「あれは…」

遠くの方で、確かに爆発が広がった。

かなり大きいものだ。

恐らく、その付近に居たものは全滅は間違いないだろうな。

「すみません…」

「なんだ?」

考えていると、俺の後ろから細身の男が話しかけてきた。

所謂部下と言う奴だな。

「御神の屋敷が…その…吹き飛びました…」

「……………………そうか」

長い沈黙の後、出てきた言葉それだけだった。

それしか言えなかった。

進は…死んだ。

もうこれは間違い無いことだ。

「処理はどうします?」

「……生き残りがいるかもしれん。 確認だ」

「了解しました」

「ああそれと…もし生き残りが女だったら、顔だけはやめておけ。 せめてもだ」

「はい…」

それだけ言うと、男はその場を後にした。

恐らくは納得していないだろうが、仕事はこなすだろう。

後は、もしあいつがしくじったときの事を考えてスタンバイしておくだけだな。

だが…。

「何も死ぬことは無いだろう………進…」

止めようと思えば、止められたはず。

だが、ここでそんな真似をしていらぬ誤解を招きたくは無かった。

ようやく掴んだチャンスをみすみす潰すわけにはいかないのだ。

御神の人間にはすまないが、こちらにも都合がある。

譲るわけにはいかなかった。

『生き残り確認。 これより排除します』

「了承する」

『了解』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え…?」

私は、自分の眼を疑わずにはいられませんでした。

もうもうと煙を上げ、全てが崩れ去っている現実。

目の前には、まさに崩れ落ちた御神家がありました。

「そ……な……え? 今日は…琴絵さんの…結婚式で…それで……あれ…?」

まともな思考は働こうとしません。

働くはずもありません。

何が起こっているのでしょうか?

目の前には、何もありません。

ただ…黒い瓦と、崩れている木が無造作に置かれているだけ。

焦げ臭い臭いとが鼻につき、だけど現実は見えません。

「琴絵さん…? 静馬さん…? 士郎さん…? 一臣さん…? ………皆さん…どこですか?」

呼びかけても、誰一人として返事はかえってきません。

何故…?

皆さんは他の場所で式を行ったのでしょうか?

それとも、私をからかうために、こんなことをしたのでしょうか?

「フ…フフフ…それは…ひどいですよ……私をからかっても…何も…ありません…ありませんよ?」

ふらふらと、夢遊病者のように虚ろな足取りで屋敷のあった方向へと足を進めます。

不安定な足場を何とか、抜けます。

ですが、あるものは変わりません。

ただのぼろぼろのものが広がるだけです。

「あ…ああ…………何が…何があったんですか!?」

思わず、叫んでしまいました。

ですが、虚しく響くだけです。

「静馬さん……。 っ!?」

瞬間、胸に違和感を感じました。

何事かと思い、触れてみると…。

「血…?」

血が…熱い血が、胸から溢れていました…。

何なんでしょう?

この熱い血が、無理やり私を現実へと持っていきます…。

何が見えるのか?

現実に見えるもの…それは一つの…文字。

 

 

 

 

 

 

「あ…あああ…ああああ……」

事が切れたように、崩れ落ちる私。

死…。

みんなみんな死んでしまった?

認めたくない現実。

でも……でも……。

「排除完了しました。 これより帰還します」

不意に私の耳に聞き覚えの無い音が響きました。

排除?

音の主が…これを…?

皆さんを…殺した?

熱い…。

熱い何かが私の中を満たしていきます。

もう何も考えられません。

いえ…何も分かりません。

でも、唯一その中にあって、確かなものがあります。

それは……それは………!!!!!

「ウ…アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

「え? がぁ!!!??」

「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「ぐぁ! カペっ!! ぐぎゃ!」

「オマエガ…お前ガアアアアアア!!!」

人の肉がつぶれる音。

人の骨が砕ける音。

全てが私を満たしていく…。

止まらない。

止まれない。

許さない。

許さない!!!!

飛び散る、血と肉片。

眼を潰し、顔を歪ませ、指を千切り、足を砕き、臓器を叩き潰す。

顔に返り血を纏わせても止まらない。

「がああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにがあった!?」

通信が不意に途切れ、聞こえてくるようになったのは、無残な声と、非道な音。

肉が潰れ、骨が砕ける音が通信機から、いまだに途絶えずに聞こえてくる。

聞かずとも、分かっている。

だが、聞かずにはいられなかった。

頭の整理のために、言葉を紡いだのだ。

「胸を撃ち抜き…倒れた後…突然叫び出し…それで……尖を……潰しました」

それは、例えなどではないのだろう。

本当に潰されたのだ。

くっ…やはり俺が行くべきだったのかもしれない。

これ以上の穢れを拒んだ結果が、部下の死につながった……。

「………処理をするぞ…」

静かにそう言うと、皆恐怖に引きつった顔をしながらも、俺の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

気が付くと、周りは血で池が出来ていました。

その真ん中に私は佇んでいます。

胸に感じる、熱い痛み…何もかもが現実だと思い知らされて、気分が萎えます。

別に初めから、萎えるほどの気分を持ち合わせては居ないのですが…。

なぜ…こうなってしまったのでしょうか?

私は…私は…。

パスッ

一つだけ、再び乾いた音がかすかに私の鼓膜を震わせました。

ですが、今度は一度ではすみませんでした。

何も無い、静かな青空の下、何度も何度も乾いた音が響きます。

そのたびに私の身体は踊り、力が抜けていきます。

血が噴出し、辺りに華を…紅い華を煌びやかに咲かせます。

太陽に反射したそれは、美しいの一言。

そして…気が付いたときには、私は横たわっていました…。

何も出来ずに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任務完了だ…」

銃からサイレンサーを取り外し、ホルスターにしまった。

「ご苦労さま……」

「なっ…何故お前がここに!?」

突然の声に顔を上げると、予期せぬ人物が俺の目の前にいた。

「何…お前たちに休暇の知らせをとな…」

「何だと!? 何故だ!!」

「今回の件に関わったものは、全て排除する。 上の決定だ」

何故だ!? それだけ、俺たちの存在は邪魔なものにはならないはず。

今まで、俺たちのチームはそれなりの戦果をあげてきた。

組織にとって、マイナスになることなど無いはずだ!

「不思議そうな顔をしているな? なら、答えてやろう。 ラグディス・マクガーレン」

「!!!!!!!!」

「スパイが生きていられるほど甘い世界ではない。 残念だったな」

「糞ぉ!!!!」

親父…エリス……。

すまない……!!

サシュッ!

小さな音が、虚空に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごふっ…かは……」

何も出来ず、ただ息をするだけの死への抵抗。

でも、何故抵抗するのでしょうか?

もう…何も出来ることは無いのに…。

幸せ…。

私は…。

御神の皆さんを…幸せに…。

それは…私の幸せにも…。

それが。

「私の…」

この世界で唯一の私だけのもの…。

その幸せを見つけることが…

「私の…そん…ざ…い………い…………………………」

存在意義…。

そうなのでしょうか?

分かりません…。

もう…。

何も…。

見えません…から…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

存在意義

 

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