残暑見舞いSS(とらいあんぐるハート)








 夜中に雨が降っていた
 それは、俺が夜中の鍛錬の途中で気づいた
 美由希が最初に気づき、気が抜けてこけたのだ
 俺はそのことについて、ため息交じりに言った

「美由希、今日は終わり……先に帰ってろ」

 そう言って、先に帰らした
 美由希は少しぶつぶつ言いながら先に帰っていった
 俺は周りを確認する……誰も居ない
 ただ雨がしとしとと降っていた
 雨の中で1人立っているのは滑稽に映るだろう
 しかも、山の中だし……




『雨が降っている夜』





 ただ、1人濡れながら歩く
 雨が降り始めて大分時間が経っている
 それでも、俺はまだ神社の山の中で空を見上げて立っていた
 それがどう言う事か分かっていたけど……
 それでも、帰る気にはなれなかった

「思い出す、幼い時の記憶か……一度、こういう時かあさんが迎えにきたよな」

 そう、鍛錬の時……あの頃は父さんも生きていて
 それで雨が降ってきたんだ
 父さんは雨の中の鍛錬だって言って……それで雨の中で泥だらけでして
 そのまましばらく鍛錬を続けていたんだ
 そしたらかあさんが来たんだよな……
 どうして雨の中するのとか父さんに聞いていて、父さんが困った顔を浮かべていた
 俺は1人立っていて、こうやって上を見上げていた
 それこそ、何を考えているという感じで……
 その時は、誰を思い出しただろう……ただ、1人かあさんと父さんの様子を見ていた
 少しの寂しさと父さんを取られたような感じを味わったんだ
 初めてのことで分からない感情に流された
 だから、身体を動かした……ただがむしゃらに……
 一本の木が倒れるまで斬りつけていた……父さんから貰った練習用の小太刀で
 あの頃は子供だったと思う
 そして、父さんが止めてくれた……
 何で過去を思い出したのだろう?
 いや、夜で雨が降っていたのなんて何度もあるのに
 だけど、思い起こさせる記憶が俺には寂しさを思い起こさせる

「帰らないと心配かけるのにな……」

 後ろから気配が近づいてくる
 誰か分かる……だから、振り返らない
 ただ、待っているだけ……

「…………そうね、心配したよ」

 そう言ってくれると分かっていた
 ただ、俺には振り返らない
 今、振り返ったら泣いてしまいそうで
 いや、もう泣いているのかもしれない……

「人が雨に濡れたいときか……」

 俺の背後の気配はそっと近寄る
 雨の音がする
 葉がすれる音、雨が葉に当たる音、雨が傘に当たる音
 風が吹いた……

「恭也は泣きたいのじゃないの?」

 俺に聞こえる声が俺の涙を誘う

「そうでもないと思う」

 つよがっておく
 ここで泣いたら、駄目だと思ったから
 今まで頑張ってきたものが壊れてしまいそうだから……
 父さんが亡くなって、俺は兄だから、一番の年長者だから……
 そして、父さんの代わりとして、頑張らないといけないから

「でも、人が雨に濡れるのは涙を隠すためか、純粋の傘を忘れてしまったかだよ」

 にこやかに言い切る声
 俺にはそれを真似する気はない

「傘を忘れたんだ」

 俺も言い切って応える
 ただ、あまりにも関係の無い答えだと思う
 だって、ここでは雨宿りしかないから
 神社の境内か社で……
 だけど、俺はそれもせずに……ただ1人立っていた
 髪の毛が額に張り付く
 目は閉じていて……どうとでも、取れるようなそんな感じ
 音と気配だけで判断する……御神流なら出来る

「そっか……なら、私も濡れようかな」
「風邪を引くからやめてくれ」
「じゃあ、恭也も濡れてないで傘に入ったら」
「駄目だ、これだけ濡れたら変わらない」
「もう……」

 少し不貞腐れたような声
 俺にはそれが心地よくも聞こえる

「じゃあ、私が近づくわよ」

 そう言って、背中に温もりが広がった
 抱きつかれていると分かるまで数秒を要した
 初めての感覚で戸惑いを覚える

「どうして?」
「1人で泣いてると人は駄目になるものよ……
 だから、私も一緒に居てあげる……雨に濡れて涙を誤魔化すなんて
 卑怯よ……家族にも私にすら弱さを見せないなんて」
「そうなのかもしれない、けど……」
「駄目……」

 抱きしめる力が強くなった
 背後から伸びてる手……
 俺のお腹の胸で確りと繋がれている
 それに目をやり、すぐに上をむく

「じゃあ、しばらくそのままで居てくれ」
「いいわよ……」

 俺はそのまま上を向いて涙を流した
 父さんが居なくなって初めての涙
 誰を悼むわけでもない……悲しさを拭うことを避けていた
 悲しさを感じないと思い込んでいた
 寂しさを感じてないと考えていた
 そんな弱気な心をもってはいけないと考えていた
 だけど……もう持っていた心を離すのは出来なくて……
 こうやって思い出したときに……一人泣いた

「恭也……背が高くなったね
 それと……お疲れ様」

 声を掛けられて、声を殺して泣いた
 涙を流して、瞳を閉じて……悲しさが取れるまで
 今度、また父さんの所へと行くことを考えて……
 後ろからの抱擁を受け入れる






『恭也……お前には辛い思いをさせるな
 本当なら遊びたい時期に小太刀を覚えさせて
 なのはの世話を任せていた
 お前の悲しみに気づけず……俺は逝ってしまった
 桃子を置き去りにして……守れる者が守れなかったのだ……すまん、恭也』






 父さんの声が遠くて聞こえたような気がした
 ただ、居ない人を悼む
 その行為がこんなところでしても意味ないことだろう
 俺の声さえ届いてればいい
 だから……

「帰ろうか」
「ええ」

 1人は傘をさして
 1人は傘をささずに
 帰路を歩きだした
 雨の中……暗い夜道でも2人で歩いてれば大丈夫
 2人が弱くとも1人1人で支えあえるから
 俺は進んでいける
 家族を守れると……









 おわり〜








 あとがき
 はい、シリアスで書中見舞いです
 シオン「全く……もうすぐコミケらしいわ」
 なんだろうね? コミケ
 ゆうひ「遊び人は行ったことないので知りません」
 本当に知らないのだ
 シオン「まぁ、今回のは暑いので気を付けてねって事で」
 そうなんだよ
 ゆうひ「では、どうぞ〜」
 シオン「誰に?」
 えっと……この前のページにかいてあるので……
 ゆうひ「ほなね〜」
 シオン「って、それでいいの?」
 ゆうひ「いいんじゃないの?」
 とりあえず、また〜


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