キーンコーンカーンコーン
4時間目の授業が終わるチャイムが鳴り、今日の日直による礼が終わって先生が教室を出ていくと、昼休みと言う学校の中で一番長い休み時間を過ごすために生徒達がそれぞれ食堂に向かったり、中庭に向かったり、または屋上へと出かけていく。
そんなクラスメイト達を見ながら、ひびきの高校の2年生水無月琴子が自分のロングヘアーを鬱陶しく思うでもなく、前の授業の教科書やノートを机の中に片付け、カバンからお弁当を取り出して自分もお昼ご飯を食べようとすると何となく不機嫌になるような声が聞こえてくる。
ぐ〜、ぐ〜
そんなに大きい声ではないが、琴子の隣の席で気持ちよさそうに眠っている自分の親友である陽ノ下光の幼なじみでありクラスメイトである彼の顔を見ていると何となく不機嫌になってしまう。
(どうしてこんなに気持ちよさそうに眠っているのかしら。ムカつくわね。こっちはちゃんと授業を受けているって言うのに……彼ったらさっきの授業の後半辺りから眠りっぱなしじゃない)
彼が悪いわけではないのだが(いや、授業中に寝るっていう行為は悪いんだけど…)、何となく琴子が彼に対して攻撃モードに入りたくなってしまう。
そして琴子が彼に対して思わず平手打ちを食らわして穏やかな眠りから現実を見つめさせる手伝いをしようとする直前、
「琴子〜!一緒にお昼御飯食べようよ」
教室の扉から自分の親友である陽ノ下光が入って来て、明るく琴子の呼び掛けるので、慌てて琴子が彼に対しての攻撃モードを解除してしまう。
「あ、ひ、光。どうしたの?」
「どうしたのってお昼ご飯を食べに来たんだよ。一緒に食べようよ」
「え、ええ……」
琴子は光の言葉にうなずき、それから自分の向かい側に座るよう勧めると、光はそれに従いそこに座ろうとしたが、その時彼が気持ち良さそうに眠っているのに気がついてしまう。
「あれ、彼寝てるの?」
彼の寝顔を見てそう尋ねると、自分の机の上に出していたお弁当箱を開けようとしていた琴子が仕方なさそうに、
「ええ、起こしてもいいわよ。さっきの授業の終盤からずっとだから」
琴子の言葉を聞いてから彼の寝顔を見て、光がちょっと考え込むような表情を浮かべてから、
「ううん、いいよ。寝かせといてあげよ」
「ありがとう、光」
彼の少し大きな言葉が光と琴子の鼓膜に響き、先ほどまで機嫌のいい顔をしていた光の表情がさらに花が咲いたようになってしまう。琴子はと言うとそんな自分の友人の反応にちょっと苦笑してしまったのだけれど……
「あ、あれ、彼起きてるの?」
光の言葉に琴子が苦笑を抑えて、彼の顔を覗き込んで彼が起きたのかを確認する。
「寝てるわね」
光に彼が寝ている事実を伝えると少し自分の胸に手を当ててほっとしたような表情を浮かべて、
「そっか、起こしたんじゃなくて良かった」
そうつぶやくと
「起きててもらったほうが嬉しかったんじゃない?」
琴子が笑顔を浮かべて光に話し掛けると、
「そ、そんな事ないよっ!」
慌てて光が否定するので、
「声が大きいわよ」
「あ……ゴメン」
「いいわよ。さ。御飯にしましょ」
琴子が自分のお弁当箱を開けて食事を再開し、まだちょっと恥ずかしそうな表情を浮かべている光も自分のお弁当を開けてフォークを持ちながら食事に集中しようとし、そんな自分の親友の顔を見てから彼の寝顔を見て、
(本当に困ったものね)
ポツリと彼と光の一向に進まない関係を考えて苦笑してしまうのであった。