フィジー通信 vol.11
「あれ」以来、何となく避けていたレンタカー。 然し、この週末、ある用事があって、 車を借りることにした。 会社は「BUDGET」。借りたいのは4駆。 そうなると、もう、「あの車」しかない。 見てみぃ。 予約しにオフィスに行ったら、 「奴」がちゃんと、オフィスの前に止まってるやないか。 SUZUKI「ジムニー」。 別にSUZUKIにもジムニーにも、 何の恨みも無いはずだけど、 連鎖反応的に、あの車体を見ると、 色々なシーンが思い出される。 「イヤイヤ」 僕は、首を振り、色んな妄想を断ち切りつつ、 今回もまた、奴を指名した。 4駆で安いのっていうと、これしかないのだ。 選択肢は無い。 そして、今後も、奴と付き合うことになるんだろう。 BUDGETのおねえちゃんは、僕を覚えていた。 「あっ。前、おっそろしく汚くして返してきたでしょ(笑)」 そうや。 汚いやろ? 車内マットまで泥だらけだったやろ? そこを察してよ。 僕は力無く笑い、オフィスを後にした。 用事を片付け、日曜はヒマになった。 ヒマ。然し、奴は月曜まで借りてる。 どこかに行くか。 ふと頭をよぎったのは、 「リベンジ」 行くか? 再び? でも、やっぱりヤバイので、 今回はもう少し別な、安全そうなルートを攻めることにした。 フィジアンの村の側を車で通る時、 そこに誰かがいれば(そして必ずいるのだが)、 ドライバーも、座ってる連中も、 笑顔で手を挙げて互いに挨拶するのが普通である。 この感覚は、段々、自分のペースを掴んでくると、 何とも言えない暖かな気持ちになって、 もう「病み付き」になるのだが、 もし、そこで調子に乗って、車を止めたりすると、 色々な意味で、大変なことになりかねない。 先ずは、真面目な話をすると、 「村」に立ち寄る場合、 「立ち寄る為の」様々な文化的儀礼の制約がある。 訪問者には様々な義務があり、 彼は、儀礼的コードに則って、 ある一定の手順を踏まねばならない。 うっかりそれを外すと、結構深刻な問題になったりする。 だから、車を止めて、その辺を歩く、等ということは、 実は、軽々しくしてはいけないことなのだ。 然し、そんな深刻な話ではなくても、 車を「一瞬でも」止めると、大変なことになる。 僕はこの時、ある村の外れまで車を走らせた。 すると、そこには、分かれ道があるではないか。 分岐。 嫌な響きだ。 木の枝を一定方向に折って、目印にしようかとまで考えた、 前回の遭難事件。 然も、旅のお供は、やっぱり「コイツ」である。 ジムニー。 いや、おまえに、何の恨みもないんやで。 実際良く走るし。 でも、この白い車体、横にデカデカと書かれた「BUDJET」のロゴ。 日本だと、さりげなく、「わ」とか書かれていて、 知ってる人にはわかるレンタカー。 でも、何も、こんなに堂々と、ロゴを書かんでもええやないか。 BUDGET。分岐。雨。砂利。赤土。ビックマック。 連想ゲームはやりたくないアイテムばかりだ。 色々妄想しつつ、分岐を改めて見る。 明らかに、右の方がメインっぽい。 然し、幸いにして、この道は、前回と違い、 沿線にコンスタントに村があり、 今も村の外れにいるわけである。 今回は、ちと、人に聞いてみるか。 そう思って、車を止めた僕。 例によって、村の中心部を通過する時は、 どこの村でもそうであるように、 大人も子供もガキんちょも、 おやじもおふくろも、ばあさんもじいさんも、 サザエさんもカツオくんも、まる子ちゃんもみぎわさんも、 日がな一日、なんとなく外の日陰で、 ぼんやり座ってるわけである。 彼らにとっては、日常は、さほど動きが無い。 我々が考えるルーティンワークなんか目じゃないほど、 全く変化に乏しい一日を、延々と過ごしている。 だから、そんな彼らにとっては、 車が自分の目の前を通過すること自体、 一寸した「事件」であり、 その運転手が、何処ぞのアジア人であるのは、 かなりの「大事件」であり、 まして、その彼が車を止めるなどは、 それはもう、「グリコ森永級」なのだ。 