18

 

     〜終幕〜

 

 見据える先にいるのは三人。

 二人が男。一人が女。

 槙原耕介と神楽双真。そしてエリザベート。

 見据える先に敵がいる。

 

 さぁ行こう。

 

 全てを壊すために。

 

      ◇

 

 アスタリスの刃が一斉に降り注ぐのを、三人はただ呆然と見ていたわけではなかった。三者三様に判断し、三方向へ飛びのく。

「耕介!」

「とりあえず大丈夫」

 声だけで確認し合いながら、耕介はさらに後方に飛びのいて距離を取った。

「え?」

 だがそんなことをせずとも、新たに現出した破壊者は標的を一人に絞っていた。魔術の壁で黒い刃を防いでいたエリザベートの後ろに回りこみ、アスタリスの防御で対処しきれないでいる彼女の腹部に、甲龍の手刀が深々と突き刺さる。血飛沫が上がり、甲龍の腕を赤い液体が滴った。

「ぐふっ!」

 血を吐き出す魔女の頭を掴み、甲龍は髪の毛を引っ張りながら地面に叩きつけた。後頭部からアスファルトの床にめり込んで、彼女がさらに苦悶の声を上げる。

「くそっ!」

 急いで御架月に霊力を込めようとして、だが耕介はその手を止めざるを得なかった。銀髪を掴み、自らの身体を隠すようにエリザベートの身体を持ち上げる。甲龍の瞳がこちらを捉えた瞬間、耕介は手にしていた剣を思わず落としそうになった。

(何て殺気だ!)

 だが何とか踏みとどまる。甲龍の意識がこちらに向いた瞬間にも、双真が行動を起こしていたからだ。そして、髪の毛をつかまれ、宙にぶら下げられたままのエリザもまた、反撃のための行動に移っていた。

calorictie(炎鎖)!」

 前にかざした腕全体を包むようにして、炎が紡ぎだされる。それは収束を経て、甲龍の顔面に直撃し、爆発する。やがて上半身を包み込むほどの炎が立ち上った。並みの人間なら、それで終わりだっただろう。しかし、それほどの炎の中から、甲龍が、年の頃二十代半ばの顔をおもむろに覗かせた。見た者全てを凍えさせるほどの嘲笑を浮かべながら。

「その程度で!」

 上半身を燃やしながら、だが甲龍はそのことをなんとも思っていないように笑った。子供のように舌を出してエリザを挑発する。

 そしてその言葉に反応したエリザが苦渋に顔を歪ませた時には、甲龍の顔から笑みは消えていた。髪を引っ張って身体を近づけ、アスタリスの柄の端で勢いよく魔女の顔面を打ちつける。その反動で身体がのけぞったエリザは、掴まれていた髪を開放されて数十メートルも後方に吹き飛ばされた。

 その様子を満足げに見つめながら、甲龍はため息を吐きながら身体を前に倒した。燃え盛る身体のことなど微塵も気にしない様子で、後頭部のすぐ後ろを過ぎ去っていく双真のとび蹴りをやり過ごす。何の受身もしないままに身体が地面に激突し、その拍子に剥ぎ取られるようにして炎が消え去って、火傷一つない甲龍の身体が出現した。

 そして仰向けになる。甲龍の頭部を踏みつけようとして空中で体勢を変えていた双真の意思など全くお構いなしに、甲龍は小さく右手首をひねった。それは本当に小さすぎる行動。わずかな反応、それでも、耕介にはまるでスローモーションのようにはっきりと、確実に、一部の見逃しもなく見ることが出来た。

 そして理解する。その行動に込められた意味。目的。狙い。

「双真、上だ(・・)!」

「!」

 甲龍の右手にあったアスタリスの柄に反応して、その分身たる刃が一斉に双真に降り注いだ。先程、耕介の身体を刻んだような粒子状ではなく、一塊の弾丸形態となって、標的の顔面を打ち据え、腹をえぐり、肉を削る。双真の反応速度を持ってしても、それは防ぎきれていなかった。甲龍が、彼の足を掴んでいたからだ。

