人生とは、あなたにとってなんですか?

そう聞かれたとき、私は何も答えることは出来ませんでした

頭の中には言葉が生まれてきたと言うのに、言うことは出来ませんでした

絶望

地獄

悪夢

どれを取ったとしても、自分にとっては残酷なものでしかありませんでした

しかし…

あの方たちにお会いすることができてから…私の人生は変わりました

いえ…変えてくださった、と表現したほうが適切かもしれません

朝日から逃れることもなく

夕闇に恐れることもなく過ごすことができる

感謝の言葉もありません

ですから、私は働くのです

私の出来ることで、皆様に尽くすのです

 

 

 

存在意義

 

 

 

「………………」

今私がいる場所は、御神宗家の皆様方が愛用していらっしゃる道場

そしてそこで私は目を閉じて呼吸を整え、剣を両の手に持ち集中しようとしてました

広い道場の真ん中で一人剣を握り意識を高めていく

16の女の子がやるようなことではないですね

でも日課にしていることなので、どうしようもないです

そしてこれが、恩返しの一つでもあるのです

今でこそ私はここ、御神のお屋敷に居候させていただき、あまつさえ御神の名もいただきました

しかし、それには結構複雑な事があったのです

話はさかのぼって今から11年前…

私は孤児と呼ばれるものでした

親も無く帰る家も無く、名前さえなく彷徨っていた日々

5歳の頭で必死に生きようと歩いていました

食べ物を得るために、食べ物屋さんの裏にまわり、残飯をあさる毎日

小汚い服装に身を纏い、ただ何を求めるでもなく歩き続ける毎日

同情してくれる人は誰一人として現れませんでした

それほどまでに、私の姿は醜かったのでしょう

子供心に、何故誰も助けてくれないのかと疑問に思ったものです

そしてある日……

私は、所謂コンビにから泥棒をしました

欲を出さなければそんなことにはならなかったのでしょうが、何せ当時5歳の子供です

好奇心と欲望に勝てるはずも無く、気がついたときにはすでに手に持って走っていました

罪悪感などもちろんありませんでした

何故なら教えてもらって無かったから

教えてくれる人がいなければそうなると思います

物心付いたときには一人でしたから…

心の中は喜びと同時に恐怖でいっぱいでした

手の中には戦利品

後ろからは怖い形相をした店員のおじさん

これで怖くないというなれば、私は5歳の子供ではなかったでしょう

兎にも角にも、私はあっさり捕まりました

経験者なら逃げることも出来たでしょうが、私は初心者です

無理なのは当たり前です

そんな時…

「あの…どうかしたんですか?」

「ん? このボロガキは店から品物を取ったんだよ! ったく…さっさと返しやがれ!!」

「…!!!」

振り上げて、幼い私を打とうとしたおじさんの手をあの御方…静馬さんはその手を掴み止めてくれました

そのときのおじさんの顔はとても面白かったと記憶しています

「な、何するんだ!?」

「こんな小さな子を打つことはないですよ。お金は…俺が払いますから」

そう言ってポケットから財布を出してお金をおじさんに渡しました

渡されたおじさんはお金と静馬さんを交互に見て、しぶしぶ引き下がっていきました

「もう大丈夫だ…でも、お店から何かを取ることはよくないことだよ」

優しい笑顔でした

あんなに優しい笑顔を私は見たことがないほどの笑顔でした

でも、私がその笑顔に対してやったことは…

「!!!!」

静馬さんが片手に持っている財布に向かって飛びつくことでした

あの中にはほしいものを手に入れる何かがある

そう確信して飛びついたのですが、当然無駄でした

ひょいと回避され襟をつかまれ、一瞬で私は猫へと早代わり

「変なことは考えないほうがいいぞ。大丈夫だ…悪いようにはしない」

それだけ言うと、そのまま私を連行してしまいました

抵抗しますがまったくの無意味でした

あの時は考えもしませんでしたけど、どんな気持ちで暴れる私を持っていたんでしょうね

下手をしたらあの状況…誘拐といっても間違いないありませんでしたから

でも抵抗はすぐに終わりました

何故なら抵抗は無意味と理解したからです

まあ、たかだか5歳が現役剣士に勝てるはずも無いですけどね

そうして、まんまと私は御神のお屋敷に侵入できたわけです

 

