コイのウンチク(#2)

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さて#1でコイの生命力の話を致しましたが、この魚は五月の節句のこいのぼりにも代表されるように縁起のいい魚ともされております。

中国の山西省、黄河というおおきな川の上流部に三門峡という滝があって、この滝はいかなる魚も上がることが出来なかったそうですが、唯一コイだけが上がったので、神通力を得て龍になったという言い伝えが残っております。

試験に合格したり立身出世することを登竜門をくぐるといいますが、その意味でコイは出世魚とされております。

上の話から「六六変じて九九鱗となる」と中国では俗に言われますが、この六六とはコイのことをさします。コイの鱗は側線上はどれも三十六枚前後なので、六六魚とか三十六鱗とコイのことを言い、九九鱗とは龍のことを差します。また三十六ということから三十六町(一里)という意味で鯉という字にしたという説もあるようです。もっともらしいですが真偽は不明です。



まあコイはそんなわけで尊ばれており、栃木県小山市にある高橋神社は「鯉明神」ともよばれ、料理の神様として調理人からも崇敬されているそうです。
この神社のルーツは平安時代に溯るのですが、その当時、井戸を掘っていたところ大きなコイが出現したので、それを後一条天皇に上奏したという伝承に由来しているそうです。

世間一般で「タイはめでタイ」などといって、慶祝の贈答や料理にしていますが、これは近世になってからの風習でして、室町時代はむしろコイの方が上位にあったそうです。式三献の序列はコイが一番、無い場合はボラ(イナ)、二つとも手に入らぬ時はタイでも良いとしてあるようです。庖丁式はその名残でしょうかコイかボラ(イナ)を使います。



またコイの効用の話ですが、コイをたべる精がつくと昔からいわれて、古くは徒然草にもこれに準じた記述が残っております。また母乳の出ない母親に産後の肥立ちを祝ってコイを贈る習慣がつい最近まであったそうです。心臓病、黄疸、呼吸器の妙薬とされ、生の血は急性肺炎や肺病に特効ありとなっております。



コイの一大特徴であります口ヒゲも意味があり、触覚と味覚の神経が来ている味蕾という細胞が沢山あって、これによって視覚の使えない泥水の中でも水底に住むイトミミズや水生昆虫あるいは藻類のような植物質をさがしあて食べることが出来るのです。

歯は口端にはありませんが咽頭の入り口に三列になった頑丈な咽頭歯がありますので、これでタニシや二枚貝の殻をかみ砕いて食べてしまいます。



また雑食性とは言いながら、季節によりまして嗜好がかわります。4〜5月が産卵期でありますが、その後のコイは産卵後の体力回復のため動物質を中心にあさります。これは彼岸頃まで続いてやがて秋口からは産卵準備のため植物質を多く獲るようになります。
釣りでもこの習性を考えて、夏には動物質のエサ、秋は植物性といった風に使い分けがあります。

養殖場でもコイの餌として動物質のものばかりを使用すると、腹の中は脂肪で一杯になって卵が大変少なくなってしまうので、食肉用とは分けて、翌年に卵をとるための魚には植物質を多く与えるそうです。

コイがパンを好むのは、植物質嗜好からでしょう。特に夏場より秋の方が、小生のつたない経験ではパンへの活性が高かったように思えます。また夏場はフロータ(ミノープラグ)へもアタック多かったようですので、上の分析とは理屈が合っております。



    参考文献:
      「魚の社会学」加福竹一郎著 共立出版 他
      「魚の文化史」矢野憲一著 講談社


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