第17回 岸田智史 "MORNING" (1979年発表)



2003年一発目の"SWAN SONGS"ということで、自分の
原点中の原点に帰ってみることにした。「音楽」というものを
意識したのは、多分、小学校の低学年の頃。ご多分にもれず、
当時人気絶頂だったジュリーこと沢田研二氏の「勝手にしや
がれ」が最初だったように思うが、自分の小遣いで初めて
買ったレコードというと、この人、岸田智史(さとし、念のため)
氏。小学校の5年だったか6年だったか。

当時の岸田氏と言えば、主演ドラマ「愛と喝采と」の主題歌
「きみの朝」を大ヒットさせ、以降ヒットアルバムを連発。さらに
連ドラ「1年B組新八先生」への主演、主題歌「重いつばさ」の
ヒット、武道館ライヴ、と最高に油の乗っていた時期であった。
ボクが買ったのは、武道館のライヴ盤のあとにリリースされた
初のベスト盤、"SINGLE HEART"。その頃は家のオーディオは
ラジカセだけだったので、カセットで買い求めた。家から一番近い
レコード店で手に入れたのだが、その店というのが、それから
約12年後、ボクが入社することになる某レコード卸売業社が
試験的に出していた小売店だったのだ。やっぱり
運命ってあるのか?って感じ。

さて、本来ならこの"SINGLE HEART"をここでご紹介すべき
なのだが、残念ながらこのアルバム、CD化されていない。
現在、岸田氏の当時の所属レコード会社のソニーから、
ソニー時代のシングルA面全部を収めたベスト盤が出ている
ので、先日ボクはそこから10曲を取り出してCDRに収め、
自作の"SINGLE HEART"を作った。で、ここではオリジナル・
アルバムとしては最高の出来であろう、"MORNING"を挙げて
みたい。タイトル通り、名曲「きみの朝」がトップに収められて
いる。シングル・アルバム共にオリコン1位を記録した。

岸田氏と言えば、それまでは初期の名曲「黄昏」や「部屋」に
代表されるような女性の心情を的確に表現した自作詞・曲で
知られていたが、このアルバムではキーとなる曲の作詞を
岡本おさみ氏(「襟裳岬」で知られる名作詞家)が担当し、
岸田氏はそれに曲をつけるという形をとっており、よりその
音楽世界を拡げることに成功している。また、自作詞の曲の
中にも岡本氏に影響されたように見受けられるものがあり、
非常に興味深い。さらに、当時の日本人アーティストの
アルバムの多くは、海外アーティストのそれと比べると
リズム体やエレキギターの音にどうしてもチープさを感じて
しまうのだが、このアルバムに関しては、あまりそれも気に
ならない。曲の良さがカヴァーしている、とも言えそうだ。

どの曲もホントに好きなのだが、特に1つ挙げるとすれば、
4曲目の「約束の日」。サビのメロディが今聴いても特徴的で、
イントロのエレキギターの音が凄くヘン。何のエフェクターを
通しているのか、いまだにわからない。「きみの朝」、この
「約束の日」、もう1曲の「つづれおり」と、当時の岸田氏の
作品はドラマや映画とタイアップして話題になることが多く
(今の業界のはしり、だな)、「新八先生」と「重いつばさ」で
それは最高潮に達するのだが、「重いつばさ」以降はその
タイアップも減り、また、岸田氏ご本人が俳優活動に力を
入れていったこともあり、アルバムのリリースは減り、
ヒット曲には恵まれなくなっていく。

現在の岸田氏は「敏志」と改名(読み方は同じです)され、
相変わらず俳優活動をメインに活動されているが、一昨年、
およそ11年ぶりにアルバム"KISSY'S WORLD"をインディーズ
より発表。新曲+「黄昏」「きみの朝」を始めとする名曲の新録
という構成だったが、残念ながら、過去曲の新録はオリジナル
ヴァージョンを超えているとはいえず、新曲の出来も今ひとつ
に思えた。ボク自身がミュージシャンとして多少なりとも
成長し、キビシイ耳を持ってきたこともあるのだろうが、
ちょっとこれは悲しい。"MORNING"の時代とは全く違った、
今の岸田氏ならではの歌が聴きたいところだ。氏の
ヴォーカルには以前にない艶を感じるだけに、尚更そう思う。

そう言えば、この"MORNING"も以前はCD化されていた
のに、今では廃盤。現在ではソニー時代の岸田氏の音源は
ベスト盤でしか入手できない。氏に限らず、この頃の
アーティストは皆同じような憂き目に遭っているようだが、
これも何とかならないものだろうか。

"SINGLE HEART"を買ってから数年の間、ボクは岸田氏の
都内でのコンサートによく足を運んだ。マーティンの
アコースティック・ギターを鳴らしながら歌うその姿に、
「カッコええなぁ」と感心していたものだが、当時は
よもや自分が十数年後同じような活動をすることになる
なんて想像もしていなかったのだ。やっぱり運命って
あるのかって感じ、AGAIN、です。

                         (2003年1月7日記)



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