実用・乗馬鞍講座

 乗馬用の鞍というのは、高価である割に、情報量が少ないですね。そこで、不肖私めが、鞍に関して各種資料を参考にしながら書いてみたいと思います。
 疑問な点や間違いのご指摘等は、随時お願いします。(^^;)

鞍の役割
鞍の構造
装鞍について
腹帯と腹帯たっ革
鐙・鐙革
鞍の手入れ


 ■鞍の役割

 そもそも、乗馬鞍の役割って何でしょう。勿論ヒトが馬に乗るための道具ですが、鞍には大切な役割が2つあります。ひとつは、馬にかかる騎乗者の体重を、馬の背中、腰等の馬体各部に分散させることです。もうひとつは、騎乗者の姿勢を正しい位置に保つことです。


 ■鞍の構造

  鞍の本体は、次の各部品から成り立っています。
1)鞍骨(あんこつ)
 その名の通り鞍の骨格となるものです。鞍骨がしっかりしていなければ、どれほど良い革を使って作られた鞍でも騎乗者は正しい騎座を保つことはできません。芯となる部分は木で出来ていますが、プラスチック・グラスファイバーなどの素材を使ったものもあります。

2)鞍褥(あんじょく)
 馬の背中を保護しつつ、乗り心地を高めるクッションの役割を果たします。
3)鐙革たっ鐶(あぶみかわたっかん)
 鞍骨に取り付けられていて、輪の形にした鐙革を掛ける部分です。騎乗中に鐙革が外れないことは勿論、騎乗者が落馬した際に長靴が鐙に引っかかった場合でも、騎乗者が馬に引きずられないよう、外れる構造にもなっています。

4)腹帯たっ革
 腹帯と鞍を結合する部品です。金具による、あおり革の損傷を防ぐため、止め金は保護革で被われています。保護革は大きなものが使いやすいです。

5)あおり革
 腹帯の止め金から騎乗者の脚部を保護し、脚の自由な運動を助けます。馬場馬術では深い鐙で脚をまっすぐ下ろして乗るため、あおり革は長くなっています。これに対して障害飛越では鐙を短くして脚を曲げて乗るため、障害鞍のあおり革は短く、前に迫り出した形をしています。

6)小あおり
 鐙革たつ鐶や鐙革から騎乗者の体を保護します。
7)厚 布
 騎座(シート)を構成する詰め物で、詰め方がきつくても緩くても正しい騎座を実現できません。鞍の前部から後部にかけて滑らかなカーブを描いていますが、これを「落ち込み」といいます。「落ち込み」が一番低くなっている部分が正しい騎座になります。


 ■装鞍について

 鞍を馬の背に装着することを装鞍といいます。鞍を乗せることは、大なり小なり馬体に影響を与えることになるので、正しい装鞍を心掛ける必要があります。
 まず、馬を馬房から引き出して来て、いきなり鞍を乗せるのは論外です。鞍を乗せる位置に異物がないか、馬体に鞍傷(あんしょう/鞍によって馬体に生じた傷)などの異常はないかを調べた後、鞍下毛布・ゼッケン・鞍の順番にゆっくりと乗せます。鞍を乗せる前に馬体を軽くブラッシングすれば、馬体の異常も発見できて一石二鳥です。馬が馬房内で寝ていた場合、寝ワラなどが背中に付いていることがありますが、そのまま鞍を乗せれば鞍傷の原因となります。

 馬体に異常が見つかった場合、自分で判断せずにその馬を管理している指導員の指示を仰ぎます。毛布を厚めにしたりパットを入れたりしますが、傷の具合によってはその馬を使うことを諦めることもあります。
 鞍は、直接馬の背骨を圧迫したり、き甲を締め付けるような乗せ方はダメです。鞍は騎乗者の体重を馬体各部に分散させる目的を持っていますが、正しい位置に置かないと鞍の目的を実現できないばかりでなく、馬にもヒトにも負担が大きくなります。鞍を置く場合、鞍の底部が直接馬体に触れるのを避けるようにします。これは鞍が馬の背を押すのを防ぐためです。鞍の底部には「骨抜き」と言って、直接馬体が触れないための溝があるのですが、この溝が充分かどうかも、鞍選びの際にチェックしておきたいポイントです。

 鞍を置いたらすぐに腹帯を締めないで、鞍の前部(前橋/ぜんきょう)を少しだけ持ち上げて、鞍と馬体との隙間を確保します。鞍の形状と馬体の幅の関係で鞍が正しく装着できない場合、その鞍は使わずに馬に合った鞍を使わなければなりません。正しくない鞍は、馬体を著しく傷つける恐れがあるからです。