一瞬にして、ガキんちょは、 「グリコ森永」の犯人のところに寄って来る。 僕は「食べたら死ぬで」とフィジー語で言いつつ、 ビスコをみんなに配る。もとい。 彼らは猛然とダッシュしてくる。 然し、彼らはみんな笑顔である。 全員、こぼれんばかりの笑顔である。 これぞ、フィジー。 全く以って、人当たりがいいのだ、この国は。 こんなに、笑顔が素敵な人たちを、 僕は他には知らない。 一瞬にして、ジムニーは、ガキんちょに囲まれてしまった。 この現場が、体育館の裏とかだったら、 僕はパンを買いに行く羽目になるんだろうけど、 彼らに敵意は全く無い。 単純に、又と無いイベントを楽しんでるだけである。 ガキんちょたちは、 窓ガラスに額をくっつけるようにして、 車内の様子と僕の様子とを交互に見つめている。 僕と目が合うと、大体はニコッとする。 中には、シャイなガキんちょもいて、 彼らは、恥ずかしそうに目を逸らす。 僕は窓ガラスを開けた。 「ここに行きたいんだけど、どっちの道?」 近くにいた「一寸大人びた」ガキんちょに聞いてみるが、 彼はモジモジくんになっている。 「英語、話せる?」 もう一度聞くと、彼は「うん」と頷き、 そのまま、家まで駈けていった。 5分後、彼は、頭からすっぽり被るショーツを身に纏い、 「T・H・I・S ・ W・A・Y」 と、「一人モジモジくん」をやってみせた。 そのショーツには「憲武」とサインがしてあった。<ない 僕はさらに彼に、 「ほんで、この道行けば、キングスロードに出られる?」 と聞くと、彼はまた家まで走っていった(もうええ)。 兎に角、エライことになってしまったわけで。 でも、今回は、何となく、それを楽しんでられる余裕があったのも事実。 前回のドライブで、「村」の雰囲気みたいなものを、 何となく掴んでいたから。 今回も、車を止めた瞬間、 ガキんちょが走り寄ってくる画は想像できた。 そのうちに、妙齢の娘さんがやって来た。 #古風な言い方や。然し、彼女はアフロ。 ##でも、なんで「然し」なんやろ? 彼女は、ガキんちょたちに比べると、 多少、落ち着いてる風情である。 僕は改めて、彼女に聞いた。 この道でいいのか? すると彼女は、ショーツに着替え始めた(おまえもか)。 そうではなく、詳しく説明してくれた。 成程ね。矢張り、地元の人に聞くのが一番やね。 依然、車を取り囲んで動こうとしないガキんちょたち。 僕がデジカメを取り出すと、一斉に、 「なんだ、なんだ、これは」 という感じで、騒ぎ始める。 この人は一体何をするんだ? デジカメ、なんていう概念を知るはずも無く、 またこちらも、そんなことはどうでもいいんだけど、 こいつのいいところは、撮った画像をすぐに見せられるところ。 これは、かなりの武器になる。 ガキんちょは、間違い無く、大喜びするのだ。 経験的に、それは知ってる。 近くのガキんちょを撮って、画像を見せると、 果たして、パニック状態になった。 僕にも見せて。何だこれは。あ、僕がいる! ガキんちょたちに、飴をあげようと思った。 袋に入って、いくつか残ってる。 はい、飴が欲しい人! きゃあきゃあ言って、手を差し出してくる。 キリがないし、大体、そんなにあるわけでもない。 はい。じゃ、最初に返事した、きみと、きみと、きみだけね。 あっ、他の子は駄目! なんや、オマエ、さっき貰ったやろ? なめとんか、ワレ。どついたろか、オラ。 そういうのを「ヤカラ」言うんじゃ、アホ、ボケ、カス。 ・・・いや、ガキんちょやし(^^;。キレてもしょうがない。 きゃあきゃあ言ってるガキんちょたちと、 適当に戯れていると、 一人の子供が、おばちゃんを連れてきた。 このパターン。 僕にはある予感があった。 フィジーでは、ヒッチハイクが、とてもメジャーである。 というか、「ヒッチハイク」という言葉はふさわしくないなぁ。 ヒッチハイク、というと、 「マンチェスター」とかいう書いた紙を手に持った、 バックパッカー然とした若者を思い出す。 この国では、もっと「気楽」である。 