生き残ったものたちの放浪記
その14 士郎
撮影が続いて、理恵さんのお父さんである佐伯社長も何度か足を運びにきた
何でも、相談があるとのことで監督さんと色々話していた
個人的なこともあるので、俺たちとは違う部屋で話したりしてるみたいだ
そして、理恵さん誘拐未遂事件から4日が経ったとき、目の前に父さんが立っていた
その姿はいつもと違い、護衛をするという姿でだった
小太刀「八景」を持ち、他にも装備類は全部持ってるだろう
「父さん?」
一瞬呆けてしまったけど、聞いてみる
「恭也、お前が居てくれて助かったよ……佐伯社長から連絡を受けて
俺が理恵ちゃんの護衛につく……」
「アルバートさんは?」
「美沙斗がついてるさ……本当は美沙斗がついたほうがいいのではと打診はしたのだけど
俺の方が安心できるからってな……それにたまに親子で話したいこともあるだろうって
佐伯の奴が言ってな」
「ごめん……迷惑かけて」
「謝るな……悪いのは佐伯を狙った奴らだ
できるだけ犯人の選定に組織の選定をするが、時間がかかるのは確かだ
だから、恭也……お前も出来るだけ」
「うん……理恵さんもエレンさんも守らないと……
他の方たちはいろいろとあって、武道の型とか知ってる人多いけど
全員というわけじゃないし」
「そうだな……恭也、お前にも教えないとな
護衛をすると言う事が危険であり、尚且つ自分も守らないといけないということを」
父さんは俺の頭を撫でる
普段しないことに驚いてると、父さんはにやりと笑う
「ま、お姫様を守るのはナイトの勤めだ
お前にも働いてもらわないと、守れないんだよ」
父さんが言ってるのは撮影中のことだろう
理恵さんの方は父さんが確りと見てるから、エレンさんの方は自分がって事なんだろう
「でも、父さんとか美沙斗さんとかの剣とかの腕前だったら気づかないよ」
「大丈夫だ……そうなったら、大体俺が気づくはずだ
できるだけ先手先手を打っていきたいんだ」
「うん……」
「だから、大丈夫だ」
「分かった……信じてるからね」
「ああ」
父さんは頷くと、俺の背中を押す
そっか、そろそろ出番か……
後方から理恵さんと父さんの話し声が聞こえた
「恭くん、大丈夫かな?」
「あいつは大丈夫ですよ……俺が保障します」
「分かりました……でも、誘拐騒動が起きてから警備物々しくなりましたね」
「すまんね……流石にコレばっかりは」
「いいんですよ……安全第一です」
そんな話し声を聞きながら、エレンさんの所に行く
次は何をするのか忘れてしまった
確か……
「次は火が出てくるから気を付けてね……
エレンもね」
「はい……大丈夫だろうと思いますけど」
「で、恭也くん……君も」
「はい……ちょっと失礼しますね」
チェックはされてると思う
でも、直前に変えられたりしたら、アウトだな
爆弾か……父さんの顔が凄く険しい
多分、思い出してるんだろうなぁ……御神宗家で起きた爆破事件を……
「でわ、これよりラストシーンを撮りますが、万が一の際には
逃げる事……何かあっては遅いので……以上
カメラとかは直せますが、人は治せないませんからね」
監督が声を大きくして言う
その言葉に周囲からつばを飲み込む音が聞こえる
緊張感が今までより遥かに高い
そうだったな……このシーンは火薬も使うし
エレンさんを抱き上げて、脱出するというアクションシーンだ
初対面では無いが、それでもエレンさんは少し暴れて静かになるというシーン
だから、緊張感が高くなるのは至極当然ということだ
一歩失敗すれば……大怪我ものだろう
「恭也くん、此処とあそこが大体爆破される地点……
で、エレンを抱き上げながら走るの大変だと思うけど、お願いね」
「はい……エレンさん、片腕だけ放さないで下さいね
落ちると思うので……」
「うん……でも、大丈夫? 私、重くないかなぁ」
「大丈夫ですよ……それなりに鍛えてますから」
俺はそう言うと、スタート地点につく
エレンさんが一個目の爆破地点から次の間に立つ
エレンさんを抱き上げて、向こう側へと行く
人形を使えばいいのだけど、声だけ後で取って映像を今作るという段階だ
まぁ、駄々をこねるエレンさんを宥めながら走るって事なんだけど
結構辛いな
走る距離は100メートルくらい……
20秒以内に駆け抜けないと危険だろうな
父さんを見ると頷く
合っていると言う事だろう……
「でわ、始めます……恭也くん、スタートはどういう格好でもいいよ……」
「はい」
答えて、一応クラウチングとかあるのを思い出す
でも、普通にスタートでも変わらないだろうと思いそのままの体勢で走る格好を取る
ここから、全力ダッシュ……エレンさんを抱きかかえるのは軽くジャンプして腰と足の裏に腕を通して
その後またダッシュ……できなきゃいけないだろう
「スタート!!!」
監督の声がその場に響く
走る走る……20メートル地点で後ろの出発点が爆破
口あけてて良かった……
一応耳栓はしてるもの、音が響きまくっている
そして、エレンさんを抱きかかえると、エレンさんは驚きでしばらく暴れる
っく!! 間に合わないか!?
