えげれす通信 vol.51
ワカモノってのは得ですなぁ。 のっけから、この年寄り系ボヤキを言うのもどうかと思いますが。 欧州では、「26歳」という年齢が、非常に大きな意味を持つんですな。 ここ、えげれすでも、そうです。 兎に角、半端やない率の割引が各種あるわけで、 まともに何かの料金を払っていくとエライ目にあう。 大阪のぼったくりバーどころの騒ぎやない。 まぁ、それは良くしたもので、 普通は、何も言わずとも、 割引された後の料金が告げられることにはなっている。 例えば、奇怪複雑魑魅魍魎の観がある、 「BR(えげれすのJRみたいなもん)」の料金体系は、すごすぎ。 各種割引の嵐である。 この世の中に、誰ぞ、この仕組みを完璧に説明できる人間はおるんか? ま、おらんやろ。 おらんのに、世の中が動いていく、これがえげれすである。 一例として、今日(28/03/2001)現在の、Durham−London間の、 往復運賃を見てみよう。 BARGAIN RETURN: 32.00 GBP BARGAIN RETURN: 32.00 GBP APEX RETURN: 44.00 GBP SUPER ADVANCE RETURN: 57.00 GBP SAVER RETURN: 77.00 GBP STANDARD OPEN RETURN: 152.00 GBP STANDARD OPEN RETURN: 155.00 GBP GNER EXEC: 225.00 GBP FIRST OPEN RETURN: 228.00 GBP すでにこんだけ種類がある。 同じ名前のチケットでも、 乗る列車によって値段が違うし、 値段が同じでも、乗る列車によって種別の扱いが違ったりもする。 然も、これに、曜日、予約日、片道/往復、運行会社、などの条件を入れると、 確率は、天文学的数字になる。 勿論、料金体系が一律で、わかりやすい日本の場合でも、 実は、辞書ほどの分厚さがある「規則集」ってのがあって、 区間別に、事細かに、特例が決まってはいるけれども、 こんだけ、料金の差が開くなんてことはありえん。 去年の、「JR料金誤表示」にしても、 まぁ、間違ってたのはいかんけど、 その額はせいぜい100円単位やんか。 しかーし。 恐るべしえげれす。 上の例では、 普通に予約無しで、窓口で買った場合、 多分77ポンド(約13475円)の奴になんねんけど、 もし正規料金を払うと、152ポンド(約26600円)。 やっぱり、ぼったくり条例にひっかかるやん。 なんぼなんでも、窓口で、 「すんません、倫敦往復ください」 「はい。152ポンドです(^^)」 「げ。今、100ポンドしか現金ないんですけど。。。」 「なんやと、こら。何言うてけつかんねん。切符買うときはゼニもってこんかい」 「す、すんません。カードは、つ、使えますか?」 「はよ、それを言わんかい、ボケ。かしてみぃ」 「すんません。。。」 「ところで、にぃちゃん。フルーツ盛いらんか?」 「あ、わたしもメロン頂いていいかしら?」←誰やねん 「ど、どうぞ」 「よしゃ、ほんなら、カードから225ポンド引き落とすし。ここにサインしてな」 「げ。なんで増えてるんですか?」 「GNERえくぜくてぃぶって、ここに書いてあるやろ。読めんのかい。 ま、ゆっくりバナナでも食いもって、倫敦まで行ってきてなー。あ、メロンは貰うで」 などという、ぼったくり客引き系窓口氏はおらんけど、 実は、事情はもう少し複雑なのである。 つまり、乗る列車によって、 特殊な割引があったりするわけで、 その列車を特定して、席の予約なんかもする場合に限って、 という割引もあったりする。 この場合、窓口氏が、如何に温厚実直親切な人であっても、 その事実を知らなければ、そういうことは言ってくれない。 こっちも、言ってくれな、わからんし。 然し、あまりに複雑なこういう割引システムのおかげで、 大方の窓口氏は、恐らく、全ては把握してないと思われる。 結果として、一番あんちょこな、「saver」が売られる可能性が高いんですな。 さて、この割引体系の中に、さらに「学割」ってもんがある。 