えげれす通信補遺 ex-12

えげれす通信補遺ex-12 ■えげれすの食−焼肉■ 2nd/Aug/2000

夏と言えば焼肉。焼肉と言えばバーベキュー。
これはある意味、昨今の、「にっぽんの正しい風景」の夏の一コマかもしれない。
何でも「今ブームのなんとかかんとか」という謳い文句をつけたがる日本人の悪い癖だが、
この、「アウトドアブーム」という奴は、
なかなかどうして、ほんまにブームが持続しているという感じである。
思えば、RV車が流行り始めたのは大分と昔の気がするし、
釣りが流行り始めたのもそうそう前ではないと思う。
然し、この「屋外バーベキュー」が流行り始めたのは、
いつ頃のことだったんだろうか。

ブームが起こるのが先か、
設備が整うのが先か。
鶏と卵のようなこの問いは、
然し、日本においては、正当に当てはまる気がする。
これがえげれすなら、明らかに、設備整備が追いつくのが後なのである。
然も、恐ろしいほど遅く、然も整備はゆきとどかないので、
いつまで経っても、新しい形式は生まれない。
未だに、この国では、変わらない姿で、
キャンピングサイトでキャンピングカーで、
設備は自前、用意周到、若干の知識、
などなどが要求される。
とても、「一寸そこまで」という気軽さには程遠い。

然し、流石は日本。
その辺はすばらしく、行き届いている。
ブームが起こるや否や、
お手軽サイトは、雨後の筍の如く乱立し、
近くには、墨から簡易鉄板、調理器具、野菜から肉まで、
すべてを扱う店が出来上がり、
さらに、日帰り入浴施設とか、お土産屋とか、
そんなこんなの至れり尽せり環境が、さっくり出来上がる。
炊事場、水場は当たり前、包丁持ってこなくても貸してくれる。
にっぽん人は、それを当然だと思っており、
環境を整備する方も、また、やって当然と思っているところがミソである。

然し、ここでの問題は、そんなことではないのである。
いくら、えげれすでも、
恐らく、アウトドア系のレジャーは、実は日本より歴史は古いから、
各ファシリティの整備は、他のことに比べれば、
何の不自由もないくらいに整っている方でしょう。
やる気になりさえすれば、ほぼ同じことができるでしょう。
そこには、形式の差こそあれ、内実に遜色はないし、
却って周りの景色は、日本よりも素晴らしいくらいである。
えげれす最高やん。
何も、ニッポンを恋しがる必要はないやん。

そう思ったアナタ。
まだまだ青いです。

何が問題って。
バーベキュー、もしくは、焼肉というのは、
何をする行為なのか?

自然の素晴らしさを満喫する。
うむ。
素晴らしいことやね。

日常の憂さを晴らす。
うむ。
そら、晴れるやろ。

都会の喧騒を忘れ、、、
うむ。
忘れるやろね。

ちゃうがな。

肉を食う。

これやっちゅうねん。
焼肉で、肉食わな、焼肉ちゃうやろ。
野菜食ってたら、それは「焼き野菜」や。

「なぁ、週末、焼肉せぇへんか?」

ってのは絶妙の響きでもって、賛同者多数現れることだろうけれど、

「なぁ、週末、焼き野菜せぇへんか?」

なんて言ったところで、

「独りでナスでも焼いとけ」

などと返されるのがオチである。最も大事で、かつ、根底的規定に関わる、最重要項目。
それは、肉を食う、こと。

当然やん?
言わんでもええわな、普通。

しかーし、こここそが、最も重要かつ、最も困難な項目なのであるな。

ご説明いたしましょう。
魚文化がこれほどまでに貧困なえげれすは、
言うまでもなく、肉食文化である。
魚の種類はと言えば、鱈と鮭とタラとサーモンとcodとsalmonしかないこの国。
然し、肉に関しては?

流石やね。
旨い不味いは別にして、
牛、豚、鳥の三種の神器クラスに加え、
羊、七面鳥、は大抵の店に備えてある。
だから、カレー作るときも、
通常日本でメジャーな三種類以外に、
素晴らしくやわらかくて美味しいラムカレーなんかもできるし、
多分旨くはないんだが、七面鳥カレーも可能なのだ。
ハウス食品がえげれすまで進出してきたら、
新たなルー作りに、社員は大忙しになるだろう。
バーモントカレーも、これまでどおり、従来どおり、
「りんごと蜂蜜」の殺し文句のみでは、立ち行かなくなるだろう。

