えげれす通信補遺 ex-14
今、僕は、泣いている。 ダーラムの寒々しい部屋で、独り、泣いている。 咽び泣き。 啜り泣き(一寸違)。 貰い泣き(違)。 何故か? それは・・・、 「ひらめ」「ほたて」「鯛」の刺身が あまりにも日本酒とマッチしてるから。 僕は昨日、倫敦に「買い物」に行ってきた。 目的は買い物。これのみである。 他に、図書館で調べものがあるとか、 友人と会う約束があるとか、 観光したいところがあるとか、 そういう理由は一切無い。 買い物。これ一点のみである。 ロンドンは遠かった。 果てしなく遠かった・・・。 嘗て、ダーラムから倫敦まで、 自分で車を運転して行ったことは勿論あるし、 列車で行ったことも何度もある。 だから、距離感は掴めている。 然し、今回は、初の「コーチ(長距離バス」。 これが、予想以上の難行苦行だった。 日本の事情に鑑みるに、 例えば、大阪−仙台間の長距離バス「フォレスト号」は、 所要時間12時間かかる。 12時間! 何らかの交通手段を使っての移動時間以外で、 一つのことを12時間やり続ける機会って、 日常生活では、一体どれくらいあるんだろう? 「僕は、もうかれこれ12時間も、耳掻きをしてるんですよ。でもまだどんどん取れます」 明るくそう言って、 空いているもう片方の耳に挟んである面棒を弄びながら、 屈託なく笑う人に出会ったら、 確かに相当なインパクトを受けるだろう。 ある意味、耳穴を見てみたい(怖)。 兎に角、耳カスはおろか、 脳みそもちょろっと出てくるくらい、 長い時間なのだ、12時間とは(異)。 字面のインパクトは確かにある。 然し乍ら、10年前くらいから、 日本の長距離バス事情は飛躍的に進歩した。 路線の充実に加え、 バス車体そのものの、居住性における快適さが増した。 例えば、3列セパレートシート。 今までの、「バス=4列二人がけ」という伝統的概念を打ち破る、 この画期的システムは、 さらに素晴らしい機能性を付加したのだ。 航空機のビジネスクラスにも匹敵するような、 ほぼ180度近い傾斜のリクライニングシート&足あて。 これによって、椅子は簡易ベッドに早代わりする。 隣を気にしなくとも良い、快適な居住空間を実現したのだ。 そして、バスの中では、飲み物は無料サービス。 有線も聞けるし、ビデオもある。 まさに、日本の得意とする、 「至れり尽せり」状態の極致が今の長距離バスなのである。 だから、仙台大阪間の12時間も、 実はそれほど苦痛ではない。 揺れてるところでも寝られる人なら、 はっきり言って、問題は何もない。 (若干、値段が高いけど>大阪−仙台片道12000円) さて、えげれすの長距離バス、コーチ。 倫敦までの距離は、大阪→東京より若干近いくらい。 所要時間は6時間。 行きは夜行便。帰りは昼行便の予定である。 この国は、そして欧州は、 本当にに素晴らしいまでの長距離バス網があり、 然も恐ろしく安いのだ。 今回の値段は往復3800円程。 然し、バスの快適性は、 日本の「至れり尽せり」に慣れている体には、 少々、いやかなり、厳しいものがある。 ハイデッカーの、比較的新しい車体ではあるけれど、 セパレートシートではなく、2×2の旧来方式。 リクライニングは、10度あるかないかである。 尤も、この国の交通機関においては、 リクライニングが存在すること自体が画期的だけど。 シートピッチは狭いし、 兎に角所要時間がかかり過ぎる。 運転席の6時間はあっと言う間だが、 助手席の6時間は鬼のように長い。 そして窮屈なバスシートの6時間は拷問に近い。 まだ、初めての景色が見られるとか、 あるいは、綺麗な景色があるとか、 そういう刺激でもあれば別なんだろうが、 えげれすのM道路(高速道路)は、素晴らしくつまらない景色である。 然も、何度も何度も通ったことのあるところでもある。 そして、この辺がえげれすっぽい。 「車内アルコール禁止。マクド&バーキン禁止。KFC禁止」 おい。 食ったらいかんのかい。 なので、寝るしかない。 でも、6時間はひたすら長い。 尻も痛いし。 結局、その難行苦行夜行便にて、 倫敦に早朝5時過ぎに着いた。 5時ておい。 何せえ言うねん。 サウナとか吉牛とか用意してみんかい、えげれす。 (註:サウナというと怪しげな浴場を指す) ふらふらになりながら時間を潰した。 店の開店時間まで、気の遠くなるような暇な時間をやり過ごし、 漸く10時、店へ直行。 買うものは、勿論、アレとアレである。 そのため「だけ」に来たのだ。 そうでなきゃ、わざわざ倫敦なんか来ぇへんわ。 戦利品は、 日本酒4升(因みに一升瓶は6000円くらい) 刺身(鯛+ひらめ+ホタテ+〆鯖) 今、これらの戦利品を目の前にして、 今日の、あの難行苦行鬼行を思うと、 だって、涙がでちゃう。美味しいんだもん♪ 然し、7升を運ぶ、日本からの「本家・運び人」と、 一体どちらが鬼行なのだろう・・・? (Nov/2000頃執筆→7th/Jan/2003更新) |
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