上の、既に「割り引かれた」料金にも、 さらにこの「学割」は適用されるので、 こいつは相当お得なんやね。 (料金が2/3になる) 欧州はどこでも、「学生」という肩書きはかなり使えるわけで、 「お年寄り」という肩書きと共に、 恐らくは最強のものの一つでしょう。 最大で、さくっと半額になったりするから恐ろしい。 有名な「ユーレイルパス」なんかも、 単に「若い」ってだけで、あの料金格差。 万単位で違うしなぁ。 各種国別パスなんかでも、 単に「まだ酸いも甘いも知らない」ってだけで、無茶苦茶安いパスが買えるし、 航空券なんかでも、 単に「ケツが青い」ってだけで、 100ポンドくらいも安かったりする。 大体、この「人生を知ってる奴/知らん奴」の区切りは、 26歳というトシで区切られることが多い。 つまり、これより若いと、 様々な特典が得られるわけですな。 この「青の時代」を過ぎてしまうと、 今度、特典を得るためには、「人生を知りすぎる」必要がある。 つまり、「シニア割引」という奴。 ケツが青いか、皺寄ってるか。 特典の有無は、この二点に絞られる。 このあからさまな差別化は、 流石、社会保障の国だと、ある意味感心させられるけれども、 当事者である僕は、結構辛いところである。 オレだって、学生じゃー。 カネは、働いてる奴から取ってくれー(笑)。 ま、これが、働いてる方から見ると、 オレらの血税を使って酒飲むなー ってことになるから、まぁ言い分はおあいこやねんけどね。 但し、えげれすのBRの場合、 そこには、有難い解決策が設定されてる。 つまり、26を越えていても、 フルタイムの学生であれば、この学割が適用される、というもの。 その為には、「Young Persons Railcard」なるもんが必要になる。 年間18ポンド払うと、全てのチケットが2/3になる。 これは、素晴らしくお得なカードなんですな。 今日は、本日で期限が切れてしまった、 この「Young Persons Railcard」を更新しに行ってきた。 もし26歳未満なら、年齢を証明すれば良し。 パスポートでOKなわけですわ。 然し、年寄り学生の場合、 担当のチューターかなんかに、 「こいつはほんまにうちのフルタイムの学生である」っていう サインを貰わなきゃいけない(ことにはなっている)。 但し、ここはえげれす。 言うまでもなく、申請には一波乱二波乱が待ち受ける。 ある人は、普通の写真つき学生証を見せるだけで、 このカードを発行してもらったという。 (学生証は年齢の証明にはならないと、一応は書いてある) つまりは、イギリスの多くの場所の窓口氏がそうであるように、 対応が一定していのですな。 これは、今回のような、鉄道会社だけではなく、 例えば、電気・ガス会社とか、BT(電話)なんかも勿論のこと、 悪名高き、Royal Mail(郵便)とかParcel Force(小包部門)、 一般の会社や店、 そして、果ては、ビザの申請なんかに関わるホームオフィス(内務省)とかでも、 「一人一人、言うことが違う」 「同じヤツでも、今日と明日で違う」 「気分と体調と食ってるものによって違う」 ということになる。 イギリスで暮らすためには、 先ず、この種の対応に慣れることが肝要で、 いちいちびびってたら、暮らしていけない。 一番いい例が、去年の僕のビザの更新やね。 (葡萄牙通信、参照) 過去二回のビザ申請では、 別に何の問題がなかったのに、 去年は、当たったヤツがプーチンみたいな顔のヤツで、 プーチン系応対で、取り付くしまがないという感じ。 ヤツは、なんやかんやと言って、ビザをくれんかった。 #いや、プーチンはツレでもなんでもないねんけどね。 「制度が変わって、今はできないことになったのか?」 「物事ってのは、常に変わっていくものだ」 「去年はここでくれたけど?」 「ホームオフィスに行きなさい」 後で、大学の担当に聞いてみると、 勿論、制度が変わったわけでもなければ、 僕の申請に不備があったわけでもないらしい。 まぁ、そんなことはわかってたから、 別に驚かなかんかったけど(かなり怒ったけど)。 