九日藍田崔氏荘 ・・杜甫・

老去悲秋強自寛
興來今日盡君歡
羞將短髪還吹帽
笑倩旁人爲正冠
藍水遠從千澗落
玉山高竝兩峰寒
明年此會知誰健
醉把茱萸仔細看

「書き下し文」
老い去って秋を悲しみ強いて自らを寛(ゆる)うす
興じ来って今日、君が歓を尽くさん
羞ず、短髪を将(も)って還(ま)た帽を吹かるるを
笑う、旁人に倩(たの)みて為に冠を正さしむるを
藍水(らんすい)は遠く千澗(せんかん)従(よ)り落ち
玉山(ぎょくざん)は高く両峰と並んで寒し
明年、此の会、誰か健やかなるを知らんや
酔うて茱萸(しゅゆ)を把(と)りて仔細に看る

「語釈」
九日・・陰暦九月九日重陽の節句
藍田・・長安郊外にある貴族や高級官僚の別荘地
吹帽・・東晋の孟嘉という人が重陽の宴会の時に帽子を飛ばされて笑われたのに対して平然とそれに応酬する名文を書いて感心されたという故事による
藍水・・藍田付近の川
玉山・・藍田付近の最高峰
茱萸・・和名ハジカミ、重陽の日に厄除けに頭に挿すという風習あり

「通解」
九日、藍田の崔氏の荘にて
「老いてゆく身には悲しい秋だが自分からあえてゆったりとしよう
興のわくままに今日は君のもてなしで楽しませてもらおう
恥ずかしい!薄くなった頭から帽子が吹き飛ばされた
笑ってしまう、傍らの人に頼んで曲った冠を直してもらったりして
望んで見ると、藍水は何千という谷川の水を集めて落ち、
玉山は空高く二つの峰と並んで寒々とそそり立っている
来年のこの会には誰が健やかに出席できるだろうか
酔って茱萸(しゅゆ)の枝を手にとってつくづくと眺めて見ている」

「作者」
杜甫(712〜770)、盛唐の詩人、字は子美
初唐の詩人杜審言の孫、洛陽の東、鞏県(河南省)で生まれた。
若い頃は貧乏で諸国を渡り歩き、長安へ出て科挙を受験するも失敗。安禄山の乱に関わり、反乱軍に捕らえられ監禁されたが脱走に成功、乱後官職に就くが大飢饉にあって、妻子とともに放浪の旅へ。旅の舟の中で死んだ。李白と並ぶ唐の代表的詩人、李白を詩仙と呼ぶのに対し詩聖といわれる。




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