…
それからしばらくして(諸事情により、ラブシーンは割愛させていただきます。皆の視線が怖い)、桃太郎たち一向は無事鬼が島に到着しました。
さて、無事に島に漂着した一人と三匹。
そこには、いかつい鬼が住む城がそびえ立っていました、
キジ(瞳)「どうしよう」
桃太郎(真一郎)「今は進むしかない。いくぞ」
言って、桃太郎は勇気を振り絞って前に進みます。と、
鬼其の二(唯子)「あははは、そこまでだ」
高らかと声が響き、三人の角が生えた鬼が登場しました。
桃太郎(真一郎)「お前たちが鬼か?」
鬼其の一(みなみ)「そうだ。わたしたちが鬼だ」
別の鬼が言います。
鬼其の一(みなみ)「人間よ。いますぐ去るなら、命までは取らずに許してやろう。だが、荷物はすべておいていけ」
鬼其の三(弓華)「そうデス。おいていくデス」
キジ(瞳)「そんなこと、おとなしく聞くと思ってるの?」
と、応戦したのはキジです。それに、サルが続きます。
サル(いずみ)「そうだ。我々はお前たちを退治しに来たんだ。あっさりと引き返せるか!」
桜(さくら)「どうします?桃太郎様」
桃太郎(真一郎)「桜はどうしたい?」
桜(さくら)「私は、貴方様の行くところならどこにでも」
桃太郎(真一郎)「うん。僕も君がいてくれればそれでいい。百人力とはこのことだよ」
桜(さくら)「はい、二人で鬼を退治しましょう」
キジ(瞳)「私たちがいること忘れてるわね。こいつら……」
ぼそりと呟いたキジの声は、しかし二人には聞こえていませんでした。
桜(さくら)「きび団子を食べるように仕組んではいかがでしょう」
と、桜は言いました。
桃太郎(真一郎)「うん。確かにひとつの手ではあるね」
と、桃太郎が覚悟を決めたように前に歩み出ます。
桃太郎(真一郎)「ところで、鬼」
鬼其の二(唯子)「なにかな?」
桃太郎(真一郎)「君たちは人間よりも能力が優れているんだったね」
鬼其の二(唯子)「そうだ。お前らでは私たちには勝てない」
が、桃太郎はマイペースに話を続けます。
桃太郎(真一郎)「ってことは、人一倍食事もするんだろうね」
鬼其の一(みなみ)「……何を言っているのかはわからないけど、ここにいる三人の食欲は尋常ではないぞ」
──(あ、今の台詞にみなちゃんショック受けてる)
──(あれは女の子には失礼よね)
──(でも弓華先輩と唯子先輩は気付いてませんよ)
──(まあ、あのふたりはねぇ……)という外野の声を踏み越えて、物語は架橋を迎える。
桃太郎(真一郎)「そう。なら僕たちは荷物を全部置いて、退散することにするよ」
その桃太郎の台詞に、キジもサルも驚いたようでした。
キジ(瞳)「桃太郎?あんたどういうつもり?」
キジが詰め寄ります。疑問符を浮かべる二人を無視し、桃太郎は桜に下手なウインクを返すと、しばらく様子を見ようと小声で言いました。
鬼其の一(みなみ)「よしよし、殊勝な心がけだな。お、これはきび団子か。うまそうだな」
そう言って、鬼の一人はそれを口にしました。
鬼其の一(みなみ)「お、うまい。おい、これ結構いけるぞ。食べてみろ」
それから、鬼たちは残ったきび団子を全部食べてしまいました。
そして。
鬼其の二(唯子)「な、なに?」
変化は急にやってきました。最初にきび団子を食べた鬼の一人がパタンと倒れたのです。やがて、残りの二人も倒れてしまいました。
一方、その様子を見ていた一同は、鬼の傍により、その生死を確かめます。
キジ(瞳)「死んでる」
即死でした。
あなどりがたし、おばあさんのきび団子。
キジ(瞳)「っていうか、私たちよく平気だったわね」
サル(いずみ)「そうですね。でもなぜ変身したのでしょう?」
桜(さくら)「桃太郎様が願ったからじゃないですか?」
キジ(瞳)「どういうこと?」
桜(さくら)「つまり、貴方たちが団子を食べたとき、あの方はサルとキジがお供になってくれないかなーなんて考えていたんじゃないでしょうか」
キジ(瞳)「なんでそんなこと考えるのよ」
桜(さくら)「桃太郎様ですから」
その回答は、滅茶苦茶ではあったけど納得できるものでした。サルとキジはなるほどと頷きます。
サル(いずみ)「でも、桜さんのときはどうです。なんで変身しなかったんですか?」
桜(さくら)「私のときは、ほら。桃太郎様が私にこの姿でいてほしいって想われたからじゃないですか?」
そういって、桜は頬を染めました。
キジ(瞳)「はいはい。のろけは他でやってね。つまり、あの鬼たちは彼が倒したいって願っていたから死んだと、そういうことね」
桜(さくら)「はい」
それで、なぞは解決しました。
げに恐ろしきは人の望みをかなえるきび団子。
ふと帰り際、キジが重大な問題に気付きます。
キジ(瞳)「ねえ、あのきび団子で変身した私たちって、戻るにはどうするの?」
サル(いずみ)「やっぱりもう一度食べるべきじゃないですか?きび団子。もう一度おばあさんに作ってもらって」
キジ(瞳)「げっ!」
心底いやそうにキジが嘆きます。
けれど、戻れるかどうかも桃太郎次第ということを、二人は忘れていました。
その後。
鬼ヶ島から帰ってみると、おじいさんはなんとか生きていました。
桃太郎(真一郎)「よく我慢しましたね、おばあさん」
桃太郎も喜びます。その御褒美として、桃太郎は鬼ヶ島の財宝で土地を買い、おじいさんとおばあさん用に屋敷を立てました。
そして……。
桃太郎(真一郎)「さくら。僕と一緒になってくれるかい?」
桜(さくら)「はい。貴方になら、私の全てを差し上げます」
桃太郎(真一郎)「桜……」
桜(さくら)「桃太郎様……」
二人の影が重なります。
めくるめく夜の営み。
桃太郎(真一郎)「あ、桜。血吸っちゃだめ」
というのは桃太郎の寝言。
こうして、桃太郎と桜は末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
…
劇、当日。
お芝居自体は大盛況だった。斬新なストーリーは園児たちを飽きらせることなく終了し、その目的であるボランティアは達成できたといえる。
そしてその打ち上げパーティにて。
さくらとななかを除く女性陣全員から総すかんをくらい、真一郎は全治一ヶ月の怪我を負うことになる。
「ま、子供の前で本番やっちゃあ駄目だろ」
というのは、その様子を見ていた大輔の呟き。
「真くんのばか……」
「まったく、男の子っていうのは……」
「うー、唯子もさすがに傷つくよ」
「まあ自業自得だ」
「そうデスネ」
「相川君って、さくらちゃんのこと好きなのかな?」
そんな様々な思考が飛び交う中、当の劇本番中にキスを二回も奪われたさくらはというと──
「先輩、嬉しかったです♪」
そうはにかむように笑って、真一郎の世話を焼くのだった。
おあとがよろしいようで。