要するに、人によって、タイミングによって、天気によって、 言う事がころころ変わるのは、 ここでは仕方のないこと。 だから、「学割」カードに関しても、 色々なケースがあるわけですわ。 去年は、僕は、試しに、学生証のみで挑んだ。 大学のスタンプは無し。 若干緊張しつつ申込書を手渡すと、 窓口のおっちゃんは、なんも言わんと、作ってくれた。 だから、今日も、その手でいこうと思った。 なんか、いわれたら、 「でも、去年は作れましたけど」とゴネる。 この国では、何事も、ゴネないと、ことが運ばない。 そして、何事も、ゴネると、結果が変わるから恐ろしい。 窓口は、若いおねえちゃん。 内心「しまった」と思った。 隣のおっちゃんの方が良かった。 えげれすの場合、若いおねえちゃんってのが、一番難儀である。 融通が利かない。つんとしてる人も多い。 皿にいたぶられて以来(通信vol.0.9参照)、 どうも、若いえげれすねえちゃんは苦手やし。 今日も、申込書見るなり、 こんなときばかり、仕事に忠実なところを見せて曰く、 「26歳以上は、先生のサインと大学のスタンプがいります」 それはわかっとるがな。 だから、わざわざ、そこの個所を裏にして、 然も手で隠してさりげなく手渡したのにー。 なんでこんなときばかり、ちゃんと仕事すんねん。 「はあ。でも去年は、学生証だけで作れたんですよ」 ゴネようかと思ったけど、 彼女は思ったより、仕事ができるらしく、 申込書の裏面の、無茶苦茶ちっこい文字で書いてある、 「26歳以上は云々」の但し書きの個所をすかさず指差して曰く、 「でもここに書いてあるのよ。"Mature Student"は云々って」 そう言って彼女は、僕に強い視線を浴びせた。 "mature" a.:1.心身が成熟した 大人の 分別のある 円熟した (研究社:リーダーズ英和辞典) ふうむ。彼女はこう言いたいんやな。 彼女の視線の奥に込められている意味を、 僕は瞬時に解釈した。 「確かに、この国では、人によって言うことがまちまちだし、 割引制度も複雑で、それを把握してないスタッフが多いことも事実よ。 でも、私は、ちゃんと規則を把握して、正しいsuggestionをしようと心がけてるわ。 貴方も分別のあるオトナなんだから、あんまり駄々をこねないでね。 お願い。私の気持を判って!(はぁと)」 よく見れば、なーんや、濡れた眼でオレに訴えかけてるやん。 改めて彼女の目を見ると、 「(はぁと)」 もいっかい、こいつが飛んできた。 そこで僕は、心の中で彼女に応えた。 「うむ。確かにオレは、ケツの青い厨房やない。心身は成熟したオトナやし、 確かに人生の酸いも甘いもそれなりに知ってるわ。オトコは黙してしゃべらず、 泰然として状況に対処せよ。ねぇちゃん、そう言いたいんやな?」 僕の眼が次第に熱を帯びてくるのを察してか、 ねえちゃんの眼差しはこう語ってきた。 「そうよ。貴方の人生にはまだまだこれから、色々な試練が待ち構えているのよ。 その度に、いちいちうろたえていてはいけないわ。人間、山を越えてこそ、 成長していくものよ。貴方はまだまだ大きくならなければならない。 こんなことで、へこたれていては駄目。だって貴方は「Mature Student」なんだから。 もっと成長して、素的なオトナになってね。応援してるわ(はぁと2)」 「くぅ。オレが『人生話』には必ず食いつくことを知ってて言ってるんか。 なかなかやるやんけ、ねえちゃん。よっしゃ、ここは一つ、 器の大きなところを見せたろ」 いっぱい飛んでくる「はぁと」を確りと両手で握り締め、僕は力強く答えた。 「わかりました。スタンプ貰ってきます」 ねえちゃんは、心なしかニヤリとしたようだった。 然し。「mature」。含蓄のある言葉やねー。 そう思って、改めて辞書で調べると、 "mature" a.:2.完全に発達した 成長しきった (研究社:リーダーズ英和辞典) えげれすねえちゃんとの戦いはまだまだ続く。 |
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