封印する曲

「封印する曲」とは、「まだ、聴いてはいけない曲」です。

ベートーヴェン:交響曲第五番
ショパン:ノクターン13番
チャイコフスキー:白鳥の湖
ブリテン:青少年のための管弦楽入門

 どうして、封印されるべきかを書きましょう。『浦島太郎』の話を翻訳して、外国人(はじめてこの物語を知る大人)に読ませてみる、ことを想像してください。「たすけた亀」の恩返しで「竜宮城」へいくあたりでは「道徳的な話だな」と感じるでしょう。そして、もとのところに帰ってみると、時間がずれている。「SFだなぁ」とつぶやく。最後の「玉手箱」を開けた場面で、何か突き放されたような気持ちを抱き、感動する。…だろうとぼくは想像する。あの話は二転三転し、その度に読む側は翻弄される、はずなのだが、子どもの時から知っている話だから、今同じストーリーを知らされても、感動はしない。「今、初めて読んだのだったら、感動するだろうなぁ」という想像がつく、と言うのが限界だろう。
 上記の曲がクラシック版の『浦島太郎』。音楽の文脈が読めるようになった後で、ぜひ聴いて欲しい。その前に聴いてしまうと『浦島太郎』のときのように想像でしか、感動できない。そして、その種の感動は一回限りです。
 ぼくは音楽を専門に勉強してきましたが、上記の曲が穴場になっていたのです。ぼくが音楽を専門的に勉強し始めたのは高校生の時でした。生意気盛りの頃ですから、ベートーヴェンの交響曲第五番は「運命」ですから、あまりにも有名で、まじめに聞こうとしない。ブリテンの方も中学の時の教材で「聞いたことがあるな」という程度でした。「『入門』だからな」とバカにして、聴きませんでした。これが幸いした。そうとう音楽的な経験を積んでから、上記の曲を聴きました。
 今聴いて感動するのも、その最初の感動を思い出しているのにすぎないのです。特に、ベートーヴェンの方はその他にもいろいろ楽しめるところがありますから、第一楽章などは、いつ聴いても新鮮です。しかし、あのトリックを知ってしまうと二回目からはその部分は楽しめない。そういう意味で言えば、犯人を知っている状態で探偵小説を読むようなものです。ちょっとヒントを言っておくとベートーヴェンの場合は、第三楽章から終楽章に移る部分です。
 絶対に、はやまって聴いてはいけません。聴いてよい目安としては、
(1) 知らない曲を聴くのが苦痛ではない。(苦痛ではないが緊張感は伴う。苦痛でもなく、緊張感もないようなら、それは聞き流しているだけ)
(2) 10分間くらいは、ことばから解放される
この2つの条件を満たせば良いでしょう。

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