えげれす通信補遺 ex-15

えげれす通信補遺ex-15 ■荷物悲喜交々■ 11th/Jan/2003

冬の一時帰国にあたり、
荷造りをしてみた。

例年、僕の一時帰国の際の荷造りはパターンが決まっていて、
英国→日本は、お土産を中心に、然し割りとスカスカ。
日本→英国は、

・・・かつぎ屋?

っていうくらいの、食料品を詰め込む。
これは、通常一般の留学生には共通の現象で、
たとえ「日系グッズの花の都」倫敦に暮らしているとしても、
流石に手に入り難い食材等を、
ごっそり買って持ち帰る訳である。
然し、その内訳には、その人のイロが出る。
ポッキーの新作に力を入れる女の子もいれば、
新宿中村屋のかりんとうを持ってくる子もいる。

あ。この二つは、同一人物やった(笑)。

そして、僕は、というと。
決まって、次の品が入る。

佃煮・塩辛・鯛味噌等の「酒菜」系。
ハウス特選生わさび。鬼のような本数。
その他、炊き込み御飯の素とか、
かに玉の素とか、
チャーハンの素とか。
なんやかんや言って便利だし。
そして・・・最後に、日本酒。

ブツの都・倫敦にいた時は、
基本的に何でも手に入るので、自然と、

「入手不可能なもの」→例えば酒盗とかからすみとかこのわたとか
「可能だが種類がないもの」→高菜チャーハンとか松茸炊き込み御飯とか

という風に品物は選ばれる。

日本にいる人間は、
矢張り、こっちの事情はわからないし、
たとえ、細かく指示を出しても、
たまにとんちんかんちん一休さんなことをしてくれる。

まだ、えげれすで暮らし始めたばかりの頃、
うちの母親が送ってくれたものの中に、
こんなものがさりげなく入っていた。

スプーンとフォーク

「もしかしたらあんまり売ってないかと思って」

その母親の手紙に、思わず僕は声を出してツッコミを入れた。

 何かの部品が壊れてる。

でも、まぁ、あれやこれやと色々思案してるうちに、
段々と訳が分からなくなるらしいので、
送ってくれるだけ有難いと思うようにしているけど。

日本から届く荷物に関しては、
ほんまに、悲喜交々。
皆さん、色々と苦労してはります。
えげれす最初の年は、寮に住んでいたので、
夕食取った後、郵便受け(ピジョンホールと言う)に皆で行く。
皆、誰に何が届いているのか、
興味半分、やっかみ半分で、知りたい気持ちがあるのだ。
当然、葉書が届いている子は優越感に浸り、
手紙が来てる子は目を輝かす。
然し、「荷物」が届いている旨を記した薄っぺらい紙を見つけた人間は、
その場の皆の注目度No.1であるのは間違いない。

その日、ある子が、コーフンしながら叫んだ。

「あ、荷物来てる!」

皆でぞろぞろと、荷物の箱が保管されているレセプションへ行く。
ここで、例の紙切れと荷物の箱とを交換するのだ。
我々は、「ゆうパック」と書かれたお馴染みの箱を見ると、
無条件・自動的に顔が緩む。
そうなってる。

 これで、ニッポンのカレーが食べられる。
 これで、ニッポンの味噌汁が飲める。
 これで、ニッポンのお菓子が食べられる。

今後暫くは続くことが約束された、
幸せに満ち満ちた日々を思い、
遥か日本を偲んで涙する。
そして、皆が「えげれす料理責め」に苛む中、
自分だけが得られたささやかな幸せに感謝し、
家族健康交通安全国家安康五穀豊穣魑魅魍魎酒池肉林を祈り、
厳かに天に祈りを捧げるのである。

然し、件の子に、翌日会った時、
彼女は、何だか暗そうな顔をしていた。

「どうしたん?」

と聞くと、
中身は、予想が外れ、
食品は僅かで、殆どが衣料品だったとのこと。
然し、それはそれで良いのである。

良く言えば「シンプル」。
またある時は「シック」。
しかしてその実態は、

「芸がこれっぽっちも感じられない」

スーパーマンも吃驚のえげれすのファッションセンスに、
悉くやられてきている、まだ渡英間もない我々にとっては、

 日本から服が届く=ちょっとコジャレタ格好ができる
 (因みに渡英後数年で、服装には「全然構わなくなる」)

食料品程ではないが、
矢張りそれはそれで、
周りの羨望の視線を一身に受けることが出来る。
中身は何であれ、
「ゆうぱっく」の空箱の数は、
留学生のステータスを決める要因の一つでもあるのだ。

余談だが、引越しの時、
一番困るのは、頑丈なダンボールが中々ないこと。
言うまでもなく、「ゆうぱっく」空箱は世界最強である。
たっかいカネ出して「購入」しなければならない、
えげれすポストオフィス製「ダンボール」なんかよりも、
二回使われた中古「ゆうぱっく」空箱の方が、
遥かにパワーがある。
奴は、たとえ、猪木と長州がその上に乗って闘っても潰れない。
そのくらい、根性があるのだ。

だから、引越しの時、
散々「betterな」空箱を探しまわってる時に、

「ゆうぱっくの箱、やろか?ええで。まだ一杯残ってるし

とか言うイヤミな奴は、
さりげなく、自分のステータスを表現しており、
後にキングスクロスあたりで、ゴルゴ13に狙撃されることになる。

さて。
話を戻そう。

「なんで?ええやんか。服、いっぱい来たんやろ?」

僕がそう言うと、彼女は、なんとも言えない表情でこう言った。

「でも・・・、全部半袖・・・」

合掌。

航空便は鬼のように高いので、
みんな船便を使う。
然し、基本的に、2〜3ヶ月かかる訳だ。
だから、特に衣服の場合は、
暑い時に寒いことを、
寒いときに暑いことを、
それぞれ見越して考えなければならない。
渡英間も無い頃は、送る方も頼む方も慣れていないので、
この手の悲劇があちこちに見受けられた。

「・・・でも、まあ、ええやん。春になれば着れるし(^^;。それに他にも何か入ってたんやろ?」

彼女の顔はさらに歪んだ。

「隙間という隙間に、ポケットティッシュが鬼の様に詰まってた・・・」

「送って欲しい小物」人気NO.1のポケットティッシュ。
然し、「あるべきもの」が無く、
こればかりが異様に多い風景。
えげれすの風物詩である。

(Dec/2000執筆→11th/Jan/2003更新)


 



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