えげれす通信補遺 ex-11

えげれす通信補遺ex-11 ■えげれすの食−鰹■ 2nd/Jul/2000

この新企画を始めるにあたり、あれこれ考えたのだけれども、
矢張り、ここは一発、結局辿り着いた究極の魚、「かつお」に
登場してもらおうではないかと、一人悦に入り、
今、こうして書いているわけである。

かつおが究極の魚。
この説には、異を唱える人が多いかもしれん。
魚の王様として、東日本の「鮪」、西日本の「鯛」は、
今も根強い支持を受け、
正月の魚として、西の「鰤」、東の「鮭」、
これは日本人ならばもう常識の部類である。

余談だけれども、東北地方から北海道で広く食されている、
「きんき(宮城では吉次)」という魚は、
ハレの行事には欠かせないシロモノであるが、
これまた恐ろしく旨いのだ。
まぁ、これはまた、折りを見て。

僕が、かつおの旨さに目覚めたのは、
本場高知で、かつおのたたきを食べてからのこと。
高知では、たたき以外に、キャベツ千切りやら、大蒜薄切りやら、
紅葉おろしやら、そういう具がぎょうさん並ぶ。
そして、仕上げに、特製のタレを、上からかけるのである。
決してたたきをタレにつけるのではない。

きらきら光る銀色の表面に包丁を入れる瞬間の悦び。
腹に現れる数本の黒帯は綺麗な縞模様をつくる。
何せ、形がいい。カッコ良い。
泳いでる姿(海遊館にて)もスマートだが、
「まな板の鰹」状態になっても、
見目麗しいことこの上ない。

身が柔らかいので、素人がさばくのが最も難しい魚の一つである。
然し、ボロボロになっても、僕らを不安にさせないのがかつおである。
身がひっついた皮は、網でカリカリに炙って、
余計な油を落として、醤油で頂く。
多少焦げ過ぎくらいが丁度よい。
何やかんや言っても、あの大きさは、さばくのに扱いよいのだ。
いわしほど簡単ではないが、鮪ほどでかくもなく、丁度良い。
油の乗った腹身、キレの良い背身。
血合いは多少残した方が、野趣が増して僕は好きである。
どちらも、濃厚な醤油にどっぷり浸して、
薬味と一緒にさっくり頂く、これ至福の時である。

南国土佐。
実際、隣に「南国市」という町もあるのだが、
何せ、ここは、黒潮の本場。
海産物はとてつもなく種類も多いし、何より旨い。
有名な「皿鉢料理」は、中身的には、
それほど珍しいものではないが、
かつおのたたきは、欠かせないものだそうである。
その他、「のれそれ」、「酒盗」、「どろめ」、「チャンバラ貝」等々、
高知には旨いもんが沢山。

嗚呼。「旬」とは、何て素晴らしい感覚なんだろうか。
日本の食材。日本の食文化。
別に、僕は、離れたからではなくて、元々賞賛してはいたけれども、
離れてみると、なお一層想いがつのるがな。
あの、艶々輝いた「のれそれ」を、喉越しにつるっとやりながら、
辛口の酒を煽る。
少しぼんやりした咽喉を、「酒盗」の強烈な塩気で覚醒させ、
更にお酒を重ねる。
きりりと冷やした酒は、錫器の徳利かなんかに入れて、
充分に汗をかかせる。
気化熱による冷蔵は、見ていても気持ちが良い。
うーむ、夏やね。にっぽんの夏やね。
そして、機が熟した頃に、出てくる「かつお」。
これは、間違いなく、メインディッシュである。

僕は、個人的に、たたきよりも、生まの方がよい。
どっぷり油ののったかつおの、厚く切ったのを、
香りのいい青森産の大蒜薄切りと一緒に頂くのだ。
醤油は湯浅の、濁り醤。
香りが高く、同時にかつおの激しさを、いい具合に殺してくれる。
あの歯ざわり。あの食感。そしてあの奥行き。嗚呼!

ふん。どうせ、こっちじゃ食えへんねん(泣)。





えげれすにおける「鰹」情報



僕は、二度しか試したことがない。
あ、それは回数ではなく、場所のことなんだけれども。
一度目は、日本人学生には御用達の日本料理屋兼飲み屋「一休」。
二度目は、僕がいつも刺身を仕入れに行く、Oriental City内の「能登」。
一休の「かつお」は、たたきスタイルで、確か£6〜7やったと思う。
「能登」のかつおは、僕がこれまで行った限りにおいて、
土日週末のみの提供で、£2.00〜2.50/100gってとこ。
どちらも、遠くえげれすの地にしては、まずまずといったところ。
然し、日系店以外に、かつおを見ることはまずない。
捕れないのか、捕る気がないのか、捕っていいのかどうかを知らないのか。
いるとは思うんだがなぁ。
でも地中海で、「かつおの一本釣り@BACKで鳥羽一郎」の絵は
どうしても浮かばないので、まぁ許したろ。


 



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