そして冥界・白玉楼


「くぅッ!」
半霊半人の庭師は焦っていた。
メイド達の尋常じゃない人数にではない。
今、敵対している人物に自分の剣技が通用しない事に。

遠く、結界の方では激しいメロディが聞こえていた。
多分宴会好きな三姉妹だろう。
今、その音は止んでいる。

「フフフッどうした?その剣で私は切れないの?」
このままでは幽々子お嬢様も危ない・・・
「これで!!」
ありったけの弾幕を張り、その場から撤退する。
「そっちね・・・」
その弾幕を気にする事無く彼女は後を追う


妖怪桜・西行妖の元に冥界の姫、西行寺幽々子は居た。
「騒がしいわ、何があったの?妖夢」
と庭師の方に振り返る。
「ハァ、ハァ、ハァ・・敵襲です。お嬢様、今すぐお逃げください。」
まったく、この従者は何を言うのか・・・
「貴女が叶わない相手なら私が相手をするわ、下がっていなさい。」
と無数の死蝶を迫ってくる敵へ放つ。
生者が触れれば死を発現する幻の蝶である。
「フフッ綺麗ね。」
幻の蝶は迫り来る敵、ルーミアをすり抜け、後ろに居たメイド達を死へと誘う。
「な!馬鹿な!」
「やはり・・・すみません、お嬢様」
その様子を見て妖夢は幽々子を抱えあげるとすぐさま逃げだす。
「む!」
逃がすものか、とルーミアから黒い弾丸が放たれ、妖夢を穿つ。
「ぐぅッ」
「妖夢!」
「ふふっお終いかしら?」
漆黒の弾幕を止めとばかりに放つ!
が、
「何!!?」
横からの弾幕により、全ての弾を弾かれた。
「誰だ!?」
両者の間に意外な人物が割り込んでいだ。
「妖忌!?」
幽居し、行方を眩ませたはずの先代庭師である。
「妖夢、往けい!!」
返事もせずに一目散に逃げていく妖夢と幽々子。

「本来の得物を持たずにどうするつもりかしら?」
「ふん、今のワシの得物は、これよ・・・」
と隻腕の庭師は2本の刀を抜く。
1振りは傍らを漂う半身である幽霊が握っている。
「西行妖を斬る為に鍛えていたこの二振りの刀、「破リ刀・月蝕」と「封ジ刀・幻日」。未完だが存分に楽しんでもらおう。」
「・・・・貴方の相手は私じゃないわ」
と言い、スッと間合いを取り
パチンっと指を鳴らす。
妖忌とルーミアの間の夜が渦巻き
そこから甲冑に身を包み、戦車に乗った騎士が現れた。
「リカルド、お相手なさい。」
「御意」
ルーミアは妖忌の脇を抜けて逃げ出した二人を追う。
「・・・・・・・」
「・・・・・・」
甲冑の男が言葉を発する。
「ふむ、噂に名高い剣豪・魂魄 妖忌が相手とは・・・」
「隻腕のジジイ相手に戦車を持ち出すとは、な」
「ふん、そんな名刀を二振りも持ってて卑怯とは言わせんよ!」
といきなりの突撃である。
当たれば粉砕されるであろうその一撃を
紙一重で避けると、
すれ違いさまに「破リ刀・月蝕」を一閃させる。
ギィン!!
戦車を引いていた2頭の首無し馬の内、1頭の戦車と連結していた馬具を断ち切る。
首の無い馬は嘶いて彼方に走り去る。
「ほほぅ、流石、というべきですな」
剣豪は、刀を構え
「再度、試してみるか?」
と凄む。
馬車を掻き消し
「剣には剣でお相手しよう」
と大振りな剣を構える。
剣の切っ先が斧のようになっている風変わりな大剣である。
「断頭剣、か」
「ご名答。」

お互いに得物を構える。

ルーミアは、逃げた二人を追跡したが、手負いの主従は速度をさらに増し、一気に離されてしまう。
ここまで逃げに徹されると逆に気分がいい。
あの二人なら逃がしてもかまわないか・・・と呟くと散歩するように呼び出した従者の元へ帰っていった。

ギギィィン!ギャン!
火花が散る。
打ち合うこと数十合。
妖忌は二刀流を生かしての攻防隙の無い連撃を繰り出し、
リカルドは必殺の一撃を暴風雨のように振り回し、甲冑を利用した防御で凌いでいた。
「やはり、あの馬車は卑怯だと思うがな。これ程とは、恐れ入った。リカルド殿」
「何を言う、エェイ!!」
ギン!!
両者間合いを取る。
魂魄 妖忌は「破リ刀・月蝕」を鞘に収め、姿勢を低く取る。
半身の幽霊も「封ジ刀・幻日」を構える。
それを見て、
リカルドも大上段に構える。

「・・・・、ゆくぞ」
正に一足。一瞬にして必殺の間合いに入り込む妖忌。
そして一刀。
「隻腕抜刀・一ノ太刀・追閃」
隻腕で、鞘から「破リ刀・月蝕」を抜き放つ!!
同時に半身が一足の速度そのままに「封ジ刀・幻日」で心臓部を刺突する。
回避不能の斬撃。

妖忌が一足で間合いに飛び込む。
断頭剣・エクスキューショナーが一閃する。
目視では絶対に間に合わない、そのタイミングを感覚だけで読み取る。
「死刑執行・断罪」
どんな強固な物体もこの一撃の前では無意味だろう。

首が飛んだ。
「封ジ刀・幻日」での刺突は甲冑に弾かれてしまったが、
「破リ刀・月蝕」の一振りは騎士・リカルドの首を綺麗に跳ねた。

「まさか、首無し騎士・デュラハンとは・・・な。」
「使わないとはいえ、右肩を犠牲にしてまでの一刀、お見事でした。」
振り下ろした断頭剣は右肩口から垂直に腰に向けて振り下ろされていた。
「ごはッ・・・半身とはいえ、苦しいな。」
拾ってきた兜を脱ぎ、素顔を見せるリカルド。
「刀が完成したら、また死合ましょうぞ。」
「ふふ、次はこうはいかんぞ・・・・」
半身である幽霊が瀕死の半身を連れてゆく。

「さすがね、リカルド。」
と呼び出した主が戻ってきた。
「いえ、噂以上の強さでした。鎧ももう役に立ちません。」
とヒビだらけの甲冑を見せる。
最後の刺突を弾いたのは幸運ともいえた。
攻防の最中にかなりの損傷を負い、最後の刺突で甲冑胸部は使い物にならなくなっていた。
「逃がしたのね?」
「・・・すみません。」
「いいわ、敵じゃないし。」

この夜、冥界は夜の手に落ちた。


あとがき? 騒霊3姉妹を撃退したのは霊夢です。 オリジナルキャラ、リカルド登場。 詳しくは後ほど。 "破リ刀・月蝕"と"封ジ刀・幻日" 完成していれば「封ジ刀・幻日」は妖力ごと対象を結晶化する能力を持ち、 妖力を発すれば結晶化してしまうので内部からの破壊は不可能である。 この結晶を外部から破壊するには、その妖力以上の力が必要になる。(吸った妖力がそのまま硬度になる。) 「破リ刀・月蝕」は相手の妖力を共有して、自身(剣撃の威力などに)に上乗せする能力を持つ。 そのため、結晶ごと相手を粉砕できます。 完成していればルーミアでも危険です。

第四話


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