…コイの生態考(見切り) |

さて、秋のコイ釣りシーズンに突入しました。一年中釣れる都市型河川においても、コイの生態そのものは変えがたく、やはり春と秋の荒食い時期がもっとも大型が望める時期だと思います。真夏や冬は寝ていても、この時期に出来るだけたくさんフィールドに立つことが「サクセスストーリー」を作るためにも重要だということでしょう。
さて久々にUPしたカープBOXですが、今回のテーマは「見切り」。流し釣りやフカセ釣り、あるいはコイフライを行なうものにとって忌むべきこの言葉には、いったいどのようなメカニズムで起きるものなのでしょう? まず「見切り」の定義をはっきりさせましょう(流行りのシックスシグマ的経営手法によると「デファイン」にあたります(笑))。「見切り」というのは、表層に浮いているエサ(パンなど)ないしはドライフライに対して、明らかに捕食行動を起こしかけてきたコイが、くわえ込む直前で捕食行為を中断し、反転ないし通過してしまうような事象を指す言葉です。くわえ込んだ結果、異物を感じ吐き出してしまうという行為は、通常の捕食行動の一連の動きの中にあり、これは見切りという概念には入れないことに致します。 ![]() また、コイの一般的な捕食行動についてもおさらいをしておきたいと思います。コイという魚は側面から頭部を観察すると明らかなように、口吻はらっぱ状にやや斜め下方(個体差はありますが20〜40度ぐらい)に突き出されます。 魚の口吻の位置は、その魚の遊泳層と捕食パターンをいみじくも表しております。例えば中層を主たる遊泳層として、サスペンドするプランクトンをエサとする魚類、ヘラブナやレンギョ、小さいところではモツゴなどは、口吻が頭部先端より上に出ており「受け口」のような形状をしております。 一方、ドジョウややカマツカなどは底を泳ぎ、水底にあるエサを吸い込むために、口吻がぐっと真下に伸びております。またアユは底石に付いている水垢を食べるため、大きな面積をすくいやすいように口吻が大きく頭部側面にまで回り込んでおります。 ということはコイの場合「本来あるべき遊泳層は中層以下」「主たる捕食対象は水底にあるエサ」という生活・捕食パターンであることが分かります。事実、コイは水底にある泥と一緒にエサを吸い込み、そして泥だけ吐き出すと云った習性を狙って「吸い込み釣り」という釣法が確立されております。 近年ではネリダンゴ+カラバリという仕掛けすら登場し、しかも成果を上げていることから、コイの基本的な捕食パターンは今でもなお「水底の泥とエサを一緒に吸い込む」というのが本流のようです。 つまり、表層のフカセ釣りや流し釣り、そしてドライフライは「コイの主たる生理には相反する行為である」ということが第一に意識しなくてはならないことです。生理にそぐわないにも拘わらず、表層のエサを追うコイの心中は如何でしょう?決して居心地はいいわけではなく、神経質になっていることが考えられます。 そうは云うものの、近年の都市河川においてはヘドロなどの有機物が過剰に堆積し、一種の貧酸素状態になっている底層に捕食すべき小生物(多毛類、環虫類、甲殻類、貝類など)が高密度に存在してないことが予測されます。いっぽう表層には残飯類などの人為的に発生したエサが日常的に流下しており、ある大きさ以上に成長したコイは、その体積に必要な熱量を確保すべく、本来持っているDNA指令とは異なる形で、水面のエサを求めて「いやいやながら」表層部にあがってきたわけです。
さて見切りについて論考する場合、いくつかのパラメータ(変動要因・媒介変数)がありますので、これらを抽出しなくてはなりません。実はこれらのパラメータ一つ一つの三次元的マトリックスで「見切り」という減少が発生するわけで、実に複雑です。
この解明はおそらくシャーロックホームズでもなかなか成し得ないのではないかと推察されますが、不肖デュークがこの謎に入り込み、考え、悩み、そして解明をしてみようと、この章をUPしてみました。 @水 温 A水 質 B日 照 C流 速 D風 向 E潮 汐 F人 影 Gドラグ Hライン Iフック もしかしたら、もっとあるのかも知れませんが、先ずこのパラメータモデルを検証して見ましょう。それから季節要因やエサの種類、フライタイイングの巧拙などは、別の議論となりますので、ここでは取り上げません。
