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| ★beerの語源はラテン語のbibere (ビベーレ:飲む。beverage(飲み物)などの語源)だと言われている。 ★aleは、印欧祖語(ヨーロッパの殆どと南アジアの多くの言語の祖先の言葉)の"al-"から来ている。 ★日本語の「ビール」はオランダ語から。江戸時代に盛んになった蘭学によって紹介された。 ■まず初めに、英語のご先祖は印欧祖語(ヨーロッパの殆どと南アジアの多くの言語の祖先の言葉)で、それが変化をとげながら様々な言語に分かれていった。"ale"という言葉を遡ると、この印欧祖語の"al-"に辿り着く (実際の単語にはalの後にいろいろな語尾がつく)。この"al-"は苦いというニュアンスを持っていて、エールはよく飲まれていたミード(mead, 蜂蜜酒)と比べて、ハーブなどで香味づけされていて苦味があったので「苦い飲み物」だった。蜂蜜不足でミードに発芽させた穀物を混ぜたものが作られたが、この代用品を純粋ミードと区別するため、そうでない穀物酒をエールと言ったとか。 ■さて、昔々(古英語よりも前の時代)...、西ゲルマンには既に"aluth-"という言葉があったが、新たにラテン語"bibere"(飲む)から派生した語"bier"(bior?)が出来た。(ラテン語では"cervisia"(ケルウィシア)の方が一般的だったのだけどbibereを採用。)ドイツ語、オランダ語では古い方の言葉は廃れて"bier"が定着し今もそのままだが、イギリスでは両方とも残った。 ■古英語*ではビールのことを"alu"「アルー」(ノーサンブリア&マーシア:北の方の地域)、"ealu"「エアル」(ウエスト・サクソン:南西の方の地域)と言った。属格だと"aloth"。古英語は格変化も方言も多いのでいろいろ。 *古英語(Old English, 450頃-1100頃)とは、チョーサー(1340頃-1400)やシェイクスピア(1564-1616)よりもずっと前の時代の英語。その頃ブリテン島ではアングロ・サクソン人がやって来て(ゲルマン民族の大移動)ケルト人を周辺へ追いやり7王国を作っていた。古英語には4つの方言があったが、デーン人(ヴァイキング)を追い払ったのが7王国のうちのウェセックス王国のアルフレッド大王だったので、ウエスト・サクソン(ウェセックス)方言が標準文語となった。その後ノルマン・コンクェストがあってフランス語などの影響を受け、中英語(Middle English, 1100頃-1500頃)、近代・現代英語となっていく。
■古英語の時代"alu"はビールを表す一般的な言葉で、"beor"はビールではない飲み物(りんご酒など)にも使われていた。とは言うものの、この二つの言葉は同じ意味で使われていたり、全く別の飲み物として使われていたりした。ちなみに、北ゲルマンの人々は昔からの言葉(綴りは"oel"や"aul"など様々)を使っていた。 ■中英語の頃英語は大きな変化を遂げていく。支配者たち**は"ale"を使うのを好んだので "beor"は一部の詩人などを除いてはマイナーな言葉になった。 **ノルマン征服(Norman-Conquest)でイングランドを征服したノルマン人。彼らはノルマンディーとフランス文化を好んだのでフランス的要素が多く取り入れられた。言葉もそう。
■りんご酒/シードルの意味での"beor"は、"sither"や"cidre"(そして現代では"cider")に変わっていった。これは聖書にも出ているヘブライ語の"shekar"(シェケール、強い酒)から古フランス語の"sidre"を経て英語に入ってきた。 ■15世紀、オランダからbierという飲み物がイギリスに入ってくる。aleは麦芽と水とイーストだったのに対して、bierはホップを含んでいた。イギリスでも雑味を和らげたり香味づけをするためにハーブなどの植物(グルート:低地ドイツ語のgrut?)を加えてはいたが、大陸の影響をあまり受けていなかったので、ホップは使っていなかった。大陸で初めてビールにホップを添加したのは12世紀。 ■オランダの"bier"はホップの香りづけが特徴だったので、"ale"はホップを使わないようにすべきだとの声もあったが、あまり評判が良くなく、だんだんホップを加えるようになっていった。16世紀にはaleとbeerの違いと言えばbeerの方がホップが多いという事だった。 ■こうしてだんだんとホップは他の香味用植物に取って代わっていき、"beer"も英語の一般語になっていった。しかしこの変化は地方や小さい町ではゆっくりで、地方の人々は特にaleという呼び方を変えずにいて方言には残ったりした。 ■という訳で、ale=ホップなし、beer=ホップあり、という違いは長い歴史から見るとわずか1世紀だけ。 ■で、ホップありでbeerが一般的な英語の近代になると、aleという言葉は、[1]複合語(ペールエールとか)[2]方言[3]ビール醸造家の専門用語として残った。 この専門用語。元はホップが少なめの飲み物を指していたaleは、ポーターの出現によって意味が変わってきた。18世紀、3種類のビールを混ぜた飲み物("entire"?)が流行っていて、1722年にはロンドンの醸造家ラルフ・ハーウッドがいちいち注文の都度ブレンドするのではなく樽詰めして販売。これがポーター(荷物運搬人)に人気だったからこの名が付いたとか、店に届ける際「ポーター」と叫ぶからこの名になったとか。ポータービールやポーターエールではなく "porter"(ポーター)という別の語になったのは、醸造家やパブの経営者たちは、別の言葉にした方が今までのとは別の何か新しくて良い飲み物のようなイメージにして良かったから。 ■ロンドンの水だけがポーターのタイプに適していたため、ロンドンで作られたポーターは「ロンドンポーター」として各地に出回る。そんな中アイルランドではギネス社がポーターを研究しつくし、1759年、これに勝る品質のものとしてスタウトポーター("stout" スタウト=強い)の醸造を開始。 ■これまた醸造家たちはポーターやその後継種スタウトもaleとは違った別の飲み物という風にしたかったので、19世紀のパブの外には"Ale and Porter"とか"Ales and Stouts"などと書かれていた。 ■"lager"(ラガー=貯蔵。低温で貯蔵庫に貯蔵して二次発酵を行うことから)はドイツ語から。15世紀、ミュンヘン地方で、暑い時に醸造するとバクテリアが繁殖してビールが腐ってしまう解決策として、寒い冬にビールを造って氷室に樽を貯蔵しておく方法が考え出された。ラガーはエールと違って酵母が底に沈む。チェコのプルゼニュ(Plzen, ドイツ風に言うとピルゼン)でもこの下面発酵のビールを作るようになりピルゼンビール(ピルスナー"Pilsner")が誕生、世界のビールの主流となった。"pilsner"と呼ぶ事の方が世界では多いのに、なぜかドイツ語のラガー(それも名詞よりも動詞で使う事の方が多い語なのに)を取りいれた。 ■アメリカでは19世紀までは伝統的な英国式だったが、19世紀後期下面発酵ビールが移民とともに入ってきた。西ゲルマン(ドイツ人、オランダ人=ビア派)は、北ゲルマン(ノルウェー人、スウェーデン人=エール派)よりずっと多かったので、"beer"を使うようになった。 ■20世紀、イギリスの醸造者は"stout"や"lager"ではないものを"ale"と言った。ベルギー人もこのイギリスの"ale"という語を「イギリスタイプの上面発酵のビール」という意味で使う。 ■20世紀後半ごろから、また"ale"が普通に使われるようになった。1971年に結成されたCAMRA(Campaign for Real Ale)というリアルエール(熱処理をしない伝統的な樽熟成のエール)を守ろうという消費者組織も一役買ったのかもしれない。 ■21世紀初めの 今は、"ale"は伝統的なイギリスビール(上面発酵のビール)を指し、"stout"や"porter"はエールの種類を表す語となってきている。 参考:CAMRAのlunesdale支部のサイト。http//www.lunesdalecamra.org.uk/ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
