■クマの棲む森 〜愛媛新聞「伊予弁」より〜 (2005年10月)
 今年のブナの実はどうだろう。今ごろクマたちもそんなことを気にしているかもしれない。

 昨年は全国各地でクマの出没が相次ぎ問題となった。一方で、四国のクマは個体数が少なく、絶滅が心配されている。愛媛では1970年代に捕獲されて以来、確実な生息記録はないが、毎年のように「クマを見た」という話を聞く。ひょっとしたら、まだ山の奥深くにひっそりと棲んでいるのかもしれない。

 それを確かめるためにクマの痕跡を探して山を歩く。食痕、足跡、糞、何か生息を示すものはないだろうか。登山道を外れ、沢を歩き、藪を抜ける。ばったり出会った時のことは、実はあまり心配していない。「この森にクマがいるかもしれない」と思いながら歩くと、森の見方が変わってくる。大きなクマが生きていくには多くの餌が必要だ。それだけの餌がこの森にあるだろうか。自分がクマならどこを歩くだろう。この洞なら入るだろうか?森を構成するいろいろな植物や地形がそれぞれに意味を持ってくる。

 残念ながら今のところクマに出会ってもいないし、痕跡を見つけてもいない。もういないのかもしれない。けれど、本当にいなくなる前にクマが棲むことができる森の意味を理解しなければいけない気がする。
(西条自然学校主宰 山本)

2005年10月4日 愛媛新聞 コラム欄「伊予弁」掲載
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