いつもの如く、紅魔館から本を貰ってきた帰宅の最中、唐突に名前を呼ばれた。
「魔理沙〜」
 ん? 誰だ私を呼ぶのは……昼間なのに辺りも暗くなってるし……
「と言う事は、ルーミアか」
「うん、ねぇねぇ魔理沙、お願いがあるんだけど……」
 ふむ、こいつが私にお願いか……
 まぁ、面白そうだし、聞いてみるか
「なんだ? 残念ながら私はご飯になれないぜ?」
「違うよぉ、んとね、魔法教えて!」
 なんていい笑顔かしら……って、
「ハァ!? 本気で言ってるのか、お前」
「うん、弾幕ごっこで勝てるようになりたいの」
 確かに目がマジだぜ……
「ふーん……誰に勝ちたいんだ?」
 チルノ辺りか?
「ん〜、とりあえず、魔理沙」
 と指を指される。
「はぁ……私に勝ちたいのに私に教えてくれって……」
「ぁ……でも、私他に魔法使いなんて知らないし……」
 うーん、見事にしょんぼりしているな……
 私の家には連れて行きたくないし……
 ……そうだ、少しからかってやるか……
「そうだ、それならもう一人の魔法使いに頼んでやろう」
 確か持ってたからな、あいつ。


	§ § §


「だからって、何で私の所にくるのよ……」
 説明すると、予想通りの答えが返ってきた。
 場所は、魔法の森の奥深く
 そこに住む、もう一人の魔法使いアリス・マーガトロイドの屋敷。
「それに私は自分の研究で忙しいのよ?」
 ごねるアリスに、魔理沙が耳打ちをする。
「安心しな、少しからかうだけだぜ」
 それを聞いたアリスが盛大にため息を付く。
「はぁ………あんた、いい趣味してるわ……」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
 魔理沙がおどけてスカートを抓んで礼をする。
「……おしえてくれるの?」
「あぁ、アリスが魔道書を見せてくれるらしいぞ?」
「わぁ……、ありがとね、アリス」
 満面の笑みで、アリスの両手を握るルーミア。
「ぇ、えぇ、……じゃあ、二人ともあがって」
「おじゃましまーすッ」
「おじゃまするぜ」


	§ § §


 屋敷に上がると、魔理沙はさっそく本のありかをアリスに尋ねる。
「……って本なんだが、持ってたよな?」
「えぇ、でも、あれは魔道書でもなんでもないわよ?」
「あぁ、だから、だぜ」
 と、ヒソヒソ話をしつつ、応接間に二人を案内する。
「じゃあ持ってくるからそこにかけて待ってて頂戴」
「うん」
「あぁ」
 ルーミアは、部屋の中イッパイに飾ってある人形に目を奪われる
「うわー……、人形ばっかり……」
「アリスは人形を操る魔法を使うからな」
 と魔理沙が、飾ってある中から、帽子を被った人形を手にとって眺める。
「へぇ……じゃあ、私も人形操れるようになるのかな?」
「さぁな、人形操術はアリスのオリジナルだしなぁ」
「そーなのかー」
 手に取った人形を元の場所に戻し、ポンポンと頭を叩く。
「魔理沙、あったわよ」
 と、一冊の本を持ったアリスが戻ってくる。
 それを受け取った魔理沙が、
「これには最も簡単な魔法が書かれてる」
 と、ルーミアに手渡す。
 だが、タイトルを見たルーミアが魔理沙を睨む。
「……これって童話……だよね?」
 さすがにルーミアも魔理沙を疑う。
「ふッふッふ……、甘い、甘いぜ!」
「ぇ!?」
「いいかルーミア、童話に出てくる魔法はな基本中の基本なんだ。基本ができなきゃ他の魔法なんて無理だぜ?」
「そ、そーなのかー……、うん、読んでみるよ」
 ルーミアは素直に童話を読む事を決意した。
「おぅ、読み終わったら教えてくれ。それとアリス」
 アリスは人形の帽子がずれているのを見つけて、角度を修正していた。
「なに、私は忙しいんだけど?」
「お茶はまだか?」
 アリスから、何かがキレル音が聞こえた。