 

「(クスッ…)」

昔を思い出すと、少し恥ずかしいです

世界はこんなにも光に満ち溢れているものと知らなかったですから

「あらあら…今日も、鍛錬なの?」

「はい……私は…琴絵さんのようには動けませんから」

私がそう言うと、くすくすとやたらと優しい笑顔で笑う女性

御神琴絵さん

普通に戦えたら、御神流最強の名をほしいままに出来る…はずの方なのですが…

病弱な身体のために、戦闘時間があまりにも短いのです

佳人薄命、才子多病とはまさにこの人のためにあると言わんばかりの言葉です

「もう少し、色気を出しても罰は当たらないと思うのだけれどね」

「いえ…色気をだすなど、ブルジョワのすることです」

「ブルジョワって…どこで覚えたの?」

私の言葉に、動揺することなく的確に質問を返してきます

「………………明日は晴れますね」

「まだ、今日と言う日が始まったばかりよ?」

終始笑顔で私のボケを砕いてくれる琴絵さん

やはり私は、琴絵さんには適わないようです

「だけど、本当にもったいないわ…冬華ちゃんが学校に行けば、どれだけもてもてだったことか…」

その姿を想像しているのでしょう

再び、くすくすと優しく笑います

「いえ………そんなことは無いと思います…」

私は、自分の分をわきまえているつもりです

それに……やはり御神の方々以外の人は怖いですから…

あの視線…

子供のころに向けられた視線は、今でも恐怖の対象なのです

蔑みと、侮辱…

その視線を向けられるのが、どれほど恐ろしいことか

中には御神の方々のような人もいるのでしょうが、やはり怖いものは怖いのです

想像すると、怖くなってきて震えが止まらなくなります

だから私は話を変えることにしました

「ところで、琴絵さん…今日はどうしたのですか?」

「あ、うん…多分、冬華ちゃんがいるかと思って…ね?」

そう言って取り出だしたりますは、二本の小太刀

因みに、真剣ぽいです

「……………明日は雨ですね」

「昨日の天気予報では、一週間晴れだったわよ」

………どうやら逃げられそうに無いです

天国にいるであろう、父と母へ

私はもうすぐそちらに逝ってしまうかもしれませんが、快く迎えてください

「ほらほら、早く準備して♪」

やたらと楽しそうな琴絵さんと対象に傍から見たら絶対に分からないように沈む私

妙に明るいおーらと、黒いおーらが印象的です

そして、その私の気を知らない琴絵さんも素敵と言っておきましょう

「…分かりました……」

もはや観念するしかないと判断した私は、手にしていた小太刀を鞘へ一度納めなおしました

そして、着物の帯に二刀差しの形で納めます

本当の私の型は『十字差し』というもっとも基本的な型なのですが、琴絵さんの剣に追いつくには抜刀がしやすいこの型が
対処しやすいのです

もっとも、そんな工夫をしたところで、私が勝てることは無いのですけれど…

「それじゃあ、いくわね」

声はさっきまでと変わりは無いのですが、気迫の桁が変わりました

ここにいることが苦痛と思えてくるほどの威圧…

顔は笑顔なのに…です

だから私は琴絵さんと鍛錬するのは避けたかったのですが…起こってしまったことはどうしようもないですね

「ふぅぅぅぅぅ…」

覚悟を決め、息を吐き、気を高めていく

どうせ勝負は一瞬です

予想では、三回剣閃が閃けば終わるはず

そう思いますが、出来るだけ…そう、出来ることなら一撃を…

「………………」

無言で腰を落とし、剣に手を沿え抜刀の構えへと移ります

せめて一撃

そう心に決めて…

 

 

 

