共生への道のり。







警戒警報発令中。初日。 アザラシーズ家には妖精さんがいます。 
妖精さんは二匹いるらしく猫型をしています。 妖精ですから姿を見ることはできません。 
誰もいない時だけ現れて、ご飯を食べたり、
トイレに行ったり、いたずらしたりしているようです。
アザラシーズはその妖精さん達にハヤテとゲンマという名前を付けました。 今は見ることができませんが、 信じていればきっといつの日かその姿を目の前に現してくれることでしょう。 めでたし、めでたし。





……ってそんなわけにいくか! 

シェルターから帰ってくるなり布団ベッドの下を住処と決めたらしいオコサマ達。  さすがに全く姿を見たことはないということはないけれど、アザラシーズの気配がするときは、全くもってベッドの下から出てきてくれません。 餌がなくなっていくことと汚れたトイレだけが、彼らの存在がアザラシーズの妄想ではないことを証明してくれるようです。 ちなみに彼ら、トイレのしつけはばっちりでした。 一度も粗相したことありません。

それでも最初のうちはまぁしょうがないよね、と温かい目で見守っていたのですが、さすがに2週間たったころには ちょっと落ち込み気味のアザラシーズ。  病院にも連れて行かなきゃいけないのに、触るどころかまともに動いているところも見たことないなんて…。  覚悟していたこととはいえ切ない…。 続警戒警報発令中。二週間目。…変化無し…。





そんな硬直状態が続いたある日。 ベットの下でまるで置物のように動かない二匹を横目で見つつ、 どうやって懐柔するか作戦会議をしていたアザラシーズの横を駆け抜ける影が! ハヤテさんです! どうやらトイレに行きたかった模様。 しかしながら飛び出したのはいいけれどそこには敵の姿が(←ハヤテ視点)。  すっかり進退きわまり立ち往生してしまったハヤテさんは、とうとう部屋の隅でぶり。と、 う○こをしてしまったのです……。

なんとなくきまず〜い空気が流れる中、呆然としていたハヤテさんはそれでも何とか立ち直り、再びものすごい勢いで定位置の ベッドの下へ戻っていきました。





………。

………。

………いかん! このままでは双方にとってよくない気がする! 
でもこれじゃあ、らちがあかないしなぁ。 

悩んだ結果、アザラシーズ、戦法を攻めにかえてみることにしました。 
その名も「引いてダメなら押してみな所詮相手はお子さまだ本能に訴えてラブラブ生活をゲットしようじゃないか大作戦」〜!!  まぁつまり簡単に言えば食い物でつろうって事ですね。

タイミング的にもちょうど世の中はサンクスギビングディ(感謝祭)なので、ここは一発奮発してターキーの丸焼きです。  これで家中にターキーのにおいが立ちこめればふらふらと出てきてくれるかもしれません。





昼過ぎからオーブンに入れられたターキーは、夕方にはかぐわしい香りを出しながら、すっかり準備万端。  残念ながらにおいにつられて出てきてはくれませんでしたが、勝負はこれからです。

まだ子猫なのでおいしそうな所を細かく裂いて少量だけお皿にのっけてベッドの側まで。  あ〜、まさか家の中で野生動物の餌付けできるなんてなぁ。 そんなことを考えながら、お皿を置いて少し離れたところで待機です。

あんまり注目しないようそれとなく見ていたら……出てきました! ゲンマさんが。  抜き足差し足上目遣いでベッドの下から這い出してきて、こちらを見ながらターキーに恐る恐る口を付けました。 思えばこのころからゲンマさんの食い意地はかなりのものだったのでしょう。 すっかりターキーをお気に召したゲンマさん。  がつがつとハヤテさんの分まで平らげて満足そうにベッドの下へ戻っていきました。 

3メートル以上は近づけさせてくれなかったとはいえ、初めて目の前でご飯を食べてくれたのはやっぱりそれなりに嬉しいことです。  時間はかかるようだけどきっといつかは、と希望も見えてきました。





それからはできるだけ脅かさないように、けれどこちらはとくに構えないでひたすら待つことにしました。  この家で彼らに危害を与えるものは誰もいないというのを納得してもらうために。   ベッドの上でリラックス中〜。

そのうちたとえアザラシーズの気配がリビングでしていても、ベッドの下から出て遊んだりするようになり、 3メートルが1メートルになり、さわらせてくれないまでも一緒に遊んだり、近くでくつろいでくれるようになりました。 まぁ、それと同じくらい、そっとだっこしようとしてハヤテさんから強烈な後ろ足キックをくらったり、病院に連れていった不満を 恨みがましい目で訴えられたり、不用意に脅かしてしまい空中で一回転させてしまったり、などということはありましたが。





そしてとうとうその日はやってきました。 リビングでくつろいでいたアカの膝の上にそうっとゲンマさんが乗ってきたのです!  ただただ猛烈に感動しました…。

一度のってみたらよい塩梅だったらしく、それ以来ゲンマさんは本性をあらわしすっかり甘ったれに。  ハヤテさんのほうはもう少し時間がかかりましたが、今ではだっこをしても後ろ足キックをすることはありません。  つまり現在アザラシーズ家ではラブラブ生活を満喫中ということです。














今回の教訓 「ムツゴロウさんって偉大だなぁ」







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