半導体製造設備の電解研磨
半導体製造装置の電解研磨で、最もユーザーが気をつけなくてはいけない事は、電解研磨が全てウエットプロセスである事。
電解研磨管を開発した当初、非常に気にかかっていたので、通常のBA管と比較した。アウトガスとしての水分は、常温でも若干電解研磨管が悪く、温度を上げると、もっと悪い結果となった。このような場合、通常行われる対策はベーキングである、120℃のベーキングが終わって、一旦良くなった電解研磨管を、数日クリンルームの中に放置すると、再び水分の放出が始まる事も分かった。
CPUやシステムLSIのゲート酸化膜が更に薄くなると、酸化膜厚の不揃いなど不都合な問題が新たに発生する可能性がある。
S-6 電解研磨の評価方法。
SEMATECH
| SEMASPEC 90120401B−STD | ガス供給システム部品に関して、金属表面を SEM分析するための、SEMASPEC試験方法 |
| SEMASPEC 90120403B−STD | ガス供給システムに関する、電解研磨したステンレス管の表面組成 及び、化学的性質。XPS分析するためのSEMASPEC試験方法 |
| SEMASPEC 91060573B−STD | ガス供給システム部品に関する、電解研磨管の表面及び酸化物組成。 オージェ電子分光分析するSEMASPEC試験方法 |
| SEMASPEC 90120400B−STD | ガス供給システムに関して接触式断面曲線測定によって。 表面粗さを決定するためのSEMASPEC試験方法。 |
これらの試験方法による評価が最も信頼されているが残念ながら日本では未だ完全に試験してくれる機関が少ない。米国の分析機関(Charles Evans
& Assoociates, Evans Sunnyvale, Surface Science Laboratories, RJ LeeGroup,incなど)。依頼するのが仕事が早くそして割安である。
米国の半導体製造会社、及び設備製造会社は、上記の試験方法で試験した結果が、下記の条件を満たす事を要求している。
| 酸化 膜厚 |
カーボン 層 |
Cr/Fe 比 |
CrO/FeO 比 |
最大Cr/Fe 比の深さ |
表面の カーボン |
表面の 汚染 |
酸化鉄 の剥離 |
表面 粗さ |
表面 欠陥 |
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| 要求値 | 25Å 以上 |
10Å 以下 |
1.5 以上が 望ましい |
1.5 以上が 望ましい |
9Å以上 |
NONE。 | N0NE。 | NONE。 | Ra=5μ inch以下 |
20以下 |
S-5 SEMASPEC 90120400B−STDに関する詳細
機械的な研磨では例え12000番のラッピングフイルムを用いたとしても電子顕微鏡で観察すれば非常に細かい条痕が見えるが電解研磨では600番程度の固定砥粒による研磨のあと電解研磨すれば全く条痕は見えない。
平滑化といっても機械的な研磨では条痕が無くなる訳ではなく、それが小さくなるだけでギザギザの小さな凹凸は残る、しかしながら大きな平面全体を平坦に研磨するのは機械的研磨のほうが優れている。スラリー研磨では研磨砥粒によるギザギザをスラリーに含まれる薬品で僅かに溶かしギザギザを滑らかにしている。
電解研磨では滑らかにうねった表面をつくる事は出来るが、平坦化は出来ない。
表面粗さは下図のようなダイヤモンドで出来た球形のスタイラスで表面をなぞり、測定するがバフ研磨面と電解研磨面では同じ表面粗さでもなだらかさは全く違う。
同じ問題をSEMATECHも提起している。


SEMATECH 90120400B-STDの要旨
ガス供給システム部品に関して接触式断面曲線測定によって表面粗さを決定するための
序論
半導体用クリンルームには高純度ガスがガス供給システムから供給されている。この文書では、その様なシステムの使用を検討しているいくつかの部品を評価するのに適用可能な試験方法を提供する。
適用範囲
0.25μm(10μin)Raから3.0μm(120μin)Raまでの表面形状の大きさがこの方法を使って測定される。
制限
粗さ指数が0.25μm(10μin)Raより大きい表面ならば、一般的な表面接触式タイプの計測器を用いて高信頼度で測定できるが、選んだ計測器は0.1μm(4.0μin)程度の形状の解像能力がなければならない。