「………………」

「………………」

沈黙が私たちの間に流れます

そして、汗が私の頬を伝って床へと落ちます

それだけ、緊張して気おされているのですが、琴絵さんの顔を見ますと…

「(ニコニコ)」

笑顔をまったく絶やそうとしません

本音が吐けるのなら間違いなくつぶやいてしまうでしょう

怖い』と

後のことを考えれば絶対にいえませんけど…

以前、士郎さんが言ったことがあったのですが、その日の夜に何者かの襲撃を受けて重傷を負ったことがあるのです

間違いなく琴絵さんしかいないでしょうね

普段は本当に優しいお姉さんなのですが…

まあ、今の状況、そんな余裕はありませんけど

兎にも角にも動けないのが現状といったところです

迂闊に動けば、一閃で斬られること間違いなしですから

しかし…

「来ないの?」

「……………」

「それじゃあ、私からいくわね♪」

いえ…『♪』…などといわれても困るしかないのですが…

どうやら覚悟を決めなければいけないようです

「シッ…!」

「!!!!!」

琴絵さんの身体が、一瞬揺らぎます

そう思ったときには気配が追えなくなりました

琴絵さんの常套手段

御神流奥義の歩行・神速を活用しての動きです

戦闘時間が短い琴絵さんは、いかにして相手を早く倒すかが課題となってきます

ですから、戦闘開始直後神速を使って相手を切り伏せるのですが…

最近では、それの応用を使ってくるので本気で手に負えません

神速と気殺の併用

一体どれだけの集中力を持っている人なのでしょうか?

ですが、私だって負けません

眼で追えないのなら、感じるまでです

眼を閉じ、私の周りに気を張り巡らせます

第六感を鋭くすることによって、限りなく無に近い琴絵さんの気配を捉えるのです

ですが、これだけでは足りません

後は…勘です

これに尽きます

その時、一瞬だけ背後から殺気を感じました

「っっっっ!!」

咄嗟に身体を捻り、抜刀します

ガキャアと言う硬質な音が響き、剣と剣がぶつかり合ったことを教えてくれます

ですが、それだけでは止まりません

「ッ!!!」

瞬時に左からの斬戟が私を襲います

「くっ…!」

逆手で一気にもう一つの刀を抜刀して防御…

「かはっ!!??」

斬戟を防御することには成功しましたが、同時に繰り出したであろう蹴りが私の腹部…もう少し細かく言うのであれば
急所である鳩尾に決まりました

一瞬世界が歪みます

呼吸が出来なくなり、意識を保つことさえ、難しい状況

どうやら『徹』までおまけしくれたみたいです

ですが、終わるわけには…!