	§ § §


 暫く経って、パタンと本を閉じる音がした。
「ふーッ……魔理沙、終わったよ〜」
 少し前に、アリスを『説得』し終えて喉が渇いたのだろう。
 魔理沙が冷めた紅茶を飲み干す。
「ふぃーッ……そうか、それじゃあ、どれが魔法かわかったか?」
「んーっと……、死の呪いを100年の眠りに変える?」
「もっと簡単な奴があっただろう?」
 パラパラと本を捲るが、ワカラナイ。
「むぅ……どれ?」
「コレだ、コレ、眠りを覚ます事で幸せになる魔法だ。」
「ハァ、ハァ、そ……そんな魔法、有るわけ無いじゃない……」
 所々ボロボロになったアリスが突っ込みを入れる。
「だからアリスはダメなんだ。 有るか無いかは実際に試せばいいことだぜ」
「んー、でも、寝てる人がいないよ?」
 ヤル気満々のルーミアが魔理沙にたずねる。
「あぁ、そこは大丈夫。 この時間帯だと、アイツが寝てるはずだからな……」
 そう言ってニヤリと、怪しく笑う魔理沙だった。


	§ § §


「ちょっと魔理沙」
 ルーミアが出て行った後、アリスがたずねる。
「ぅん?」
「なんであんたがそんなこと知ってるのよ?」
 アリスの言っているのは、先ほどの魔理沙がもたらした、『彼女』の情報の事だ。
「あぁ、なんてったって、私の大好物だからな」
「だ……大好物って……!?」
 アリスが声を荒げるが、それを無視して魔理沙が立ち上がる。
「さて、見に行くぞ」
「な、なんでよ?」
「アイツは勘が良くて、邪魔されるのが嫌いなんだ」
「そ、それぐらい知ってるわよ……でも、それがどうしたって言うのよ?」
 そこで魔理沙がニヤリと笑う。
「それを見て楽しむんだよ。 ほら、行くぞ」


	§ § §


 魔理沙に言われて、あの人の所に向かう。
「本当に寝てるのかな……?」
 半信半疑なルーミアだが、せっかくの魔法だから、と素直に従い、言われた場所――神社に向かう。
 境内に彼女の姿は見えない。
「やっぱり魔理沙の言ったとおりかも……」
 さらに庭の方に向かってみる。
「いた!」
 神社の巫女、博麗霊夢が。
 掃除の休憩のまま寝てしまったのだろうか、縁側で仰向けになって寝ていた。
 そぉっと霊夢の近くに降りてみる。
「……起きてない、……よね?」
 少し緊張するよぅ……
 音を出さないように、縁側に近づき、寝顔を見てみる。
「すぅ……、すぅ……、」
 起きる気配も無く、静かに寝息をたてていた。
 弾幕ごっこで撃墜されてばかりだけど……
「……寝てる……」
 霊夢の寝顔……
「……可愛い、なぁ……」
 ――トクン、
 胸が、高鳴る。
「ぁ……、ぅ……」
 いつもと違う自分に戸惑う。
 霊夢から目を逸らすと、
 その脇には、食べかけのおにぎりとお茶が置いてある。
 おやつの代わりだったのかな?
 日向ぼっこしててそのまま寝ちゃったみたい。
 動転したルーミアは妙な行動にでる。
「お……おにぎり、おいしそうだな〜、食べちゃおうかな〜」
 小声で、そんなことを言いながら食べかけの冷えたおにぎりに手を伸ばしたのだ。
 これで霊夢が起きれば、いつもみたいに弾幕ごっこになるだけ。
 うん、それで、いつもどおり。
 この変な感じも……
「すぅ……、すぅ……」
 ……だが、霊夢は起きなかった。
 そのままルーミアは食べかけの冷えたおにぎりを食べる。
「あむ、もぐもぐ……もぐ、もぐ……ごくん…」
 ……食べちゃった…、なんで起きないんだろ……
 もう、やる事無いや……
 いや、やる事はある。

 もう一度、霊夢を覗き込んでみる。
「すぅ……、すぅ……、」
「…………ッんく、…ぁ……」
 無垢な寝顔に、ルーミアは心奪われる。
 ――トクン、――トクン、
 見つめていると、心臓の音が大きくなる。
 このまま……、じゃ、ダメ……
 自分に言い聞かせる。
 魔法を覚えるんだ。
 だから、魔理沙の言ってた基本をやれないと、ダメ……。
 魔理沙の言葉を思い出す。

