えげれす通信 vol.49
ロンドンにいた頃、週二日は日本酒を飲んでいた。 かなり家計を圧迫するので、 ランクは極力低いもの。 かと言って、大関白鶴クラスは、 内臓も圧迫するので、 「吉野川純米」もしくは「菊水辛口」を買ってた。 ちなみに、これらで、一升4000円くらいのものです。 その日は、決まって、刺身がついた。 「ついた」と言っても、 仲居さんが運んできてくれるわけでも、 韓国オオヤが何かと引き換えに出してくれるわけでもない。 自ら買いに行くのだが、 日本酒&刺身が入手できる「オリエンタルシティ」は、 僕のロンドンの家の近所。 よって、かなりの頻度で、買出しに行けたわけだ。 こちらに引っ越して、一番の懸念は、この習慣をどうするか。 スーパーの、切り身サーモンとかを、 決死の覚悟で刺身で食う、というやり方も、 何度か試しているが、 爆弾を飲み込んでるようなもので、 いかにも、落ち着かない。 大丈夫、大丈夫、と自分を奮い立たせつつ、 「消毒にいいらしい」とわさびをたっぷり塗って、 目をつぶって食べるのである。 ここで必要なのは、 気合 気合で雑菌も殺すのである。 なんで、こんなことせなあかんのやろ。 でも、えげれすで暮らすとは、こういうことなのだ(笑)。 然し、そうやって、刺身、もしくは刺身もどきは、 何とか体験できるのだが、 困るのは、日本酒である。 頼みの、ニューカッスル(近くの大都市)の中華街で売ってる、 最高ランクの日本酒は「剣菱」。 うーむ。。。 なので、矢張り、ロンドンに買い物に行くしかないのだが、 今回のように、日本に一時帰国するということは、 当然、日本酒を始め、日本食材を持って帰れるということ。 在住者の帰国時のトランクの中身は、大体、 行き:お土産満載 帰り:食材満載 ということになっている。 この、「食材」の部分が、人によって違うわけである。 僕は、今回の帰り(日本→えげれす)の戦略を練りに練った。 1.大概の食材は、ロンドンで手に入る(高いけど)。 2.主要なものは、ニューカッスルで手に入る。 3.よって、入手不可能なものに特化すべきである。 この戦略により、安いからといいう理由で例年は持ち込まれていた、 味噌、だし、ソース、などが却下。 4.入手不可能だが、重くて嵩張る「珍味系瓶詰め」も却下。 梱包が大変で、兎に角重いこれらもカット。 この手の酒菜は、漬物で代用することにする。 5.然し、アテ系も欲しいので、乾き物を数点入れる。 梱包簡単。軽い。然もこっちで売ってない。ええやん! と、言うわけで、未だにトランクの中はすかすかである。 さて、これがどうなるのか。 言わずと知れた、日本酒のためのスペースなのだ。 因みに前回は、ペットボトルに移しかえて3升、手荷物で2升の、 計5升を持ち帰った。 今年は、その記録を更新しなければならない。 今年のブツ一覧 ・出羽桜純米吟醸 ・正雪純米吟醸うすにごり ・会津娘純米吟醸 ・麓井純米大吟醸「輝ら星の如く」斗瓶囲い ・東北泉「佐々木勝雄」 ・磯自慢特別本醸造山田錦 ・美田純米吟醸糸島産山田錦 計7升(40%増、当社比) 「佐々木勝雄」だけは、瓶ごと持ち帰りたかったけれども、 鬼のような重さに、遂にへこたれてしまい、 結局、全て、ペットボトルに入れ替えた。 トランク内臓4升、手荷物3升という作業である。 僕は、KLMのマイレージのシルバーなので、 荷物が+10kgまでOK。 それでも、トランクの重量は36kg。 それ以外に、パソコンバッグ(約5kg)、リュックwith酒3升(約7kg)。 戦時中かい。 然し、えげれすで暮らすとは、こういうことなのだ(笑)。 僕は、運び人計画を練った。 関空までは、車で移動なので、大丈夫。 見送りの人間もいてる。 トランクを預けてしまえば、 あとは、手荷物。どうにでもなる。 アムステルダム乗り換え。 ここも、手荷物だけで、 然も勝手知ったる空港だけに安心である。 問題は、NCL(ニューカッスル空港)の税関突破と、 それ以後の、自宅までの移動である。 LHR(ヒースロー)の場合、 少なくとも、直行便ではなく、EU内発のフライトで、 税関で呼び止められた話は聞かない。 恐らく、NCLもそうだろうと思う。 ・・・いや、そうあって欲しいし。 ・・・そうでなきゃ困んねん! 僕は念のために、会話のシミュレーションをした。 「ちょ、待って。荷物、開けてくれるかな?」 「はぁ。いいですよ。はい、どうぞ(とパソコンバッグを差し出す)」 「これ、パソコンだけかいな?」 「そうですよ。あ、あと、デジカメもね」 「これ、なんや?」 「あ、それ、パンツです。洗ってないし、ごめんな」 「何かあるやないの。あっ!」 「葉巻ですねん」 「何で、くるんでんねん。隠してたやろ」 「ちゃいますよ。プチプチの代わりですやん」 「葉巻、多いやないか。課税やね」 「げ、はぁ、すんません」 と、ここまでが、第一次シミュレーション。 「トランクも開けてくれるか?」 「(げ、来た)はぁ」 「この赤いTシャツ。にぃちゃん、ここ、どこやと思ってんねん」 「ニューカッスル、ですが?」 「ほしたら、何で、マンU(Manchester United)のTシャツなんかあんねん」 「そやから、ほら」 と言って、中の服を見せる。 「ちゃんと、白黒の縦じま入った奴を着てるやないですか。赤いTは仕舞ってるでしょ?」 「お、にぃちゃん、話がわかるやんけ。よしゃよしゃ」 ここまでが、第二シミュレーション。 因みに、フットボールチームのマンU(赤がシンボルカラー)と、 ニューカッスルユナイテッド(白黒がシンボル)とは、古きライバル同士である。 「ん?このボトルみたいなんは何やねん?」 「あ、それ、日本の水ですわ」 「何で色ついてんねんな?」 「日本の水って、そんなんですわ」 「何で、それぞれ色がちゃうねん?」 「日本の水って、放っておくと、発酵しますねん」 ふたを取って、匂いをかぐ。 「これ、酒やろ!」 「ちゃいますって。『命の水』って言うんですわ」 「別室へ来て頂けますか?」 「なんで、いきなり標準語やねん。さては、おっちゃんも似非やろ?」 「いいから、来なさい」 「きゃー、助けてぇー」 と、第三ステージまで行くと、 これはまぁ、仕方ないかなと思ってた。 どきどきもんのNCL空港。 思った通り、税関には人がいない。 よっしゃぁーー! これで、日本酒の運び人の仕事は、ほぼ終わったわけである。 あとは、総計50kg近い荷物を、自宅まで運ぶのみ。 依然として、ダイヤが乱れているらしいBR(旧えげれす国鉄)にも、 さしてイライラすることもなく、 僕は、達成感でいっぱいだった。 で、戦利品が、これである(笑)。 |
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