粗さ指数が0.25μm(10μin)Ra 以下の表面は非接触の表面分析器で測定するものとする。殆どの触針式表面粗さ計にとって、0.25μm(10μin)Raは適度な精度を有する下方検出限界

0.25μm以下の表面に対して可能な非接触式測定器についてはX1,1を参照。
(筆者注:X1,1はレーザー顕微鏡や原子間顕微鏡を示している)
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レーザー顕微鏡写真(筆者 撮影) SUS316L ステンレス板 電解研磨前の表面 |
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レーザー顕微鏡写真(筆者 撮影) SUS316L ステンレス板 電解研磨後の表面 |
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株式会社 キーエンス カタ ログより抜粋 原子間顕微鏡写真 高機能フイルム表面写真 |
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株式会社 キーエンス カタ ログより抜粋 原子間顕微鏡写真 ニオブ蒸着膜表面写真 250μm×250μm× 0.02μmの計測可能。 |
触針の摺動方向に対する規則的表面形状(例えば溝)の方向(つまり加工模様)は、粗さの数値にかなりの影響を与える事がある。こうした状況(際立った方向性が存在する場合など)から生じる誤解を避けるため、資料の加工模様は触針の運動方向に対して90度の角度に向けなければならない。もしこれが可能でないならば、その状況を報告書に注記しなければならない。
S-4 電解研磨管。
現在市販されている大手電解研磨管メーカーの製品は殆ど上記の要求数値は満たしている。時々、Cr/Fe比が1.4のものがあるが、最低要求数値は1.0以上なので、さほど気にする問題でもない。
問題は表面汚染の項目にカーボン、窒素、リン、シリコンなどの汚染物質が検出されている事である。この原因は電解研磨後管の洗浄方法にあると思う。
現在の電解研磨管の洗浄方法は。電解研磨終了後、管を電解研磨設備から取り外し、温水洗浄槽、硝酸浸漬槽、温純水洗浄槽、に順次管を浸漬する。槽の液面より上の部分で管を斜めにし管内の液を排出し、又、浸漬する作業を、何回か繰り返し、管の洗浄を行っている。
この方法では、電解研磨で油分やゴミ、不純物が取り除かれた管内面と、油分やゴミ、不純物で汚れたままの管外面が、同じ洗浄槽の中で洗浄されるので、管外面の汚れが管内面に入り込み汚してしまう。
特に温純水槽は純水の純度が重要な事は言うまでも無い。常時オーバーフローさせているとは言え、同じ温純水槽で次々と管を洗浄することが果たして純水洗浄と言えるだろうか。純水製造装置の出口では17.5MΩ以上あった比抵抗も、このような洗浄槽内では1MΩを確保することすら難しい。
また、80℃以上の温純水槽の場合、空調負荷の問題や、管出荷後の結露の問題で、クリンルーム内に設置することは困難である。その為、温純水の中には工場建屋内のほこりや、天井からの落下物が槽内に入り、シリコン、カルシュウム、リン、鉄などの不純物を増加させている。
管洗浄の最良の方法は、管を電解研磨設備から取り外すことなく、管内に温水や硝酸、沸騰超純水を流して、管内を洗浄するのが理想的な洗浄方法であると確信する。この方法では管内を洗浄する洗浄水は決して管外面や空気に触れることがない。従って、高清浄度の電解研磨管を製造することが出来る。
この方法の欠点は電解研磨に引き続き、同じ設備で管内面洗浄をするので、電解研磨だけをする場合と比較し、2.5倍程度余分に時間が必要であり、設備スループットが1/2.5になることである。この問題を解決するためには、例えば1/4”管で1回に50本電解研磨している工場は、同じ据付面積で1回に125本電解研磨が出来る工夫が必要である。これは実際に実現している。
S-3 管のベーキング。
現在、殆どのメーカーがベーキングなどの対策をしていない。ベーキングの具体的な方法として、各サイズのパイプが1チャージ分1度に処理できるだけの大きさを持つ乾燥炉を作り、その1端はクリンルームに接続して大型のパスボックスの役目をさせる、電解研磨と内面洗浄が終わった管を乾燥炉のクリンルームの反対側の入り口から挿入し、一旦クリンルームに搬入して、管外面の汚れをクリンルームワイパーとIPAなどで拭き取り、管内面を高純度空気や窒素ガスでパージしたあと、再び管を乾燥炉に戻し。140℃〜160℃の乾燥熱風循環方式で乾燥炉内の管全体を少なくとも120℃以上に加熱する、勿論乾燥熱風循環系には0.1μm以下のフイルターが必要な事は言うまでもない。