いや、間に合わせないと……エレンさんまで傷ついてしまう
エレンさんの居た位置が爆破
エレンさんが居たのが50メートル地点
そして、最後に70メートル地点も爆破
突破して、俺はエレンさんを抱き上げたまま、息をする
火薬特有のにおいがする……あの時はこれ以上にひどいにおいを発していたような気がする
「カーート!! よし、後は声だな……」
監督がそう言って、みんなの緊張が解ける
俺は足ががくがくなっているのに気づいた
一瞬だけだけど、世界がモノクロに見えた……
父さんを見ると、父さんは驚きの表情をしていた
エレンさんは俺に抱き上げながら耳栓を外している
俺が少し呆然としていると、エレンさんが俺の耳栓を外す
「恭也くん、大丈夫?」
「え、あ、はい、大丈夫です」
エレンさんを下ろすと、エレンさんは座り込んだ
「怖かったぁ」
「そうですね」
「平然とやってのけた人に言われたくないよ〜」
エレンさんは俺の腕を掴んでいた
小刻みに震えているその手は本当の恐怖心があったということを実感させた
「恭也くん、エレンさん、声を収録するので……着てもらえますか」
助監督に呼ばれて、俺とエレンさんは行く
エレンさんに至っては俺の肩に捕まる感じだ
足に力が入らないとか……俺の方が怖かったのだが……
ま、足元が爆破されてたら驚くのも無理ないけど……
「でだ、恭也くん……声いける?」
「はい」
「私も大丈夫ですよ……で、なんて入れるんですか?」
「台本通りで行くから、臨場感込めて頼むよ」
というわけで、声を入れることとなった
これって、声優じゃないの?
まぁ、いいか……とりあえず台本通りに言う
周囲は静かで音響さんが近くに居る程度だ
「放して、放して!」
「暴れないで下さい……嫌なのは分かりますが、死にたいのですか!?」
「うっ」
「確り捕まっててください!!」
エレンさんはそのまま行動で起こす
本当にそれだけ……
でも、会話は10メートルくらいの間で交わされるのだから、ある意味驚きだ
ちなみにこれが5度目でやっとこさ成功だ
俺がミスったんだよ
エレンさんは失敗しないのに、俺だけ間違ったのだ
理恵さんと父さんが近くで音響さんの仕事を見ていた
父さんはニヤニヤと笑っている……目の奥からは鋭いものがあったけど
そして、理恵さんも楽しそうに見てた
「よし、いいよ〜恭也くんもはじめてのことだもんね
お疲れ様」
「すみません、エレンさん、カシオさん」
「気にしない気にしない、結構順調だし、早く終わりそうだからね……」
「恭也くん、固くならなくていいよ〜、もっと気楽に行かないと」
音響の人はカシオ・ベルリーニさん
ミスをする事に毎回励ましてくれたんだ
父さんは笑ってばかりだったけど……
でも、疲労感が凄いな
足に力入れてるけど、あまり入ってない感じがするし……
「あの、この後って撮影ありましたっけ?」
「後は……確かベットシーンだね」
父さんが吹いた
理恵さんは赤くなって固まっている
「ま、それは明日に持ち越しだよ……先に映像と声を合わせないといけないから」
「そうですか……監督さんに指示貰ってきますね」
「ん、ああ」
カシオさんはすでに声が聞こえてないのか、さきほど取った声を加工している
他の音も聞こえないと可笑しいので、そのあたりの補正だろう
そして、監督のところに行こうとしていたら
理恵さんとエレンさんと父さんが横にきた
「恭也……お前、足重いんだろう?」
父さんが俺の体を軽く持ち上げる
って、荷物みたいに片腕で持ち上げないで!!
「と、父さん!!」
「全く、驚かされたぞ……」
「理恵ちゃんは恭也くんって頬がぷにぷにだよ」
「わ、本当だ」
「理恵さんも遊ばないで……」
しかし、俺の反論をよそに俺を弄ぶ女性陣だった
「で、恭也くんはどうするの……」
「とりあえず、今日は休ませるしかないと思う
明日には大丈夫だろうが……」
「分かった……監督にはそう伝えておくから恭也くんは此処に居てね」
「じゃあ、理恵さん、お願いします」
父さんは理恵さんを俺に預けると座らせる
っていっても、落としたに近い
受身をとって、何とか痛みを和らげる
「全く……理恵さん?」
「無理してる……痛い時とか疲れてるときはちゃんと言わないといけないんだぞ」
「うっ」
理恵さんはどうもお姉さんみたいな感じがするのだ
おっとりしていて、大人しいのに、俺の前では確りと言うお姉さんだ
「恭くん、心配してる人も居るんだぞ……」
「すみません」
理恵さんが指を俺の前に出して、約束だったことを言う
「今度無理したら、1つだけ言う事聞きますって約束したよね?」
「……はい、そうでした」
「じゃあ、今日は一緒に寝よ♪ エレンさんも一緒に……」
「ぐはっ」
「大丈夫だよ、士郎さんからも許可貰ってるから」
すでに貰い済みですか?
そして、走ってくるエレンさんと父さん
今日はこれで終了と聞くと、4人でご飯を食べに戻るのだった
お昼はすでに過ぎていて、3時という時間だった……
朝から撮ってたのに時間早いなぁ
つづく〜
あとがき
後少しで恭也が襲われる
シオン「違うでしょうに」
ま、違うけどね〜
ゆうひ「逆でしょ……エレンさんが恭也に襲われるんでしょ?」
それに近いかな……
シオン「近いの?」
あまり近くないけどね
ゆうひ「どっちやね〜ん!!」
スパパパパーーン!!!
シオン「ハリセンだ」
ゆうひ「久々だけどね」
シオン「遊び人ピクリとも動かないけど」
ゆうひ「あれ?」
痛っ!
シオン「どしたの?」
熱で体がボーとしてる上に打撃だから体が持たないんだ
ゆうひ「あらら……大変ね〜」
う〜ん、辛い……
シオン「でわ、また〜」
ゆうひ「ほなね〜」
でわです〜、次回は何時になるか全く分からないので〜でわでわ〜(^^)ノシ