「はい、おしまい♪」

「ぁ……」

何とか足を保たせ、顔を上げようとしたとき、全ては終わりました

首筋に刃を当てられてしまったのです

こうなったら死んだも同じ

また完敗です…

適わないと分かっていても、正直凹みます

「あらあら、そんなに気を落とすことは無いわよ。初太刀をかわせただけでも、かなりの進歩なんだから」

実際そうなると言えましょう

初めてのころは、開始0.5秒ほどで終わりましたからね

私だけではありません

琴絵さんがあの戦法の取り始めは10秒もつ相手はいませんでしたから

「ありがとうございます…」

ですので、お礼だけはしておかなければいけません

「それにしても、やっぱり神速使いに神速が使えないのは痛いわね〜」

「……………………」

こればかりはどうしようもないことです

私は、御神流をやっていますが、実を申しますと身体のほうはそんなに丈夫ではないのです

どれだけ丈夫でないかといいますと、神速が使えないくらいですね

以前神速を使ったら大変なことになったんです

体中の骨が軋み、筋肉が全て切れそうになり…と、いった感じになったのです

それ以来、神速の使用は硬く禁じられてしまいました

自分でも、そんな目にあってまで使おうとは思いませんが、もしもの時は使うつもりです

その、『もしも』がくれば…ですが

「やっぱり成長期の時に無理したからかしら…?」

「…もともと弱かったんですよ…きっと…」

私のことだと言うのに、悲痛な顔をして悲しんでくれる琴絵さん

それはそれで嬉しいのですが、出来ればそんな表情をしてほしくないです

私は皆様に喜んでもらうためはなんだってやるつもりです

ですけど、悲しまれてしまっては私はどうすれば良いのか分からなくなってしまいます

「それに、神速が出来ないからといって御神流そのものが出来ないわけではありませんから」

あくまで、神速を使った超人的な動き限定ですからね

普通に普通に剣を振るえば問題はないのです……恐らく…

「そうね…冬華ちゃんには冬華ちゃんの戦い方があるからね?」

「はい……『同じことなら誰でも出来る。 ならば、他と違うことに自分を見出せ』 ですから」

「あ、それ静馬ちゃんの、受け売りね?」

「…………はい…」

そう…先ほど言ったことは静馬さんに言われたことです

御神正統継承者・御神静馬さん

私をここへ誘拐してきた張本人で、私が勝手に思っている恩人さん

静馬さんがいなければ、私は今頃のたれ死んでいたことでしょう

ですから恩人なのです

「ふ〜ん…なんだかんだ言っても静馬ちゃんのこと好きだったんだ?」

「……好き…そうですね…ですが、憧れている程度ですよ…」

それくらいでちょうど良いのです

だって、静馬さんは既婚者ですから

奥さんから横取りするなんて…

それに、奥様の美沙斗さんから、横取りするなど無理です

女の私から見ても、美人ですし、優しいですし、料理も裁縫も完璧にこなしますし、あまつさえ剣技もできてしまうと言う…

おまけのおまけで、すでにお子さんもいらっしゃいますし

完璧です

こんな人に勝負を挑んで勝てるわけありません

いろんな意味で…

「ふふ…まあ、いいけどね」

「それはそうと…琴絵さんの式はいつ挙げるのですか?」

この人もこの人で、ちゃっかりものです

長年病気持ちで、最近ようやく本当の健康体になったと思ったら、いつの間にか契りを交わす中の殿方を見つけてしまったのです

「え? あ、あはは…来月の頭…かな…?」

私の質問に少しだけ頬を紅く染める姿はいつもの年上の女性と言う感じではなく、本当に少女といった感じです

と、言っても私には分かりませんけどね

「私にカウンターをするなんて…本当に成長したわね…」

「いえ……」

「でも、やっぱり浮いた話一つは聞きたいわ♪」

「………………」

結局、こんな感じで返されてしまうのですね…

一時の反撃は後に自分の首を絞める…と

反撃して優越感に浸ろうとしたのですが…まったくの別の目的になってしまったようです

「さて…それじゃあそろそろ、私は行くわ。後のことは任せて大丈夫?」

「はい…きちんと後片付けしますので…琴絵さんはゆっくりしていてください」

「うん、後で報告…よろしくね?」

「承りました…」

言うが早いか…琴絵さんはささっと道場から出て行きました

私はもちろんその場に残ります

『後片付け』が残っていますから

「さて…そろそろ出てきたらいかがですか?」

「良く、我の気配を感じ取れたな…だが、一人になったのは間違いだったようだな?」

道場の片隅から出てきたのは少し小太りな男でした

「間違い…? 勘違いしないでください」

「何?」

小太りさんは私の言葉に、眼を細めます

でも知ったこっちゃありません

「私ごときに気配を悟られるような人間を他の方々が気が付かないわけはありません」

「ほう…ならば、お前は見捨てられたのだな」

ニヤニヤと笑うその顔は見るに耐えませんね

それに勘違いもかなりひどいですし

ある意味面白いと言えば面白いのですが…これ以上御神の家を汚されたくは無いですから

「私に回されたと言うことにすら気が付かないのですね…? 私程度で十分と言うわけですよ」

言いながら私は小太刀を二刀差しから十字差しに変えます

「甘く見られたものだな」

「…甘く見ているのはどちらですか? 私個人を見くびるだけならともかく、御神を甘く見ないことです…
あなたのような下衆がおいそれと侵入していい場所ではないのです」

まあ…それは私にも言えることなのですが…

とにかく、これは後片付けというには少し御幣があると思います

どちらかと言えば…

「塵掃除は私の管轄なので…ゴミ箱に直行していただきます」

そう…これは塵掃除といったほうが正確のようですね

「ほ…う…」

小太りさんから明らかな殺気が膨れ上がります

ですが、この程度の殺気ならどうってことないです

琴絵さんの方が100倍…いえ、もっともっと…桁で表すことが出来ないほど怖いです

「どうやら、早死にしたいらしいな…?」

「早死にしたいのはどちらでしょうね? どんな目的かは知りませんけど、御神に侵入したのですから」

ここに殺気を持ち込んで侵入した者は、死あるのみ

生きては返しません

「御神流、御神冬華…相手になりましょう…」

 

 

 

対峙する時間はほとんどありませんでした

小太りさんが動いたからです

小太りさんの武器は、今時珍しい『鎖鎌』

小太刀との相性は最悪といってもいいでしょう

だから、小太りさんが来たのかもしれません

おりゃああああ!!!!

