの護岸などを叩いたときは強い水中音となって水の中を伝わっていきます。だから池の縁をガツガツ歩いたり、竿先を水面に落としたりすると、遠くにいた魚さえも散ってしまいます。水は空気よりも7500倍も密度が高いうえ、弾性もあることから、音の媒体としては極めて優れております。その結果、音の伝わる速度は、地上の4〜5倍にもなってしまうのです。



ところが水の中は静かであると思ってもまた間違いです。水中マイクロフォンを使った実験では、波の音や水が岩に当たる音、それから魚同士の生物音でかなり騒々しいということが分かっております。
ですからサラシ場の磯釣りでピトンを打ったり、サザエを割ったりすることや、川の荒瀬の中での歩行やウェーディングにはそれほどナーバスになる必要もないのですが、静かなところや淀みでは注意が必要なのは言うまでもありません。

とくに魚は耳石以外でも側線という器官で音をとらえますが、その可聴音域はヒトと同じ2000〜200サイクルのみならず、超低周波といわれる40サイクル以下の音までとらえておりますが、ここまでくると測線だけでなく浮き袋で振動を感知するようです。
水中音響の研究は、とくに第二次大戦以後おおいに進歩したようです。それはこの研究が戦時においてかなり進んだためで、スクリュー音と魚やイルカが出す音の分析がなされました。これらの一部は、やがて民需に転換されて、例えば超音波による潜水艦探索技術は「魚群探知機」として活用されました。

さてコイの場合、咽頭歯を食餌するさいに鳴らしますが、この音で「近くにエサがある」と仲間が集まってくるという寸法です。まき餌(チャミング)はコイフライや流し釣りでは有効な手法ですが、これは周りのコイがエサを漁っている音が、周囲のコイを寄せてくる効果と、フライに対しての警戒心を軽減するという、二つの効果を持っております。



研究者によれば、コイは海水魚やウグイやマスなどの淡水魚に比べて、比較的濁った流域に住んでいることから、眼が良くないという説が一般です。
他の魚がレンズの焦点を合わせられるのに対して、コイやフナは単焦点というのがその理由ですが、個人的な経験則では、コイはなかなか眼は良さそうです。
鶴見川や片瀬川など比較的水深の浅い河川で、しかも釣法はフライや怪しいパン餌流し釣りで、表層で掛ける釣りをしている関係上、どうも相手に自分の存在を見られて警戒されていることを感じました。

そんなわけで、フライや流し釣りでも見えなくなるまで流したほうが、コイの見切りも少なくなり、ヒット率が上がるような感じです。
また、目立つ服装や、やたらに上体を動かすこと、そして太陽を背にしてしまうことはコイに警戒心を与える材料を作ってしまうので、あまりお勧めできません。岸際や足元から近いポイントを流す場合は、腰を落としてコイからなるべく見えないように努めております。


味覚と嗅覚

さて、一般的に魚類には味覚や嗅覚という明確な区分はないのですが、この味覚嗅覚はとっても大きな要素をもっていると思われます。
当然の如く、魚には舌はないわけで、味をどうして知るのだろうという疑問がわいてきますが、どうやらこれは鼻孔をとおして感じることのようです。ほ乳類とちがって、鼻から空気を取り入れるわけではなくて、鼻孔の粘膜を調べてみると、ほ乳類の舌にある味蕾に似た神経が分布しているそうです。
またコイの場合はヒゲがあるわけですが、ここには触覚とともに味蕾に似たものがあるとの研究もありますが、やはり鼻孔周りの感度がもっとも高いそうです。



鼻孔を押さえたサケが母川に上れなかったり、左の鼻孔を押さえたサメが獲物をとらえるパターンは、S字型に獲物を追いつめていく通常パターンではなく、右回りにクルクル回って詰めていくパターンだったという実験でも明らかなように、魚の行動パターンと嗅覚には深い相関があります。

感度は、魚によって異なるものの、コイの場合は「すっぱい」「塩辛い」「甘い」「苦い」の四種の味に反応します。コイにも地域差があって、とくにヨーロッパのコイは酸味については反応が顕著だったそうです。また蔗糖がこれに続きましたがサッカリンには無反応だったそうです。
実験結果によれば、日本のコイはむしろ「苦み」への反応が良かったようですが、面白いことにいつも食べ慣れているエサに反応するという事ではないようですので、ここは釣り師の腕の見せ所なのでしょう。



マッチザハッチなどという理論がある一方、実はその魚の住むところにいないものへの反応が意外と良い、というアンチテーゼもあります。釣りはこうだから面白いのでしょう。
どうもフライへの見切りに悩む小生としては、今年の後半戦は、是非とも、この「臭い」の要素を取り入れた実験をしてみようと思っております。
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