 ■腹帯と腹帯たっ革(たっかく)

 鞍には通常3本の腹帯たっ革が備えられているのに対して、乗馬用の腹帯の止め金は2つしかありません。通常では、鞍についている3本の腹帯たっ革のうち、中央のたっ革は使用しません。この1本は、左右のたっ革が切れた場合の予備です。
 腹帯は、鞍を装着した直後はやや緩めに締めておき、全ての準備が整って馬場へ出で行く前にもう一度締め直します。馬場に出て乗馬する際に腹帯を締め直す光景を良く見ますが、馬によっては咬み付く場合があるので避けた方が賢明です。もっとも馬場に出る前は、乗馬する際に鞍が滑らない程度に締めればよく、乗馬した後に再度締め直します。

  乗馬用の腹帯にもいくつか種類があります。

 ◆布製腹帯・・・真田織りの腹帯が代表的ですが、耐久性に問題があります。
 ◆革製腹帯・・・耐久性はバツグンで、最も広く使われています。三枚織り、ボールディング、アサーストーンの各形式があります。このうち、腹帯擦り傷の少ないボールディングが馬の負担を軽減します。

 ◆撚り糸腹帯・・ロープ腹帯とも呼ばれ、通気性で優れていますが、耐久性は革性ほどではありません。


 ■鐙・鐙革

 鐙の本体を鐙金(あぶみがね)といい、鐙金を鞍に結合するのが鐙革(あぶみがわ)です。鐙革はズボンのベルトのように、片側に留め金(尾錠/バックル)が付いていて、もう片方には複数の穴が等間隔に空けてあります。鐙金上部には鐙革を通す穴があり、ここに鐙革を通して留め金を掛けます。こうして輪の形にしたものを、鞍骨に取り付けられている鐙革たっ鐶に取り付けます。

 鐙金には、「安全鐙金」といって、落馬した際に騎乗者の足首が引っかからないように、片側がゴムになっていたり、外れる構造になっているものもあります。鐙革を通す際には、ゴムになったいたり、外れる部分が鞍に対して外側になるように注意する必要があります。

 鐙革は、その名の通り革で出来ています。製品によっては伸びるのを防ぐために布を裏に縫いつけてあるものもあります。鐙革の長さは、鐙を履かずに乗った時の踝(くるぶし)の位置に鐙金低部が来るように調節します。障害飛越をする場合は、これより更に穴2つ分ほど短くします。

 乗馬する際に、左の鐙に足をかけて乗りますが、この際左の鐙革には大きな力がかかります。このため長期間使用しているうちに、左右の鐙革の長さが変わってきます。定期的に左右の鐙革を入れ換えるする必要があるのはこのためです。私の場合、約50鞍で約1cmの差が生じていました。


 ■鞍の手入れ

 牛革製の鞍の場合、使用後の汚れは乾いた布で拭き取ります。泥の汚れなどは水に濡らしてきつく絞った布で落としてください。サドルソープを使うと表面の汚れがきれいに落ちますが、頻繁に使うと色落ちしたり、革の表面を傷めてしまうおそれがあります。

 革の大敵は水気です。水に濡れてしまうと、完全に乾くまで時間がかかりますし、革本来の強度が確保できなくなってしまいます。
 最も重要な手入れポイントは、縫い目です。皮革製品が最も早く老朽化するのは、ほとんどが縫い目付近です。革の寿命に比べて、糸が早く老朽化して、最悪の場合鞍の部品がバラバラになってしまうのです。これを避けるために、保革油と呼ばれる油を縫い目に沿って塗り込みます。保革油にはハケで塗る液体タイプの製品と、布に付けて塗り込む半練りタイプのものがあります。

 同様に、鐙革の両面とあおり革の裏面にも保革油を塗ります。鞍の表側に塗ってもかまいませんが、表面が滑って乗りにくくなったり、乗馬ズボンが油で汚れてしまいます。

 革製品ですから、水気や湿気は大敵です。保管する際には風通しの良い場所を選んでください。この際、鞍の形(特に鞍骨)が崩れないように、鞍置き台を用意するのが理想です。

 鞍が濡れてしまったら、タオルなどで表面の水滴をふき取った後、風通しの良い場所で直射日光、特に夏の強い日差しを避けて乾燥させてください。

 鞍といえども革製品ですから、長く使っていれば形が崩れたり破れたり、シートのクッションが偏ったりすることもあります。しかし、多くの場合修理が可能です。鞍を買ったお店に連絡して、修理費用や日数の見積りを貰っておくと、後でトラブルになることも少ないでしょう。

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KFD00264@niftyserve.or.jp Koichi Sakashita