第十五夜 ディズニーランドへ行った話
夏休み、子供三人と私の母を連れて東京へ行きました。
一度くらい、我社の東京事務所を見ておこうと思った、っていうか、ま、目的の大部分は東京見物。
「飛行機は嫌だ」と言う母のため、6時間かけて新幹線の旅。
ようやく到着した東京。
熊本弁丸出しで、はしゃぐ子供たち。
“はとバス“に乗って、浅草へ行って、国立劇場でミュージカルを観て、メインはもちろん東京ディズニーランド。
バブルにまみれた東京。宿泊は新宿のヒルトン。ちょっと裏ワザ使って、一部屋料金で五人お泊り。
夕食はディナーバイキング。さすが外資系。高級そうな料理がずらりと並んで、母も私も緊張緊張。
しかし、子供たちは平気平気。お皿抱えて料理へ突進。
当時、小学生だった長男は、ここで初めて、にぎり寿司“トロ”の味を知りました。
何度も何度も並んでトロをもらう長男に、ボーイさんも苦笑い。
三才の娘のほうはスープが気に入り、これまた何度もおかわり。
さて、大人はというと・・・
私と母、初めて見る珍しいハムやチーズ、パテに圧倒されつつ円形テーブルをぐるっとまわって食べまくったのです。
・・・が、ふと、隣の円形テーブルを見ると、ローストビーフや豪華な魚料理が並んでいる。
おや?あれ?
しまった!さっきのテーブルは前菜のテーブルだった!
メインのテーブル、デザートのテーブルと、まだまだたくさんあったのです。
前菜だけでおなかいっぱい食べてしまった私と母。
おおいに後悔しながら、でも、がんばって再びローストビーフのテーブルへ。
デザートもいけいけ〜!おなかこわすまで食べまっせェ!
さて翌日、ディズニーランド行きの直行バスが出発するまで、ホテルの朝食バイキングを食べることに。
カウンターにはパンだけでも数え切れないくらい並んでいます。おいしそ〜
「これ、お昼にもっていこうか」
私と母は同じことを考えました。
そして何の躊躇もなく、パンを数個とって来て、持参のビニール袋に入れたのです。
すると、すかさず無表情のボーイさんが・・・
「あの、お客様。パンのお持ち帰りはご遠慮ください」
「え?いけないの?」
バイキングの“持ち帰り厳禁“は常識。
今なら知ってるけど、その当時は「なんで?」
母なんか、お茶を入れてきた水筒にジュースもじゃんじゃん詰めてたもん。
いま思い出すと、ああ恥ずかしい。まわりの外人さん、さぞあきれていたでしょうね。
「こんなにたくさんあるんだもの。いいよねえ」
ボーイさんが立ち去った後、納得しない私と母は、再びすきを見て、こっそりとパンを取りに。
素早く娘のリュックにパンを滑り込ませたのです。
が、しかし、向こうもプロ。見逃さなかった。
「パンはお持ち帰りできません。売店でお買い求めください」
眼鏡をかけて、細身の「いかにもホテルマン」の慇懃無礼男。
さすがに私たちも恥ずかしくなって、
「あ!もうバスの時間!」
と、そそくさ娘の手を引っ張って出口へと向かいました。
でも、リュックの中にはちゃーんとさっきのパン、入ってるもんね。
おなかも満腹だし、昼食もゲットしたし、ジュースもOK。
「さてさて出発!」とディズニーランド行きの直行バスに乗り込んだ途端、長男が、
「あ、ゲームボーイ忘れた」
おいおい、もうバスは走り出してるぞ。これだから、もう、子供は・・・。
一応、ホテルに電話し、帰る日に受け取りに行くことにしました。
さて、当日。皆を待たせて、ヒルトンホテルへゲームボーイを取りに行きました。
「少々お待ちください。今、持ってまいります」
嫌な予感・・・
う・・・予感、的中!
ゲームボーイを持ってきてくれたのは、あの、二度も私たちのところへ注意しに来た能面顔のボーイさんでした。
私はうつむいたまま、顔を上げられないまま、うやうやしく賞状を戴くように、手だけを差し出しました。
おまけの話
ちなみに、ディズニーランドでは食べ物の持ち込みは禁止。
お弁当を持ってきたら、いったん外へ出なければなりません。
それは知っていたんだけど、夏休み中の混雑の中、小さい子三人を連れてレストランで並ぶのもね。
さて、ディズニーランドの入り口で、子供たちが迷子にならないよう、身軽にするため、
リュックもバックもロッカーへ預けました。
財布のみポケットに入れて、しっかり子供たちと手をつないで、
気合を入れて、胸をわくわくさせて、おとぎの世界へ入っていったのです。
私も母もすっかり舞い上がっていました。
そしてお昼になって二人で叫んだんです〜。
「あ!ホテルのパン、ロッカーの中だ〜!」