空が彩を取り戻し、雀が朝を運ぶ頃合い

私は起き上がります

枕元にたたんでおいた着物に腕を通し、帯を締め…

鏡の前で髪を結わい、仕事の邪魔にならぬようにします

因みに、今は結ってしまった髪は私のお気に入りです

皆様がほめてくださった銀の輝きを放つ髪

異端だと思っていた髪ですが、皆様はきれいだと言ってくださいました

だから私も好きなのです

さて…どこも、おかしいところは無い様なので、私は動き始めます

何をするかと聞かれれば、私の仕事…と答えざるを得ません

そして、仕事とは? と問われれば…

「さて…本日は、誰が一番に起きておられるのでしょうか?」

私…御神冬華(みかみとうか)の朝一番の仕事

自分を救ってくれた方々を起こすことなのです

 

 

 

存在意義

 

 

 

 

ここは知る人ぞ知る、ある意味未知の世界に満ち溢れた場所

その名も『御神宗家』

裏世界に名を轟かせている本家です

永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術…長いですね

略すと、御神流というかなり短く、かつ、分かりやすい名前になります

兎にも角にも私は、そこにお世話になっています

そして私は、御神家の方々を起こそうと、現在行動中

本当は、そんなことをしなくてもいい人たちばかりなのですが、中にはやっぱりいるもので…

そんな人を起こしてくれ…といわれて始めたことです

無言で、そして気配を消しながらそのお方の部屋の前まで歩いていきます

私も御神宗家にいる、ということでそれなりに御神流を扱うことがでるのですが

やはり、本家の方々に遠く及ぶことはなく…

気配を消すことと、足音を消すことだけが上手くなる毎日

だって、この二つを怠ったときは、私が死ぬような目を見るとだけ言っておきましょう

すすす…と毎日の日課の無音歩行と気殺をやりながら、目的の場所まで移動移動…

自慢ですが、この二つだけは皆様に引けを取っていないと自負できます

だから今回も気が付かれることは無いはず

そんなことをやりながら、ようやくそのお方の部屋の前に到着

朝からやけに長い気がしたのは気の所為でしょう

さて…部屋の前に来たのならやることは一つ…

宗家一番のねぼすけさんこと不破士郎…

どこで作ってきたのか、すでに子持ち

名前は、不破恭也くん

まだ子供だと言うのに、やたらとしっかりした子です

ですが、一度たりとも士郎さんを起こしたことはありません

決して、起こそうとしていないわけではないのですが…

原因は多々あるようなないような、といったところですね

まあ、入れば恐らくはその状況になっているでしょう

「士郎さん…朝です、起きてらっしゃいますか?」

などと確認を取る必要はまったくないのですけどね

外まで聞こえてくるイビキが寝ていると言うことを教えてくれますから

それと同時に、恭也くんが起こすのを失敗したと言うことも教えてくれます

「はぁ…剣の腕は確かなのに…」

実力だけを取るなら、御神、不破を含めてもかなり上の方に位置する方なのですが…

あれですね、どんな人にでも欠点はあると

「失礼します…」

すすすすっとふすまを音もなく開け中に侵入…モトイ、中にお邪魔します

中に入りあたりを見回すと案の定、恭也くんが壁に張り付いていました

起用にさかさまに張り付いているところ見ると問答無用でぶっ飛ばされたようですね

「……恭也くん…恭也くん…大丈夫ですか?」

壁に張り付いている恭也くんを起こします

仕事をそっちのけにするのはだめなような気がしますが、そんなことはお構い無しです

可愛い子を助けるのは世界の常識ですから

「う…あ、あれ? 冬華さん……また…ですか?」

「また…ですねぇ…」

私が間髪要れずに答えると、恭也くんは大きなため息をつきました

また、私の手を煩わせてしまったことを申し訳ないと思っているようです

別に私の方は仕事としてやっていることなので、むしろ大歓迎といったところなのですが…

真面目ゆえにそう言うことが許せないのでしょう

「気にしなくていいですよ。これは私の仕事ですから…それよりも、早くご飯にしましょう」

「……………そうですね…」

士郎さんのいことだけとは思いますが、この切り替えの速さは剣士としてはいいことですね

「それじゃあ、いつものとおりですので…」

「はい…よろしくお願いします」

そう言い、恭也くんは部屋を後にした

そして残った私はもちろん、お仕事です

「さて…では…失礼します……」

再び気配を消し無音で士郎さんの足元に移動します

「おりゃ…」

小さな掛け声とともに、布団が吹き飛びます

………別に洒落ではないのであしからず…

「ぐ…がぁ〜…」

ここまでされて起きない凄腕の剣士……

こんなのでいいのでしょうか?

まあ、私の気殺がそれだけすごいってことですね

少しだけ得意に思いながらむき出しになった足を片方だけ持ちます

「ぐがっ…」

流石に何か異変に思ったのか、多少身体が引きつりました

でもここまできたらもう無駄です

後はこれを持って皆様の待つ、居間へと向かうだけですからね

「ずるずるずるずる…………♪」

「う…お…こ、こら…! 冬華! またか!!?」

「ずるずるずるずるずるずる…♪」

死人にくちなし…

馬の耳に念仏

豚に真珠

猫に小判

朝食前の私にぴったりのことわざですね

「飯前に、冬華に無駄は、言葉かな…」

「なにを訳分からんことを…さっさと離せ!」

「問答無用…言語道断…士道不覚悟…………切腹ですね」

「…………新撰組か?」

「………良くご存知ですね」

「まあな」

ふふんと、引きずられながら起用に胸を張る士郎さん

どうやら話をそらせられたようですね

「って早く離せって」

ちっ……

仕方無しに私は離すことにしました

そのころには目の前に皆様が集まっている居間が目の前にありました

さて……それでは私も入り、朝食と行きましょう

すすすっと正座で戸を開けすすっと中に入ります

「おはようございます、皆様」

それが私の一日の始まり

御神冬華としての始まりです

  

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