@水温:ここで云うのは季節的な話でなく、三寒四温的な水温変化に対して、捕食行動がどう変化するかという話です。一般的に気温が変化して、適水温に近づいたときコイの活性は高まり、本来は躊躇すべき表層での捕食も大胆になるようです。 逆に急に水温が変化し、コイの耐性が追いつかないようなときは、表層への旅は行わず、底のほうでじっとしているのでしょう。こういうときは気持ちを切り替え、数日おいて釣行すれば、むしろ腹の減ったコイに出会える確率は高くなるといえます。この点でマイナス方向の水温変化は「見切り」すらないという結果になるでしょう。 A水質:都市部河川は夏場の渇水期になりますと、有機物が相対的に増えることで貧酸素状態になり、コイに限らず魚たちの活性は落ちます。ところが夕立などで降雨があると、表層の酸素が攪拌効果で増し、それを心地よいとするコイたちも比較的表層に定位するようになります。そして流下するゴミや残飯も増えてきます。 こうなればしめたもの、表層を流れるエサがコイたちの目にとまる確率がぐっと上がるというわけです。見切りを減らす条件は、コイをまず表層に定位させてしまうような条件を選ぶこと。エサへのディスタンスが短ければ、エサの発見から捕食までの時間も短くなり、その間での躊躇判断も遅れるという具合で「見切り」も減るのではと思われます。 B日照:小生は基本的にはドピーカンで大釣りした経験はありません。日照は視界を広げるわけで、いきおいコイの方も警戒心は増してしまいます。従って早朝または夕刻の釣りがベストとなります。 とくにお勧めはナイトフィッシングです。ナイトフィッシングには「見切り」があまりありません。フライでもパンでも夜間の方が、捕食行動が大胆になります。ただし飲まれてしまうこともしばしばですので、ハリ外しは必携品です。 C流速:流し釣りの場合、その呼び名のとおり流速が必要です。フライも同様で、止水での表層狙いについては相当に慎重に攻めなくてはいけません。とはいえガンガン流れていれば、もともと表層のエサを捕食するようには設計されていないコイですので、流下するパンやフライに追いつかずフックオンには至りません。エサやフライを見破られない、かつコイが追いつける「適度な流速」が条件です。 D風向:これは意外と重要な要素だと小生は感じています。表層を戦場とする流し釣りやドライフライの場合、風によって起こされる水面のざわめきはプラスにもマイナスにもなるようです。さざ波は光を遮断し、コイの警戒心を薄れさせますが、あまり波だってしまうと怯えてしまうのかコイは浮いてきません。さざ波がたって表層のエサやフライまでマスクしきってしまっても駄目です。鏡のような水面はあまり良いことはありませんが、少なくとも表層のエサやフライは目立ちます。適度な風が起こす波はコイの警戒心を薄れさせ、こういうときは「見切り」も減るようです。少し吹いて止まって、また吹くというパターンが双方のプラス面を引き出す条件のようです。 E潮汐:汽水域での釣りは、この潮汐が極めて重要です。一般的にいうと潮止まりでは流速が弱まり(たるみ)、流下するエサやゴミも減ってしまうことからコイの活性は下がります。「見切り」はおろか表層に遊びにくるものも減るでしょう。上げか下げかはポイントによって異なるようですが、とにかく潮が動いているときが良いようです。上げでは塩水くさびが真水を押し上げて河川内に侵入してくるので、コイが比較的表層に上がってきますし、河口部付近に居たコイも塩水を嫌って多くの群れが移動します。下げでは流下するゴミや残飯が増えるので、これまたコイが表層のエサを追い始めます。見切りを避けるためには潮時表を片手に釣行計画を立てましょう。 潮汐について二つのメッセージがあります。汽水域での潮汐は一本調子に上がったり下げたりするものではなく、上がって下がってぐ〜んと上がる、下がって上がってぐ〜んと下がる、というようなある周期で上げ下げしているようです。このぐ〜んと来た後のタイミングが実はヒットタイムです。以前「片瀬のコイ釣りオジサン」から教授されたこのことは、汽水域に超詳しい中本賢さんが調べた潮汐パターンの研究結果でも同じことが報告されております。じつはこれは15分周期で、なんと陣痛とおんなじインターバルだというコメントまで付いております。 もう一つ、これも中本さんから示唆された内容で、調査研究してみようと思っておりますが、純淡水域でも潮汐と活性(遡上・産卵・捕食行動など)の相関はかなりあるようです。海からの遡上魚のみならず、純淡水魚も潮汐に呼応して河川内を活発に移動したりしているようですが、このことはコイでも例外ではないでしょう。コイ釣りというのは程度の違いはありますが、巡回中のコイを狙う釣りであることには変わりません。よく移動する時合をねらうことが「見切り」被害をミニマイズするために重要なことがお分かりになりましたでしょうか? F人影:さて、ここまで上げたパラメータ@〜Eは環境相手の話です。ここからがアングラー側から行なう「見切り」削減のためのアクションです。以前取り上げましたが、コイに限らず魚というものは聴覚や嗅覚は優れているわけですが、小生が感じるに都市部河川のコイは「かなり目もいい」と思わざるをえません。先に取り上げましたようにコイの口吻は斜め下に伸びます。この状態で表層のエサを捕食する場合、水面下に垂直に近く立って、尚かつ水面の上に一部顔を出さねば出来得ない話です。おそらくは水底の泥を吸い込むパターンと一緒で、表層の水と一緒にパンやフライを吸引するものと思われますが、結果的には水面近く、あるいは水面上に目が位置するわけで、いきおい陸上の様子を観察できてしまうということになります。