ベーキング終了後、管の温度が60℃以下になった時点で再び管をクリンルームに引き出し、粗度測定、パーテイクル測定、内面目視検査、油分測定など一連の検査を行った後、管内面とビニール袋を窒素ガスでパージしながら管の両端をキャップで蓋をして、ビニール袋の両端をヒートシールで閉じる、更にもう一重ビニール袋をかぶせて両端を閉じると、空気中の水分の影響は比較的少ない。
S-2 Dry Oxidation
一度電解研磨面の水分をベーキングで飛ばしたにも係わらず、数日の間にまた電解研磨面が水分を吸収して放出する現象について、大陽・東洋酸素の飯村氏がたてた仮説があるので紹介する、同時にこの現象を防ぐために東北大学の大見教授が開発した、Dry Oxidation 法を応用した結果を報告する。
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電解研磨で出来た酸化膜の内部には、大量の水分子が含まれている。 |
| ベーキングにより水分子は外部に放出されるが、その時水分子の通ったところに通路が出来る。 | |
| 温度が下がると、空気中の水分が再び通路を通って酸化膜内部に取り込まれる。 |
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酸化膜内には水分子が大量に含まれている。 |
| この水分子を420℃〜450℃の高温で飛ばす。 | |
| 同じ温度に保ったまま、微量のドライ酸素を導入し、酸化膜の表面に通路を含まない新たな酸化膜を作る。 | |
| 温度が下がっても空気中の水分子は酸化膜の中を通れない、従って酸化膜内部からの水分子の放出は無い。 |
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白丸が電解研磨のみ、黒丸が電解研磨+Dry Oxidation 電解研磨+Dry Oxidationは1時間以内に水分1ppbに達し たが電解研磨のみの場合は3時間後でも1ppbには達しなかった。 大陽・東洋酸素カタログから抜粋 |
S-1 配管継ぎ手
継ぎ手を製造する出発材料に2種類ある、1つは配管に用いる管を出発材料として、曲げてエルボにしたり、管に玉抜き穴を作ってこれに新しい管を溶接してテイーに加工する。
もう1つの出発材料は角材や丸棒から機械加工により切り出して、エルボやテイーを製造する方法である、前者は工場の配管工事などによく使われ、後者は配管スペースが小さく出来るので、設備に組みこまれた配管に利用される事が多い。
この2つの継ぎ手を電解研磨の面から比較すると、前者の管から製造したものの方が電解研磨、洗浄に関して優れている、SEMATECHの検査方法による結果でも、管と同程度の検査結果になる。後者の角材や丸棒から製造された継ぎ手は、真空二重溶解材を使わない限り梨地の問題を避けて通る訳には行かない。
(ステンレス素材の問題参照) (梨地の発生参照)
真空二重溶解材でも原材料の違いで、普通材に較べると少ないが梨地が発生する鋼材メーカーがある、そのため継ぎ手メーカーは十分な電解研磨をかけられず、バフでピカピカに磨いて少しだけ電解研磨をかける手法を取らざるを得ない。(電解研磨のグレード)
もう1つの違いは、出発材料が管の場合は通常BA(Bright Anneal)管を使用するが、この場合は管の製造最終工程で水素気流中で1100℃以上の熱処理を行う、そのため伸管時に使用した油がステンレス表面に押し込まれて化学的洗浄で取り切れなかったものは、高温水素気流中で殆ど蒸発し、残ったとしても僅かで、炭素成分として残る、角材や丸棒の場合は機械的切削時に使用した油は切削条痕や一部切削面に押し込まれ、熱処理工程がないため、油として残り、電解研磨、洗浄後に汚れとして残り易い、多分そのためだと思うがSEMATECHの検査でこの種の継ぎ手は殆ど炭素成分による汚染が指摘される。管から出発する場合でも曲げ加工時に油を使用するし、テイー加工の時は玉抜き穴加工の時 油を使用する、それでも管から出発した方が良い結果が出るのは、油の残る程度の差であろう。