「がはっ!」

 アスタリスに突き上げられ、地面に着地すら出来ない状態での攻防が続く。甲龍に向けて幾度も霊波砲を打つが、それも全てアスタリスの結界で弾かれてしまった。

 そしてその間にも、縦横無尽に行き交い、刃ではなく弾丸としてのアスタリスが彼の身体を貫き、打ちのめしていく。その攻撃が、包帯だらけの左腕に及ぶたびに、双真の悲痛な──めったに聞くことない苦悶の声が響いた。血が飛ぶ。肉が裂け、骨が軋み、寝転んだままの甲龍の顔に、双真の血の雨が降り注ぐ。それを美味そうに舌でなめすくって、甲龍はおもむろに双真の足を離した。

「なっ!」

 バランスを崩した双真の顔が、一瞬だけ耕介のほうに向けられた。視線が交じり合い、やがてそれは失われる。エリザよりも派手に回転しながら、散らばっていた鉄骨の山に投げ飛ばされる双真の顔は、瞬く間に見えなくなっていた。

「双……真……?」

 言葉にしてから自覚する。味方二人が吹き飛ばされた事実。

「……あぁ……」

 エリザも双真も、気配こそすれ動く様子はなかった。双真に至っては、姿さえ鉄骨に埋もれてしまって見えない。無事かどうかすぐにでも確認を取りたかったが、その考えとは裏腹に、一向に身体が動こうとしなかった。

 意識とは別の──ならば無意識かというと、それも違う気がした──感覚。言うなれば本能に近い獣のような肌触り。触覚。嗅覚。聴覚。およそ外交的な感覚全てが告げてくる。

(あれは……)

 彼は。

「破壊者だ」

 もう一度繰り返す。それは疑いの余地なく断言できた。彼から感じる波動。その意識下の葛藤。共有しているとでも言えばいいのだろうか。先程から、こちらの破壊衝動までもが駆り立てられ、嘔吐感が胸に充満する。

 彼は間違いなく、破壊者と呼ばれるにふさわしい存在。

(だから……)

「……勝てない」

 言ってから、耕介はすぐに否定した。

 勝てない? 否。勝てないことはない。勝つことは出来る。破壊者は、万能ではない。決してない。

 あれが破壊者なのだとしたら、必ず自分と同じ弱点が存在する。

『破壊者』は戦闘意識、引いては破壊衝動を突発的に爆発させることによって生じる戦闘力の増幅器である。あれは筋力を増強するわけでもなければ、体力をあげるわけでもない。だというのに、総合戦闘力は飛躍的に増大する。

 その理由について、耕介は半ば無意識に理解していた。

 およそほとんどの人間は、無意識のうちに設定した肉体的な限界値を持っている。生まれ持った才能や、育った環境などで個人差もあるが、どれだけ訓練しようと、それは必ず存在する。それを超えれば身体が崩壊するためだ。痛みとは、いわばそうなる前に肉体が訴える危険信号のことである。

 だが、得てして人はそれを精神力で超越することが出来る。設定した限界値を超えても、それを痛みと感じないほどの精神力。

『破壊者』はその精神力の増幅が顕著に現れる。戦闘という一種特殊な、生命の根本を問いかける活動において、大抵の痛覚を消去する、もしくは意識を無感動にすることで、全ての限界値を超える精神力を生み出してしまう。

 医学的知識を持っていた友人が言うには、大部分が休止状態、もしくは停止してしまっている細胞の活性化を引き起こすものであると。遺伝子情報の局地的覚醒。人間が持つ生物的特性の解除。

 破壊者になることはいわば、人間を捨てることになりかねない行為なのかもしれない。なればこそ、なんの戦闘訓練設けていない耕介が、『HELL&HEAVEN』の幹部でいられたのだ。

