永遠亭の一室。
私は以前の試合から、落ち着けたことなんて一度も無い。
「あー、どうしよう・・
なんであんな事言うのかな・・・」
正直、自分が師匠に投票したいくらいだ。
それほど、自分にとって師匠は魅力的だ。
頭脳明晰で、隠してはいるが、永遠亭では誰よりも実力はある。
それに、姫さまだけじゃなく、私にもとっても優しい。
でも、そんなやさしい師匠が、先ほど私にこんな事を言ったのだ。
「うどんげ、明日の試合だけど、勝ちに来ないと・・・弟子を辞めてもらうわよ?」
「ぅぅう・・・」
多分、姫さまの難題よりも難しい・・

◆□◆□◆

その頃、別室。
「うどんげとの試合か・・」
正直、この試合はどっちでもいい。
勝っても、負けても、私は満足できる結果になる。

――私が勝てば・・
『「完敗です・・、もう、弟子じゃいられないんですね・・」
と、苦笑いするうどんげ。
その目には涙が溜まっている。
私はうどんげの肩に手を当てて、
「あら、あれは貴女に頑張ってもらおうとキツク言ってみただけよ?」
「え・・?」
「私は・・・
うどんげ、貴女の事が気に入っているのよ?
気に入ってるのに、弟子を辞めさせるはず無いじゃない・・・」
「え・・、やめなくていい・・・
気に入ってる・・」
うどんげが、私の言葉で安堵、驚愕し目を大きく見開く。
そして・・・
「わ、私も、師匠の事は尊敬してますッ、」
「あら、師匠として尊敬してくれるだけなの?
私は、・・・好きなんだけど・・・迷惑だったかしら?」
私は寂しそうな顔をして、うどんげを見つめる。
「師匠・・・わ、私も、師匠の事が・・ッ」
「うどんげ・・・、いらっしゃい、慰めてあげるわ。
あなたの気が済むまで、ね・・」
うどんげの肩を抱いて、そう呟く。
「ぁ・・・」
小さく呻くと、こくんと頷くうどんげ
「さ、私の部屋にいきましょ・・」』

つーッ、
にやける永琳の鼻から、赤い筋が口に向かって垂れる。
・・・・・ぅ、ちり紙ちり紙・・・
い、いいわ!
とってもいい!
持ち上げて、落す。
そのギャップで相手を揺さぶる。
うふふふ、フフッ
再度その光景を幻視し、悦に浸ってみる。

それで、もしも負けた場合なら・・・
『「あーん、負けちゃったわ・・・」
残念そうな顔でうどんげを見る。
「師匠・・・」
気まずそうに私に近寄るうどんげ。
「私って、魅力ないのかしら・・・クスン、」
「そ、そんな事無いです!
師匠は魅力十分です!
頭もいいし、美人だし、スタイルもいいし、あとは、その、胸も大きいし・・」
「ふふ、うどんげは優しいわね・・・ありがと」
頭を撫ぜる。
「え、あ、ぅ〜・・・」
ふふ、真っ赤になっちゃって・・・
「ねぇ、うどんげ」
撫ぜられて、ぽーっとしていたのか、慌てて返事をする。
「は、はい、なんでしょう?」
「勝利のお祝いよ。」
ふふ、ぎゅーーーっと抱きしめる。
もちろん、胸を押し付けて。
「はわ、わわわわ!?し、ししょう、あた、当たって、」
慌てふためくうどんげ、
なんて可愛らしいの!
「ふふ、なにが当たってるのかしら?」
さらに、うどんげの頭を抱えて、ぎゅーっってしてあげる。
「ぁぅぅ・・・」
うどんげの耳を撫ぜながら
「さぁ、他にして欲しい事は無いかしら?
今日は何でも、聞いてあげるわよ?」
「ぇ・・・ぁ・・その、え?、な、何でもって?」
混乱するうどんげに、尻尾をやわやわと触りながら、教えてあげる。
「な・ん・で・も、よ。」』

プッ・・
詰めたちり紙が飛び出す。
同時に追加の赤い水滴も。
・・・・よ、汚れちゃうッ
散った水滴を綺麗に拭き取る。
「・・・ぅ、後は姫への説明(言い訳)か・・うーん・・・
まぁ、姫の為に仕込んでましたでいいかしら?」
何の為に、何を仕込んでたのかは聞かないでね。
良い子と、お姉さんとの大事な約束よ?