公共交通機関が、バスを除いては、あまり無く、 車の普及率も大した事無いであろうこの国では、 普通に、通りすぎる車に向かって、手を挙げる。 それは、「タクシー」だろうが、「ジムニー」だろうが、 あんまり関係ないのである。 そして、この場合、車を止め様ものなら、 手を挙げたほうは、「乗せてもらえるもの」と思い、 話も聞かずに、助手席のドアを開けてしまう。 こうなると、断りようもないのだ。 とある村に、とある車が止まった。 そこに現れたおばちゃん。 これは、「私をどっかに連れてって」のパターンに違いない。 まぁ、いいけどね。でもスキーは無理よ。 それは、車を止めてしまった時点で、 ある程度予想はしてたから。 果たして、ナントカ村まで行ってくれるか?と聞かれた。 僕は「勿論」と言って、彼女を乗せた。 おばちゃんは、「フィジアンのおばちゃん」を絵に描いたような人。 でかい。 先ず、でかい。 腹は助手席エアバックとほぼ接している。 この状況でクラッシュしたら、彼女はどうなるのか? ある意味、見てみたい。でもエアバック如きには負けそうも無いぞ。 「セルフ・エアバック」? アフロ。 先ず、アフロ。 髪の毛のてっぺんは、文句無く、天井に接している。 然し、視線の位置、というか、座高の高さは、僕とほぼ同じである。 この状況でサンルーフをちょっとだけ開けたらどうなるか? 前面から見たら、かなり面白い光景になるのではないか。 周りの窓をスモークにして、マフラー弄って、凶悪系にしておいて、 サンルーフからちょっとだけ「出てる」アフロ。風にそよぐアフロ。 夜行塗料か、電飾つけたら、完璧や。 ・・・ある意味、新御堂筋とかも、みんなよけてくれて楽かもしれん。 阪奈とかなら、生駒とかの山容を「借景」にして、 アフロの一部は、妙な迫力をもつかもしれん。 そして、外環周辺の「はや」は大繁盛になるに違いない。 何と言っても、「アフロ」と言えば、鯛焼きが食べたくなるか、 焼肉したくなるか、そのどちらかでしょう。 あっ。今なら、「大盛りの美学」とか言うのもアリか。。。 僕が色々と思いを巡らせてると、 彼女はしゃべりかけてきた。 フィジアンのおばちゃんは、兎に角陽気で気さくでおしゃべり好きである。 曰く、息子の一人は、今、オーストラリアにいる。 曰く、孫は14人いる、等々。 暫しの 僕は何故か、彼女たちのランチに呼ばれることになった。 彼女は英語が達者である。 フィジーは、第二言語(公用語)が英語なんだけど、 あまり得意でない人もいる。 その水準はそのまま、その人の得てきた教育の蓄積の指標にもなるし、 しゃべる言葉や発音によって、 その人のある程度の「階級」を察することができるのは、 ある意味、えげれすと同じなんだけれども、 それからすると、このおばちゃんは、「なかなかの人物」であるようだ。 ランチは、彼女の「姉」の家であった。 僕は紹介され、おばちゃんは皆に「経緯」を披露した。 一同は、この異邦人に、少なからず興味をもったようである。 デジカメでやっぱり、人が群がる。 大人も子供も。 そして、曰く、この時計は日本のものだ、 曰く、誰それの誰だれが、日本に行った事がある、 曰く、誰々の車が日本車である、 等々。 とてもシアワセな時が流れた。 歓待すること。 この「ホスピタリティ」というものの塊のようなフィジアン。 僕を連れてきてくれた(連れてきたのは僕だが)おばちゃんと、 この家のヌシである、彼女の姉は、 いつしか、議論を始めている。 おばちゃんが、訳してくれる。 「姉がね、『貴方はここに泊っていって』と言ってる。 私は、『私の村へ連れて行く』と言ってて。彼女、きかないのよ(笑)」 おばちゃんの村は、別にある。 ここは、「姉の村」なわけだ。 おばちゃんと、姉さんは、 僕の取り合いをしてるらしい。 僕は、冗談で、 「体は一つですからね(笑)」 すると、「姉さん」が、こう言う。 「じゃ、最初、ここで寝て、途中からあっち(おばちゃんの村)で寝たらいい」 僕は苦笑しつつ、 「『姉さん』、事件です。僕を巡って取り合いの騒動がおきてます。 然し、藤堂マネージャーがなんとかしてくれそうです。 