 そしてそれを続けた(・・・・・・)先にあるのは無残な肉体の崩壊でしかない。それが分かっているから、双真は自分を無理やりにでも止めたのだ。

 故に──

(あのまま戦えば、いずれ身体が悲鳴を上げる。崩壊を始める)

 だがそれまで、甲龍が待ってくれるとも思えなかった。

 そして、甲龍がそうなるまで戦い続けられるほどの体力が、今の自分に残っているとは思えなかった。双真とエリザを袖に出来るほどの戦闘力を持つ『破壊者』相手に、どれだけ時間稼ぎが出来るというのだろうか。

 例え、今の自分が甲龍と互角だとしても、はたまた時間稼ぎが成功しようと、結果的にはどちらも同じだということに、耕介は気づいていた。

 どちらも同じ。

 甲龍が死ぬという結果は同じ。

 戦おうと、戦いを避けようと、もうあの男は助からないだろうという予感があった。

 そしてそれを実行に移すのは他ならない自分。彼を殺すのは自分。その事実が、自分自身に枷となっている。その葛藤が、身体が動かない最大の原因だということを、耕介は理解していた。

 殺す覚悟がなければ勝てない。

 最初から、殺す気でかからなければ決して勝てない。そうしなければ、死ぬのは自分。

 それでも──

(駄目だ!)

 殺さない。誰も殺してはならない。

 そうでなければ、今までの自分の戦い全てが無駄になる。自分のために戦ってくれた双真とエリザを、自分の帰りを待ってくれている少女たちを、かつての『HELL&HEAVEN』の仲間を裏切ることになる。

 大切な人たちのために、何より自分のためにも、殺すことだけはしてはならない。

 耕介にあるのは唯一つ。

 殺さない覚悟だけ。殺させない決意だけ。

 だが……。

(どうすればいい? どうすれば勝てる。殺さないで、そうさせずに勝つためにはどうすればいい!)

「くそっ」

 打つ手がない。勝つ手立ても思い浮かばない。甲龍はゆっくりと、こちらを認識して歩み寄ってくる。一歩一歩、かみ締めるように。

 いつでも殺せるかのようなその勝ち誇った笑みを見て、耕介は再度戦慄を覚えた。

(どうする?)

 殺さずに勝つ。なんとも甘く、身勝手な行為だと、耕介は自嘲した。彼は──甲龍はおそらく殺し合いを望んでいる。だから破壊者を望んでいた。耕介が破壊者と呼ばれる存在となるのを望んでいた。それに反して、決して助けられることなど望んでいないだろう。助けるというのは、あくまでその対象よりも上位にいる者が考えることだ。受け取り様によっては驕りでしかないのだ。

 殺す気もない。だが殺される気もない。ああ、考えて見れば、なんともあやふやな覚悟ではないか。とてつもなく自分が不確かで、かつ曖昧な存在である気がして、耕介は逃げ出したくなった。耕介が望むのは、本当に、何の結果も意味もない、だが確実に未来に繋がる結末だけなのだ。

 そしてそれを実現させるには、まず彼を正気に戻さなくてはならない。目の前の、おそらく実力的に遥かに上であろう敵を、元に戻さなくてはならない。

(今の俺にできることはそれくらいか……)

 彼の未来を断絶してはいけない。破壊してはいけない。奪ってはならない。

 どれだけ不明瞭だとしても、そうすると決めた。決めたなら、後は従うだけだ。突き進むだけだ。

 余計なことなど考えず。

(そうだ。考えるな)

(俺は負けない。絶対に負けない!)