そしてそこに妙な人影が映っていたら、おそらく「ちっ」とかつぶやいて捕食行動を回避することを行なうのだと思います。 屈折の関係で水面下からは意外に広範囲が見渡せるとも云います。またコイは基本的に上流を向き、上流から流れてきたエサを捕食する、というパターンになりますので、流し釣りの場合はどうしてもアングラーと対峙してしまうケースが殆どとなります。これが見切りを誘発していることは間違いないところです。ちなみにフライの場合はアップクロスにシュートすると人影はコイの背後になるので、見切りの率は下がることからも「人影」の要素は大きなネガティブ要因です。従って姿勢を低くして、あるいはエサとの距離をずっととったりして、魚に人影を意識させないようなアプローチをすることがアクティブな「見切り」抑止策の第一歩だと思います。 Gドラグ:チャミング(撒き餌)は表層釣りの場合、有効な手法ですが、チャムだけをしっかり食べて肝心のハリ付きのパンを食べないことがしばしばです。小生のヘボフライならまだしも、パンですら同様のことがしばしば起きます。一体どこで「これは違う」とコイたちに気づかれてしまうのでしょう。 先ず考えられるのは「自然な状態」です。水面をナチュラルドリフトさせて、他の流下物と見分けがつかないようにすることが肝心です。ところが河川の流れは岸から流心までいろいろな流速が並行しているので、ラインが引っ張られたりして、ドラグが起きてしまいなかなかスムーズなプレゼンテーションが成立しません。とくにライン〜フロータ〜リーダ〜フックというパーツがそれぞれ固有の比重を有しているので、動きがぎくしゃくしてしまう事は否めません。 ベストの布陣は「ノーフロータでライン直結」というものです。中通しのテンカラコイ釣りでは見切りがあまり無いのが特徴ですが、これもシンプルな仕掛けがナチュラルドリフトを演出しているためと感じられます。たしかにドラグかけっぱなしで、水面をモーターボートのようにさざ波を立ててプレゼンしても、活性が高ければ喰うときは喰うという点もあるのですが、やはり本来のあるべき姿はノードラグ、ナチュラルドリフトだと思います。これを演じるためにシンプルな仕掛けを心掛けることが肝心の様です。 Hライン:リーダーを含めて、ラインというものはどこが落としどころなんでしょう?「太さは関係ない色だ」という片瀬のオジサンのような人もいるし、故山田勲さんのように6ポンドで巨大な野ゴイを釣ってしまう凄い世界をもっていた人もおります。いわゆる野ゴイ、野性ゴイというのは別次元として、都市河川のコイの「見切り」という視点に絞ってみた小生の経験では、ラインの太さと見切りには明確な有意差は感じられませんでした。6号→4号→2.5号→2号として、つまり細くしても「見切り」という減少は減らなかったという印象です。 Iフック:一般的にコイの場合は「コイバリ」を使うと思います。小生の場合はヘラスレですが、いずれにしても色は「黒」です。一方パン餌の場合、白か茶(耳のところ)です。小生はパン餌はチョン掛けなのでそれこそ白いパンと黒いハリが見事にコントラストを形成してしまいます。先日、あまりに見切りが多いのでパンの中にハリを埋め込んでみましたが、水を含むと緩んでしまい、やはり黒いシャンクが出てまいります。 ![]() 対策としてはチモトのところをやや強めに握って、水を吸ってもパンからフックが覗かないようにしてみました。これだと「見切り」はかなり減るようです。一度お試し下さい。ただし固めるのはチモトだけ、先まで固めるとパンが沈んでしまいますし、フッキングも弱くなってしまうかも知れません。チモトの上に中通しシモリウキのようなものを噛ませれば、これでも浮くかも知れません。沈むのを嫌がるのは、どうもサスペンドしたパンには鶴見川のコイはあまり反応しないからです。 もう一つのトライ項目はフックのカラーです。海釣りで使うチヌバリ、グレバリが近い形状をしているので、フライはこれで作っておりますが、オキアミカラーが比較的見切りが少ないようです。ということでパン餌を使う場合も、オキアミカラーを使うと白の同色系なのでもしかしたら「見切り」抑止に効果があるかも知れません。ただし針先が甘いので研ぐ一方、カエシは潰していただきたいものです。 さて以上のように、それぞれのパラメータについて小生なりの考察を加え、コイの「見切り」抑止にむけた提言をさせていただきました。これが全てだとは云えませんし、いまもって「見切り」には悩まされ続けております。 この論考を通じて、同じく「見切り」に悩む諸兄に何らかのヒントを与えられたらと思い拙文ではありますが、徒然なるままに書き留めてみました。また新たなコメントやご提言がありますれば、ぜひとも小生にご一報いただけますれば幸甚です。 |

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