それでも駄目な場合は、丹波哲郎にお願いします」 と、先ずは心中で「一拍」おいた後、 「それって、僕が夜中に起きなきゃならんってことですやん(笑)。いっそ、 体を半分に切りましょか?(笑)」 「ほんなら、ノコギリ、持ってくるわ」 「鼻の穴はちゃんと両方に残るように切ってね。花粉症で鼻が詰まっても、 ちゃんとどっちの身体でも息出来る様に。・・・って、もう、ええ!」 一同、さらに和やかな雰囲気になる。 ひとしきりくつろいだ後、 おばちゃんを乗せて、「姉」の村を出発。 こうなったら、僕の運命は、おばちゃんの手に握られてある。 おばちゃんの村に到着。 車が来る。 車が止まった! 車に異邦人がいるぞ!! このちっさい村のどこに、こんだけのガキんちょがおったんや。 そのくらいの勢いで、ガキんちょが群がる。 ジムニーも喜んでいるようだ。 ガキんちょに、色んなところをピシピシ叩かれている。 おばちゃんが、「こっちにおいで」と言ってくれる。 もはや、僕には、彼女しか「よすが」がない訳だ。 言われるままに動くしかない。 立て、と言われれば立つし、 回れ、と言われれば回るし、 拝め、と言われれば拝むしかない。 家に入る。 ガキんちょたちは、わやわやと家に入る。 たちまち一杯になる。 家に入りきれないガキんちょたちは、外からこっちを覗いている。 みんな笑顔。 フィジアンのちっさいガキんちょは、めちゃめちゃ可愛いのだ。 クリクリした大きな目で、人懐っこい笑顔をこっちに向ける。 目が合うと、矢張り照れるのか、はにかむガキんちょ。 「可愛い。。。」 僕は、基本的に、ガキんちょは苦手なんだけど、 この状況、文句無しに、可愛い。 食べちゃいたいくらい、可愛い。 から揚げにしたら旨そう<ちゃう。 然し、彼ら、彼女らも、あと数年もすれば、 アフロは天にも届き、 まるで「一人"二人羽織"」のような体格に育ち、 「全人口総"曙"とその"おかん"」の一翼を担うことになるのだから恐ろしい。 既に、「少年」の中には、「ヒゲ」は濃ゆくなってるのもいる。 余談だが、実際、フィジアンの男女は、 造型が確りしてて、かなりカッコ良いし、綺麗なのである。 それはそれとして。そう言ってしまうと、僕のネタがなくなるので(笑)。 僕を そこにいる、主に「大人たち」に向かって、 「今日の経緯」を話す。 聴衆は「フムフム」と相槌を打ち、 おばちゃんが、「彼は日本人なのよ」と言えば、 「ジャパニ。ジャパニ。」 と口々に言い、 おばちゃんが、「彼はイギリスの大学に行ってるのよ」と言えば、 「イングランド。ロンドン。」 と、隣同士で議論が始まり、 おばちゃんが、「彼は谷村新司が好きなのよ」と言うと、 「私はベーヤンの方がいいわ。なんてったって、はぐれ刑事、いつも見てるもの」 と、これまた、隣同士で、「純情派」がいいか「旅情系」がいいか、 物凄い議論が始まる。 たまに、柴田恭兵派がいたりして、ややこしくなる。 僕は実に楽しい時間を過ごした。 結局そこに泊る事になったのだが、 寝る場所は一体何処になるのだろう? おばちゃんは、僕に教えてくれた。 「そこのダブルベッドを使ってね」 でも、これは、かなり、というか、最上のベッドに見える。 普段は、誰かが占有してるに違いない。 僕がそれを横取りするのは忍びない。 おばちゃんに聞くと、実はそれは、 オーストラリアにいる息子さんが帰ってきた時の、 ベッドなので、今は空いてるんだそうだ。 そうか。それなら、使わせていただきましょう。 近くにいて、話を聞いていた、 一人のフィジアン男性(29)withヒゲ、が、僕に興味を示した。 彼曰く、 「僕は日本に行った事がある」 ふうむ。 観光か、仕事なのか。 で、聞いてみると、 宮崎 ふむ。宮崎ね。エライ、マイナーなところに行ったのね。 シーガイヤ 大体、そう来るでしょうな。 でも、シーガイヤが、今は潰れて、他人の手に渡ってしまったのを彼は知らない。 えびの えびの?! ダーラム時代のフラットメイト、アビが日本に行ったことがあると聞いて、 何処に行ったのか聞いたところ、 kobuchizawa 小淵沢?! なんて、マイナーなところに行ってるんだ、アナタは。 