 言い聞かせるように呟いて、耕介は御架月を構えなおした。剣の本体である少年の応えはなかった。眠っているわけでも、疲れきった風でもない。ただ、全てを耕介に任せるように、静かに振動し、その意思を同調させてくる。まだ霊力は残っている。

 まだ、戦える。

 エリザベートの魔術で、少なくとも身体の痛みは完全に取れていた。痛みが無いだけなので、動くと生じる違和感はどうしようもなかった。動けるだけましだと割り切る。

 先程全身を支配した破壊衝動とは違った熱が、耕介の身体を包んだ。心臓から送り出された力が、ゆっくりと全身に流れ込んでいく。指先から、髪の毛の先に至るまでの全てが熱で覆われる。

 自分の身体が霊力で発光していることに、耕介は気づいていなかった。それはやがて波紋を生み、彼の周囲の空気に感染して小さく放電を繰り返した。

 目指すべきものは一つ。

 甲龍の破壊者解除(デストロイ・ブレイク)

「殺してやるよ、槙原耕介」

 彼のその言葉がきっかけになる。こちらに歩み寄ってくる敵に向かって、耕介は走った。

 それを見た破壊者が、ゆっくりと口を歪ませ、と同時に、滑らかな動作で行動を起こす。身体を沈ませたかと思うと、凄まじいほどの速度でこちらの間合いを詰めてくる。

 瞬く暇もなく、黒き刃がまとう魔力と、御架月が放つ霊力がぶつかり──

 全てが白濁に包まれた。

 

      ◇

 

 その異変に気づいたのは、小さな事件がきっかけだった。

 その日、俺は、いつものように集団リンチを受けていた。子供の頃、よくいじめられていたから、その日も別段何の異常もなかった。

 俺にとって、それが日常だったからだ。

 だが、その日、俺をいじめていたグループのリーダー的存在のちょっとした言葉で、俺の理性は蒸発した。だからその後はもうよく覚えていない。リーダーが何を言ったのかも、今となっては覚えていない。

 気づいた時には、自分の周りに血まみれで呻き声を上げる、数人の子供たちがいた。ある者は顔面がつぶれ、ある者は腕や足が変な方向に曲がっている。

 ふと、俺は自分の手が何かに触れていることに気づいた。

 赤い液体──それは血だった。

 俺が半殺しにした子供たちの血だった。

 

 何故そんなことをしたのか。何故そんなことが出来たのか。疑問を抱く間もなく、事態は進んだ。息子のしたことに怒り、罪を償えと言ってきた親を、俺は破壊した。何故か、そうしたかった。ひょっとしたら、俺をいじめていた連中を半殺しにしたときの余韻が残っていたからかもしれない。冷静に、だが今度は手加減なく、俺は破壊を実行した。

 結局、親でさえ俺を止める抑止力にはならなかった。

 あっけなく首がもげた両親の前で、俺は感激した。今度は意識を保っていられたからだ。悲しさも、恐怖も、一方でうれしさや楽しさも抱かなかった。

 壊したい。ただそれだけが俺の中を支配する。だがそれを達成しても、何かしらの快感が得られるわけでもない。欲求だけが、増幅していく。

 破壊という過程的な活動に、異常な興奮を覚えてしまう。

 そうして、俺は隣近所に出向いて破壊を行った。ちょっとした挨拶をするように、笑顔のままで、物も、動物も、人も、あっけなく壊れた。そうするうちに、俺は自分の破壊衝動を意識して特化できるようになった。多大な成果だった。

 

     ◇

 

 視界の揺らぎを感じて、耕介は頭を振った。緊張か、痛みか、息遣いが荒くなっていく。高鳴る鼓動を抑えることも出来ず、硬直し続けた。うつむいた先に、闇夜に冷やされたアスファルトが彼を迎える。そこで初めて、耕介は自分が立っているのだと知った。

 そして不意に意識によぎる。

 今ここで倒れたら、さぞ心地よいだろう。楽だろう。地面に寝そべり、目を閉じる。そしてやってくる闇は永久のものだ。光は二度と訪れない。けれどそこには安息がある。絶対にやり直せない安住が約束される。

 死という名の自由の下に。

 

      ◇

 

 思えばそれすら、計算されていたのではないかと思えてくる。俺が破壊に従事して数年後、俺は犯罪者になっていた。故郷を追われ、国を追われ、全てに拒絶された。否、俺自身がそれらを拒絶した。