「先ずはその方法で眠りから覚ます。これが上手くいけば幸せになるって効果が現れる。 簡単だろ?」
「大丈夫、お前ならできるって」

 うん、簡単だよ。
 何も、難しい事をする訳じゃないんだから……
 意を決して、
 ルーミアは霊夢の寝顔をじっと見つめる。

「……れいむ……」

 ――トクン、

 ルーミアの顔が、眠っている霊夢に近寄る。
 心臓の鼓動が煩い。


『眠りを覚ます方法は―――』



 ――トクン、トクン、




『―――眠る者の唇に―――』





 ――トクン、――トクン、――トクン、




『―――口付けを』




 ――トクン、
 鼓動が一際大きくなる。





「……んッ……」
 ゆっくりとルーミアの顔が霊夢の寝顔に重なる。






 ちゅ……








 軽く、触れ合う程度の――キス



「ぷぁッ……」

 ほんの数秒の触れ合いが終わり、ルーミアが大きく息を吸う。
 初めての事だったので、ルーミアは息を止めていたのだ。
 初めてのキスをしてしまい、魔法が成功か失敗かなんてルーミアの頭の中に無かった。

 ……しちゃった……霊夢に……キス……
 心臓が破裂しそうなほどドクドクしてる……
 顔も、なんだか熱い……
 ぽ〜っとしながら、霊夢に触れた唇を、自分の指で触れて、確かめる。
「……ん……」
 まだ、触れた時の……感触が……
「……れいむ……」
 そのとき、起きる気配の無かった霊夢がピクリと動く。
「ん……、んッ……」
 緩慢な動作で、霊夢が起き上がる。
「ふぁ……ッ」
 欠伸をし、ぐぐぐっと両腕と背筋を伸ばして覚醒する。
「あら……、ルーミアじゃない……おはよ……」
「……ぅん……、おはよ……」
 霊夢が私の顔を見てる……
「ルーミア……」
 もしかして、……ばれた?
 霊夢の手が、私の顔に伸びる。
「ぅ……」
 きゅっと目を瞑る。
 唇の近くを触れて離れる。
「ぇ……」
 てっきり叩かれたり、抓まれたりすると思ったけど……
 目を開けると、霊夢が指を咥えてた。
「もぐ……、ご飯粒ついてたわよ……、まったく、冷えたおにぎり食べちゃうなんて……」
「ご、ごめんね……」
「それよりも……ルーミア、あんた、顔が赤いわよ?」
 と霊夢が私の頬を両手で挟むと、顔を寄せてくる。
「ぁわわわわわッ」
 れ、霊夢、なにするの!?
 コツン
 霊夢の額が私の額に触れる。
「ぁ……」
 ぶしゅうぅうぅ……顔から湯気が出るほど真っ赤になる。
「熱は無いみたいねぇ……でも、顔は真っ赤ね……それに元気も無いし……」
「ぅゅ……」
 恥ずかしくって、まともにしゃべれない。
 それ以前に、顔もみれない。
 私は俯くしかなかった。
「よし」
 霊夢が立ち上がる。
「ほら、行くわよ。どうせ食べれば治るんでしょ?」
「え、え?」
「夕飯の手伝いしてくれればご馳走するわよ?」
 そう言って、手を差し伸べてくれる。
「……ぅん」
 手を取って立ち上がるけど、
 手なんて繋いでたら、……茹で上がっちゃうよ……
 私は手を放すと霊夢の袖をきゅっと握る。
「……なに甘えてるのよ……」
「ぁ……」
 霊夢に睨まれ、袖から手を放す。
 だが、霊夢はにこりと微笑み、優しく言った。
「今日だけ、よ?」
「……うん♪」
 霊夢の袖を握りなおすと、後について部屋の中に入る。
 そのとき、思い出した。



 魔理沙、アリス……魔法、成功したよ。
 私………とっても幸せ……


	§ § §


 霊夢とルーミアが仲良く部屋に入っていった。
 この一部始終を見ていた魔理沙も、アリスも、顔面蒼白になっていた。
「………嘘…」
「………そんな…」

 それはそうだろう。
 二人が見たかったのはこんな場面ではない。
 昼寝の邪魔をされて怒った霊夢の夢想封印で吹き飛ぶルーミアを見たかったのであり、
 霊夢にべったりになり、一緒に夕飯を食べるルーミアではないのだ。




 その後、魔理沙とアリスが昼寝の霊夢に襲い掛かり、その度に夢想封印されたのは言うまでも無い。




あとがき! チルノでもなく、リグルでもなく、みすちーでもなく、 霊夢です。 霊夢とルーミアのカップリングです! 超希少種です。 でも、このカプがいいんです! これが書けて大満足です。 多少なりとも甘いと感じてもらえれば幸いです。

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