一度勝敗後の予定の考え(妄想とも言う)をストップし、お茶をすする。
ずずず・・・
「ふぅ・・・・」
落ち着いた所で、自分の事を考える。
「さて、私も手は抜けないから・・・どうしようかしらね・・・
・・・、あの策にしようかしら?」

◆□◆□◆

悩んでいた私を救ったのは、私を見にきたてゐの一言だった。
「れいせん、・・・どうしたの?」
「うぅ、・・明日の事。
勝てない相手なのに、負けられないの・・・」
「・・・?、勝てば、いい、」
「勝つ方法が判らないから悩んでるの!」
「・・・、わからなかったら、ひとにきく。」
人・・・師匠意外だと、姫さましかいない。
私は早速相談しに向かった。

「ふーん、いいけど、票は入れられないわよ?」
「は、はい、ありがとうございます、姫さま!」
ちょっとまってね、と言って部屋の奥に向かう姫さま。
何かいいものでもあるのかな?
部屋の奥は姫と師匠しか立ち入れない部屋がある。
その部屋から、「あれー、どこいったのかしら?」
「昔、永琳に使わせて、私も使った道具・・・えっと、あっちかしら?」
ゴトン、ゴトン、
と何かをどける音と情け無い声がする。
・・・姫さま、整理整頓しましょうよ・・
小一時間程して、姫が戻ってくる。
どこか嬉しそう。
「あったわ、コレコレ、これでイナバの勝利間違いなしよ。」
「え!?ひ、姫さま、これ・・・」
「さ、練習するわよ?」
「えぇええええ!!?」

深夜になっても、輝夜の部屋の明かりは消えなかったとか・・・

◆□◆□◆


そして、試合当日。

「本日は、待ちに待った永遠亭対決第二弾!!
狂気を操る月兎:鈴仙・U・イナバと月の頭脳:八意 永琳の試合です。
司会は私、白玉楼の庭師、魂魄 妖夢が勤めさせてもらいます。」
わぁあああああ!
揺れる会場、響き渡る歓声。
一日という時間、待たされたのがよい発奮材料になっていた。
「まずは・・・八意永琳選手の入場です!」
会場の半分がえーりん、えーりん、と彼女の名前を連呼する。
そして、当の本人が会場に入った瞬間、その声は止まってしまう。
ワインレッドのセーターに、紺色のロングスカートという、
普段の配色なのに、落ち着いた服装。
編んでいた髪はほどかれ、降ろされている。
綺麗に梳かれたその髪は、日の光を反射して、銀のように美しく輝いていた。
観客ににっこりと笑って手を振りながら会場中央に歩み寄る。
「お待たせしました、八意永琳です。」
ペコリとお辞儀し、頭を上げる。
その時、髪をかき上げるのだが・・・
『うぉおおおお!えーりん!、えーりん!、えーりん!、えーりん!』
怒号のような歓声が沸き起こる。
それに少々引きつつも、妖夢はインタビューする。
「永琳さん、今日は私服なんですね〜・・・あれ、上はセーターだけなんですか?」
「はい、セーターだけ・・・あ、」
突然胸を抱えるようにする。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、その・・・、・・・を忘れて・・」
小声で、司会の妖夢に伝える。
「えぇ!?
そ、それじゃあ、本当にセーターだけな・・むぐッ」
とっさに妖夢の口を押さえる。
「だ、ダメ、言わないで・・」
真っ赤になってお願いする。
首を縦に振る妖夢。
最初、一連のやり取りが意味不明だった観客だが、理解すると、再度、えーりんコールの大合唱。
運営委員から、静粛にとの放送がかかるほどだ。
これぞ、月の頭脳と言われた永琳の策、
『綺麗なお姉さんは好きですか?』
効果は絶大だ。
内心で勝利後のパターンを思い返し、にやけてしまう。
「うぁー、すごいですッ・・
つ、次は、鈴仙選手の入場です!」
れーせん、れーせん、と、えーりんコールを真似て、歓声が起こる。
チャリ、チャリ、と金属音と供に、入場してきたのは二人。
なんと、
鎖を持つ輝夜と、
それに繋がれ、首輪をしたバニーの格好をした鈴仙だった。
鈴仙はどこか陰鬱な表情をしている。
会場がまたも静まる。
すかさず妖夢が駆け寄る。
「か、輝夜さん、だめですよ・・」
「あら、すぐに退散するから大丈夫よ。」
観客がどよめき立つ中、会場中央にたどり着く。
「さ、自己紹介をなさい。」
チャリ、鎖を引く。
首輪が引っ張られ、鈴仙が呻く。
「ぅ・・は、はぃ・・・
ほ、蓬莱山 輝夜様の、ぺ、ペットの・・・鈴仙・優曇華院・イナバです・・」
深々とお辞儀をする。
けして頭を上げようとしない。
一拍間を置いて、
「うん、よくできました。
さ、顔を上げて、」
ようやく輝夜が頭を上げさせる。
「は・・はい・・」
鈴仙の顔は真っ赤になっている。
目には涙が溜まって、今にも零れそうだ。
「さ、上手に出来たから、ゴホウビをあげるわ・・」
袖の中からにんじんを取り出し、鈴仙の口元に近づける。
「・・・あ、ありがとう、ござい、ます・・」
そこで鈴仙が動きを止める。
「(イナバ、どうしたの?手を使わないでにんじんを齧るんでしょ?)」
輝夜が小声で促す。
輝夜の与えた作戦。
『ペット扱いを利用して、票をゲット作戦』
弟子を辞めたくない鈴仙が、プライドを捨てて選択した道だった。
だが、最後の最後で、プライドを捨て切れなかった。
「っく、・・・ぐす、・・すみ、ません・・ぐすっ」
その場で泣き崩れてしまう。
「ぐすっ、うぅ、・・ひっく、ひ、姫さま、ごめんなさい・・・
嫌な役、してもらったのに・・・ごめんなさい、ぐすっ、
やっぱり、無理・・・ぐすっ・・ふえぇえええええん」
「イナバ・・・」
「れ、鈴仙さん、自己紹介を最後まで行ってください。
次に進めませんので・・・」
司会の妖夢が、無理としりつつ鈴仙に続きを要請する。
観客の方からも、
「続きマダー?」
「ニンジン咥えろ!」
「ウ・サ・ギ!、ウ・サ・ギ!、」
などと、ヤジが飛ぶ。
そんな中、割り込む声。

