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六年前。
長崎県長崎市。
この地を基点として誕生し、のちに伝説とまで云われる集団。日本史上最大最強と謳われながら、たった三年でその姿を消した暴走族連合『HELL&HEAVEN』
それが設立されるほんの数ヶ月前に。
彼らは出会った。
幹部として『HELL&HEAVEN』に君臨した七人。
まるで何かに導かれるように、出身や年齢、身の上も趣向も違う者たちの出会い。
初めはただの敵として。
そして、いくばくもしないうちに。
やがてかけがえなのない『敵』として。
彼らは過ごすことになる。
長崎で。
史上に記されるであろう最悪の時代を。
駆け抜ける。
◇
翠屋でいつものケーキセットを注文し、双真は静かに時間が過ぎるのを待っていた。
彼が急遽エリザを呼び出したのが今日の朝。待ち合わせはちょうど午後の六時。それまで、すこしばかりの時間がある。
「お待たせしました」
若いウエイトレスがトレーにセットを載せて運んできた。
「ごゆっくりどうぞ」
手早くそれをテーブルに置き、何事もなくウエイトレスは仕事に戻っていく。
それはきっと、彼女にとってなんの変哲もない日常の一場面だろう。どこにでも見られる風景。その流れに身を任せ、日常を生きている。
ふと思い立って、彼は考えた。
今の自分は、果たしてあのウエイトレスとどう違うのだろうと。
変わらない。人の世にその身をゆだねている限り、その違いなど微々たるものだ。
思い出す。
全てが敵だと認識していた頃の自分を。無用に殺気を振りまき、敵は容赦なく殲滅していた頃の自分を。そうして耕介たちと出会って、彼は自分でもはっきりと自覚できるほど変わった。
人を殺したことさえある自分に起こった変化に戸惑いはしたものの、それも受け入れてしまえば、ただそれだけのことに過ぎない。
そして考える。
彼ら『HELL&HEAVEN』が自分にとってどういう存在なのか。どういう存在だったのか。
友人。仲間。好敵手。同志。
どれも違う気がする。
(彼らと離れた今なら、それがわかるのだろうか……)
その答えを知るために、双真は自分の記憶を模索する。
長針の先が、四の数字を指した。待ち合わせの時間まで、あと四十分。余裕のある空間の中で。
ゆっくりと彼の中の時間が逆行する。