 そんなものはいらない。そう思った。破壊する邪魔になるものなど、俺は認めない。

 ああ、だがそれでも居場所を作ることはできた。『龍』という組織に入り、成り上がった。自分が特別な存在だということがわかったからだ。弱肉強食が全ての世界で、俺の欲求は随分満たされた。

 これで思う存分破壊できる。誰にも邪魔されず、誰にも気兼ねすることなく。全てを壊し、全てを否定する。これ以上ないと思えるほどの至福のときだった。

 しかし去年。

 監視者として『龍』より派遣された先で、年端も行かない少女たちが製造されている(・・・・・・・・・)のを見た。彼女たちは自意識を持っているように振る舞い、感情を表現していたが、だが俺は知っていた。オリジナル以外の存在は皆、機械によって管理されていることを、俺を含めた『LCプロジェクト』関係者は全員知っていたのだ。

 複製され、一年にも満たない期間で十数年の成長を果たした少女たちに、外観に相応する知識や感情があるはずもない。

 全てが造りもの。

 身体も心も、命さえも贋物(つくりもの)

 俺の感情に、小さな歪が生じたのはその時だった。

 

      ◇

 

「壊れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!」

 若返ったせいか、彼の声までもが高く裏返っていた。大体、何故老人だった甲龍が、破壊者になった途端若返ったのか。そこからまず、理解できなかった。

 いや、うすうすは感づいていた。

 彼は破壊者なのだ。

 そしてそうなることに、なんら疑問も、違和感も、わだかまりも、抵抗さえも感じていない。

 破壊者がもたらす身体の崩壊。それが示す前兆(・・)。細胞の活性化によって引き起こされる最後の力。

 そして耕介は視た。アスタリスと御架月がぶつかった瞬間に起こったエネルギー暴走による爆発。その威力に吹き飛ばされながらも、白濁とした意識に同調した記憶を、耕介は確かに視たのだ。あんな記憶は自分にはなかった。自分ではないのなら、誰のものかは明白だった。

 御架月と出会った時のように、体中に走り抜ける電気が、甲龍の記憶を耕介に見せてくれた。

 そしてだからこそ、耕介は確信した。

 甲龍が間違いなく自分と同じ(・・・・・)破壊者(デストロイア)』であるということを。

(俺って、そっち方面の才能でもあるのかね)

 そうするうちにも、耕介は徐々に余裕を失っていった。振り下ろされ、襲来するアスタリスを避ける。アスタリスがこちらに軌道修正する前にその破片をなぎ払い、再び視界が混濁した。

 

     ◇

 

──汝は誰がために生きる

 

 本は言う。否。声は幻聴に過ぎない。本は語らない。ただ、その黄ばんだ紙面に記す。

 

──汝は誰がために生きる

 

『お前に生きる理由をくれてやるよ』

 

     …

 

 生きる理由。生まれた理由。死ぬ理由。

 造り物の生命体を見て、俺の胸に飛来したのは、小さな疑惑だった。

 俺は破壊を望む者。

 喜怒哀楽の区別なく、破壊する、壊すという過程のみに生きる意義を見出した者。

 だが何故、自分にそんなものがあるのだろうか。

 破壊を繰り返した先にある未来とは何なのか。

 性能を試験するために、プロジェクトは段階を踏んで少女たちに戦闘技術を与え、互いに競わせた。それが、さらに俺の疑問を深くした。

 何故、戦うのか。何故、破壊するのか。

 そうする間にも、少女たちは争いを繰り返し、やがてその数を減らしていく。そして残った二体が完成体として選別され、さらに改良が行われる。

 より優秀な兵士として。より高機能な兵器として。

 造られたことさえも気づかないまま、戦いを臨む兵士として。

 その彼女らを見て、俺自身が破壊を望むのは何故かと疑問を抱いたのは、至極自然な流れだった。

 ひょっとしたら、この感情は誰かに操作されたものなのではないか。

 

『確かめてみればいい。お前と同類がいるこの町(海鳴)で』

 

 彼のこの一言(・・・・・・)が、俺の未来を決めた。

 

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