「静かになさい!」

その一喝で会場は静まる。
・・永琳だ。
観客から守るように、やさしく鈴仙の肩を抱き、声を掛ける。
「うどんげ、どうしてこんな事をしたの?」
「ひっく、ぐしゅ、で、弟子で・・いたかったんです・・ひぐッ、うぅ・・」
「ごめんね、悩んでしまうような事を言ってしまって・・・」
そんな事無いです、と鈴仙が首を振る。
「・・・」
厳しい表情に変えて、妖夢を見る。
「ぅ・・・」
「暫く進行をストップしてもらうわ」
「そ、それはダメです!
時間は決まっているんですよ?」
「・・・それは、私を敵に回すって事かしら?」
その目は真剣だ。
「し・・失格になってもいいんですか?」
「えぇ、大事な弟子を・・うどんげをこのまま晒し者にするくらいなら、
・・・会場も、トーナメントも、全て消し飛ばすわ」
その言葉も真剣。
誰も彼女の本気を、全力を知らない。
だから、
職務と、情と、規則の板ばさみになる妖夢。
輝夜がそんな彼女の肩を叩く
「私がもう一度悪役をやってあげるわ。」
「え?」
いまいち理解しない妖夢に、輝夜は自ら説明する。
「だから、乱入した私を摘み出してる間は、貴女はあの二人の行動は判らないでしょ?」
「・・・あ!」
「ふふ、さ、早く摘み出してちょうだい。
時間を掛けてね。」
妖夢がマイクを握る。
「えー、大変申し訳ありません。
乱入した、輝夜選手に少し事情を聞きたいので、暫くお待ちください。」
「それじゃぁね、イナバ、永琳。」
「・・・すみません、姫・・」
妖夢が輝夜をつれて行く。
丁重に。
「さ、うどんげ、着替えに行きましょ?」
残された永琳が立ち上がる。
「し、師匠、さっきの・・・大丈夫なんですか?」
「あぁ、怒鳴ったの?ふふ、勝敗なんて最初からどうでもいいのよ。
それより早く行きましょ。」
「あ、師匠も着替えるんですか?」
「ちょっと忘れ物があってね。」
そう言って、鈴仙を引っ張り上げて、立たせる。
二人がよりそって控え室に帰ってゆく。
残された観客は荒れると思われたが、
二人の師弟愛に心打たれたのか、何事もなく試合は再開されたのだった。

◆□◆□◆

「ふーっ、もう負けてるからいいんだけど、悪役は辛いわ〜」
「・・・ん、ひめさま、お茶。」
「あ、ありがとイナバ。」

この日、さらに絆が深まった永遠亭の住人達だった。


あとがき! 一応両者支援です。 前半は、可愛い物好き(今回の対象は鈴仙)な永琳の妄想話 後半は、ペットうどんげ、お姉さん永琳 密かにカコイイ輝夜。 あー、 でも、ペットな扱いの鈴仙ってえっちぃですね(*´ω`) いや、そんな扱いをする輝夜がえっちぃのか!?(*´ω`)? それだと、そんな輝夜に尽くす永琳もえっちぃなぁ(*´∀`) つまり、一緒に住んでるてゐとその他ウサギもえっちぃのか!(*゚∀゚)=3 くぅ、投票迷う・・・ 書いててブラ無しセーターのきょぬー永琳は犯罪的だと思ったEXAMでした。

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