小淵沢って聞いても、日本人でさえ、多分70%の人間は、分からないと思うぞ。 そのくらいのショックで「えびの」という言葉を聞いた。 そりゃ、僕は、全都道府県、くまなく存じ上げておりますよ。 勿論えびのも通ったことありますぜ。 でも、フィジーの、然もSuvaじゃなくて、こんな村から、 わざわざ日本くんだりまで行って、何で「えびの」なの? 何でも彼は、何かの補助金を貰って、 何かのプロジェクトの一員として日本に行ったらしい。 ニューオータニに一週間泊ったとか、 にっぽん丸で色んなところに行ったとか、 えらく、ゴージャスなことを言う。 然し、こんな村の一青年が、 そういう経験を持ってるってことは、 矢張り彼らの基準では、恐るべし事であるのには違いなかった。 翌朝、朝食前に、ぶらぶら散歩をしてると、 「えびの」のヒゲの彼がやってきた。 彼は、それまで、色々な場面で、僕に親切に説明してくれていた。 彼は、散歩に一緒に行こうか、という。 僕は彼と一緒にぶらぶらし始めた。 朝早いというのに(というのは僕にとって、だけど(笑))、 女たちは朝食の用意を既に始めている。 僕と彼と、その他3人ばかりの随行者(必ず誰か付いて来る)は、 近くの川のところまでぶらぶら歩いて行った。 「この橋はね。僕が生まれる前からあったんだ」 −ふむ。 「僕は今、29だから、多分50年以上になるのかな」 −50年! という部分じゃなく、僕は、 −29歳!! という部分に、実は反応していた。 アンタ、オレより年下やったんかい。 然し、その風貌、その落ち着き、その体格、そのヒゲ、 とても20代には見えんぞ。 29歳と言えば、アナタ、 「30(と書いてミソジと読む)を如何に迎えるべきか。如何に20代を総括すべきか」 あーんなことやこーんなことが、頭をよぎり、回転し、スクワットし、 なんちゅうか、色々な味わいを持った「苦しみ」かつ「喜び」かつ「悩み」に、 日夜悩まされてた時期やないの。 彼は、ヒゲなぞ生やして、泰然としてる。 然も、図体が兎に角でかいので、矢張り落ち着いて見えるのである。 彼はいみじくも言った。 「玲は兄弟は?」 「うん?一人っ子だよ」 (驚き) 「・・・。で、結婚は?」 「うん??してないよ」 (驚愕。ヒゲがひくつく) なんというか、彼らにとっても、 我々の「普通」は、驚きだったようである。 出発の時、村人全員か?っていうほどの人が見送ってくれる。 僕は、感謝の気持ちと、暖かい心持ちで一杯だった。 この、みんなの笑顔を見られただけでも、 来た甲斐があったってなもんだ。 おばちゃんは、僕にこんな言葉をくれた。 「昨日のベッドは、オーストラリアに行ってる息子のものだけど、 今は、日本から来た「息子」の為に使ってもらって良かったわ」 フィジアンのホスピタリティは素晴らしいね。 僕がこの国に来た時の第一印象と、 今も全く変わらない、素晴らしさを感じることができる。 ガキんちょが増えてきた。 残りの飴をあげるか。 然し、昨日の経験から、 僕が袋を出した瞬間に、 まるで「何かのタダ券を貰おうとする大阪のおばちゃん」の如く、 凄まじい事が起きるに違いない。 僕は用心して、飴を出した。 ○◆#×◎%△●$▽@▼◇×■+□◎!!!! やっぱりかい(苦笑)。 はい、ガキんちょだけね。それも最初にいたガキだけね。 アンタは駄目。後から来たでしょ。 あ!キミは二度貰いしようとしたな? きゃあきゃあ言ってるガキんちょの中、 出された手を次から次へと目で追っていくと、 妙に存在感のある、でかい手があった。 見ると、手の「ひら毛」がある。手の「各指毛」もある。 見上げると、身長が優に185cmはあるオトコがいた。 朝日の中に、輝いてるヒゲが見えた。 「ガキんちょだけって言ったやん!(苦笑)」 「僕は"一寸だけ大きい"ガキんちょや!(笑)」 |
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