ある程度の距離…私が一足飛びで届かないであろう距離から鎌のほうを投げつけてきます

間合いの外から攻撃をする…一応の兵法は知っているようですね

ですが、見学していたのにも関わらず、私の力量を見誤るのは素敵です

ッ!!

襲い掛かる鎖鎌を、身体を回転させて回避します

そして、道場の床を蹴りつつ遠心力を使い、一気に間合いを詰めます

神速は使えません

ですが、流れに乗って動けば誰でも早く動けるのです

古来からの、日本人の動き…

円の動きを利用すれば、攻撃力、行動力は、2倍にも3倍にも跳ね上がります

私が編み出した、歩行

『やなぎ』ではなく、『りゅう』です

編み出したといっても、まだまだ修行中

御神の方々相手にはほとんど使えないのですけどね

ですから…

「動きがトロイな!!」

離れていた鎌が小太りさんの手元に戻ってしまいました

やはり、実践にはまだ早いようです

が、それならそれで、普通にやればいいだけの話

シッ!!!

小太りさんが次の動きに入る前に、間合いに入ってしまえばいいのです

体勢を一気に低くして、加速するために足に力を込めます

そして、たまった力を全て床へと流し、初速から最高速へと移行します

「おう!?」

奇妙な声を上げて、驚きを表す小太りさん

しかし、もはや何をやろうと手遅れです

「うおおおおお!!」

慌てて、鎌を投げ飛ばしますが、それは間違った行動ですね

こういう場合は、逆に落ち着き、相手を見据えて動くべきです

それから、長い武器は投げちゃダメです

小太刀のように接近戦用の相手に、良いようにやられちゃいますから

フゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!!!!

その結果、こうなります

御神流

裏・奥義の参

セッ…ぁあああ!!!

射抜

距離は残り、数歩と言うところ

私の小太刀は寸分たがわずに、小太りさんの腹部へと向かいました/p>

すでに私の世界は、音も無い静かな世界

そして…

トスッという音と共に訪れる、リアルな肉を貫く感触

決して気持ちのいいものではありません

が、そこで終わりでは無いのです

「さようなら…です…」

 

 

虎乱

 

 

血が飛び散り、道場に花を華を咲かせます

それは何物にも勝るウツクシサと、狂気を重ね添えた華でした

小太りさんはすでに、小太りさんではなくなってしまいました

今ではタダのたくさんの肉塊

大体3〜4個に分断されてしまいましたね

小太刀に付いた、血を和紙でぬぐいます

早くしないと血で錆付いて、使い物にならなくなってしまいますから

それにしても…

「………今月に入ってから、4人目の侵入者…今年に入ってからは、17人…」

これは一体何を表しているのでしょうか…?

今までも、侵入者、刺客、道場破りはありましたが、この数は異常と思えます

何かの前触れ…それもよくないことの…

そんな気がしてしかたありません

しかし、まあここで私だけで考えても何も始まりはしないでしょう

早くこの塵を片付けて報告しないといけませんし…ね

そう頭の中に浮かんだら即行動です

問題を先送りにするようで、気分はよくありませんが、今は頭をすっきりさせたほうがいいみたいです

「さて…始めます…か」

 

 

 

 

 

時間は流れに流れて、今は深夜と呼ばれる時間帯

その時間帯に、光は街から送られる光か、月からの恩恵でしか現れることは無い

そんな中、黒の服装に身を包んだ者たちが数人

異様ともいえる画の中に居た

「これ以上の失敗は取り返しが付かなくなると思われますが…」

「………もう一度、牽制を行ってみるか…」

「自分は速いほうが良いと思いますが…」

「大事はできれば避けたい…簡単にはつかませるつもりは無いが、尻尾を出すことになりかねんからな…」

「では、数名…同時に強襲させます」

「そうしてくれ…」

会話はそれっきりとなった

後に残ったのはただの闇だけ

一枚岩ではない人間の関係

そのうちの一枚にはめられた歯車が、新しい時を刻もうとしていた

狂ってるであろう歯車で、音を立てて……

 

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