だから、この国で、肉食に関して、何の問題もない。
それどころか、日本よりも、幅広く、色々堪能できるかと思うと、
世の中そんなに甘くはない。

料理のtextureをこよなく大事にする日本人は、
一寸したことにも最大限の気を配る。
輪切りの大根の味噌汁は食べたくないし、
みじん切りの大根と鰤カブトの煮付けなんか見た日には、
調理人のカブトが飛ぶことでしょう。
さいの目切り、乱切り、輪切り、みじん切り。。。
なんと豊かな語彙の数々。

そう、問題はここにあるのです。

こっちの肉屋、そしてスーパーの肉売り部門には、
種類こそ日本よりたくさんあれ、
形態が、恐ろしく貧弱である。
牛だろうが、豚だろうが、大差ないのだが、
メジャーな切り方は以下の通り。

・ミンチ
・厚さ2cmクラスのステーキ用
・リブステーキ用
・ブロック
・一羽(トリonly)

以上。

どないして焼肉せぇっちゅうねん。

ミンチを焼いたら、、、それは「そぼろ」や。
ステーキ用焼いたら、、、書いてあるやん、それは「ステーキ」や。
ブロック焼いたら、、、おまえは「ローストビーフ」か。
一羽焼いたら、、、日本ではそれを「丸焼き」と訳すんや。知っとったか?

嗚呼。
肉はあれど、薄切り肉がない、この苦しさ。寂しさよ。
大阪のように、焼肉文化華やかなる処に永く暮らした僕は、
それ以外にも、様々な部位がほしいところではある。
ロース、バラ、カルビ、レバー、タン、ミノ、コテッチャン、センマイ、
ハラミ、ハツ、コリコリ、etc. etc...
さらに、タレと塩、ユッケ、ビビンバ、キムチ、ナムル。。。

いやいや。
そんな贅沢は言うまい。
ここは異国の地。
アジアから遠く離れた異国の地。
そんなことは望んじゃいけない。
様々な部位を食す文化をもっていないのだから、
ないものねだりをしても仕方ない。
その分、日本で、あるいは韓国で、食えばよい。

しかーし。
肉そのものはありながら、
薄く切れてないというそれだけで、
景色もいいし、設備も悪くはないし、
然し、薄切り肉がないという、ただそれだけで、
この国における、バーベキューは、相当困難な行事なのである。
何が哀しくて、ステーキ焼いてくわなあかんのか。

一緒に行った女の子が、

「はい、これ、焼けてるわよ。あらこっちも」
「あ、有難う。旨そうだ」
「箸、取ってあげる」
「優しいねぇ」

などという、この素晴らしいsituationも、

「やっと、これ火が通ったわ。あらこっちも」
「厚切り肉、二枚も食えるかい!」
「箸、取ってあげる」
「おまえ、ステーキを箸で食えっちゅうんかい!」

ということになり、恋も成就しないこと請け合いである。

そんなこんなで、僕は、
そしてこちらにいる多くの学生諸君は、
大抵、日本に到着したその日と、日本を出発するその日には、
焼肉を食べるのが慣わしとなっているのですな。
嗚呼、素晴らしき哉、焼肉!





えげれすにおける「焼肉」情報



日本で売ってる、墨付き簡易コンロみたいなもんは、
こちらのホームセンターでも扱ってるらしい。
使ったことはないので、比較はできません。
場所的には、恐らくこの国は、「公共」というものに対する規制が甚だしいので、
どこでも好き勝手に、煮炊きをするわけにはいかないでしょう。
然し、幸か不幸か、ごく安いお金を払って、キャンプができるサイトが、
それこそ国土中に散らばっており、素晴らしいロケーションのところも少なくありません。
ただし、そういう場所で煮炊きをする連中は、大体において、
キャンピングカーで来ます。
で、問題は、肉の確保なんですが、
ロンドンの場合、総合日本食料品スーパー「オリエンタルシティ」を始め、
各日系&Korean食材屋さんには、我々の馴染みの薄さの肉がおいてあります。
ロンドン以外では、、、中華街で対応しているかどうかわからないですが、
どうも、中国人が焼肉をしてる画が浮かばんので、
難しいかもしれません。
ブロックを買ってきて、自分で、極限まで薄く切ってやるしかないかも?
「する」場合ではなく、「食べに行く」場合は、
日系というよりは、Koreanのレストランで楽しめます。
但し、日本食の感覚と同じくらい、高いです。
腹いっぱい食べたら、多分一人£40〜50ってとこですかね。
だから、僕は、専ら買ってきて、自宅で独り焼肉をしております(笑)。


 



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