えげれす通信 vol.13
僕は、一人暮し歴は長いとはいえ、 それは非常に自由気ままな一人暮しであって、 朝、ラジオ体操の時間に帰ろうが、 部屋を散らかし放題にしてようが、 人には見せられないものどもを置きっぱなしにしようが、 一向に誰からも干渉されない「独立した」空間を前提とした 一人暮しであった。 これは、えげれすだから、というわけではないけれど、 ここは寮生活なもので、なかなかに色々な規制やら拘束がある。 それに慣れてない僕は結構大変なのであった。 例えば、朝の掃除のおばちゃん。 ここは僕の城のはずなのに、 どういうわけかおばちゃんは無断で、容赦なく入ってくる。 パンツのみで寝ている僕は、 最初の頃こそ、「やばい」と思ってズボンをはいていたけど、 最近では、ずぼらになって、トランクス姿で「Good Morning!」と さわやかに言えるように進歩した(笑)。 えげれす人はがさつなので、 僕のいない日に、勝手にされる掃除は曲者である。 モノが移動されてるなんてことは当たり前で、 この間なんか、敷布がボロボロになっていた。 恐らく、掃除機でガサガサ雑ぅに掻き回したんだろうな。 「お客様の部屋を掃除するときは、決して物を動かさない。 動かしても、必ず元あった状態に復元しておく」という 鉄則を教えてあげたいわ。 「ホテル」で、松方演じる藤堂マネージャーが 高島政伸たちに言ってたやんけ。 しかし、まぁ、そういう、所謂「集団生活」にもとづく 色々な規則、あるいは、自分の領域を侵される事態、には ある程度慣れてきてたと思ってた。 しかし、なんちゅうか、トラブルが起こったのであった。 えげれすの寮(に止まらないのかもしれない)には、 勿論火災報知機がついてるんだけど、 まぁ、これが、えげれすのくせに、非常に敏感なのです。 多くの事にずぼらなくせに、 閉店時間とか、金銭面(自分が受け取るほう)とかには 普段からは信じられないくらいきっちりしている! 「取り立て」は特に厳しく、 何でも、容赦なく罰金が襲ってくるのがこの国だけど、 今回の騒動も、そのようなことであったのです。 発端は先々週の鍋。 ちょっと煙草を吸っただけでやかましく鳴るこの報知器を なんとかしようと、僕らは、スーパーの袋で覆う ことを考え付いた。 事は巧く運び、楽しく鍋は閉幕した。 翌週、僕はうっかり、袋を外すのを忘れたのです。 で、さくっと、手紙が入ってた。 「貴方がした行為に対して、Warden(一番偉い人)が下す裁定に 従う義務がある。追って、沙汰があるだろう」と、まぁ、 まるで大岡越前のような判決文が入っていたのである。 そんな、鬼のような手紙にも、ちゃんと、 「Dear Mr. xxxx」と礼儀をわきまえてるところが 憎たらしい。 で、その「沙汰」は今日来た。 多分罰金だろうと思って、結構気が重くなっていたら、 何と「呼び出し」である。 この年になって、偉い人に「呼び出し」くらって、 びくつくなんて、まるで、小学校で廊下を走って注意された 時の、職員室状態である。 小学生ではない僕は、その手紙を見るや否や(見たのは17:00頃、「呼び出し」 は同日19:15であった)、さくっと景気付けの為に、ビールを二本飲むと、 「てやんでぇ、すっとこどっこい、べらぼうめぇ。こんちきしょうめぇ」 という気分になってきた。 エエ感じに「メートルが上がった」僕は、 戦いに行った。 すると、予想外の展開。 僕としては、いいわけをいろいろと考えていたのだが、 それはあくまでも、「僕のした事は悪い」という事実に対する 「どう悪いか」「でも言い分もある」「ではお互い理解したところで、 もうしないでね」「うんわかった」「でも規則だからこんだけ罰金 払ってね」「しゃないのぉ」というシナリオ。 しかし、Wardenが最初に言った言葉は「全額弁償」。 はぁ?って感じである。 説明聞くと、なんと、報知器氏は壊れてしまったらしい。 非常に敏感なだけに、非常にデリケートな品物らしく、 それの全額弁償とそれに伴う人件費の見積もりが さらりと示された。 戦闘体制だった僕は、ちと焦った。 その展開は予想してなかった! しかも、壊れてて、既に新しくなっていたとは! 「非常にセンシティブで高価な装置」だそうだ。 彼は、請求額がいかほどになるかわかるか?と聞くので わからん、と言うと、「I shall tell you」と 落ち着いて言い払った。 僕は、「おお。shallとはこういう場面で使うのか」と 感心しながら聞いていたのである。 金額の話になると、僕は最初聞き間違えて、 £2000(40万)と思って、絶望的になったんだけど、 どうやら本当は£200〜300らしい。 スーパー一袋6万円。。。 金額は速攻払わなくてもいいんだが、 今期の最後までには払うように。 請求書は間もなく届くだろう、というのが 今日の主旨であったらしい。 理由のところで、鍋と言うわけにはいかないから (クッキングは禁止されている) タバコの煙が充満したからだと言ったんだけど、 心憎いえげれす人は、こんな状況でもユーモアを忘れない。 打ちひしがれてる僕に彼はこう言った。 「タバコは一日どれくらい吸うの?」 「あんまり多くないです」 「週ワンカートンくらい?」 「いや、週2箱くらいかな」 「それはいい。今期末(罰金の期限)までは、いっそ 吸わないことだね」 そう言って、彼はにこやかに「Bye」と言った。 うう。。。 |
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