&



第2パルティータ以外のディスクをならべてみる。


 

朝枝信彦

Nobuhiko Asaeda

BWV.1002/06

1980s

 

 

石川静

Shizuka Ishikawa

BWV.1001

1988

 live

 

日下紗矢子

Sayako Kusaka

BWV.1005

2008

 

 

五嶋みどり

Midori

BWV.1003

2005

 

 

辰巳明子

Akiko Tatsumi

BWV.1001

1978

 

 

玉井菜採

Natsumi Tamai

BWV.1002

1995

 live

 

西江辰郎

Tatsuro Nishie

BWV.1001

1993

 live

 

藤原浜雄

Hamao Fujiwara

BWV.1001

2007

 live

 

堀米ゆず子

Yuzuko Horigome

BWV.1001/03/05

1986

 

 

アドルフ・ブッシュ

Adolf Busch

BWV.1001

1948&34

 live

 

アドルフ・ブッシュ

Adolf Busch

BWV.1005

1946

 

 

ミハイル・フィヒテンゴルツ

Mikhail Fikhtengoltz

BWV.1001&1002

1984

 

 

ゲルハルト・ヘッツェル

Gerhart Hetzel

BWV.1003

1962

 

 

ユーディ・メニューイン

Yehudi Menuhin

BWV.1001

1933

 

 

ダヴィッド・オイトストラフ

David Oistrakh

BWV.1001

1947

 

 

イーゴリ・オイストラフ

Igor Oistrakh

BWV.1001

1950s

 

 

タチアナ・オルジッチ

Tatjana Olujic

BWV.1001

1985

 

 

ワディム・レーピン

Vadim Repin

BWV.1003

1989

 

 

ハンスハインツ・シュネーベルガー

Hansheinz Schneeberger

BWV.1001/03

1979

 

 

トッシー・スピヴァコフスキー

Tossy Spivakovsky

BWV.1001

1975

 curved bow

 

ヴィクトル・トレチャコフ

Viktor Tretyakov

BWV.1001

1965

 


A B C D E F G H I J Ka Kr L M N O P Q R Sa Sk T U V W X Y Z
chaconne 



朝枝信彦
Nobuhiko Asaeda

BWV.1002/1006
P1985
( Mannheimer Profile MA 09.101.58  LP-W.GERMANY )


 朝枝信彦、若かりしころの演奏。彼は最近まで、兵庫芸術文化センター管弦楽団のコンサートマスターを務めていた。
 無伴奏パルティータ2曲をカッティングしたLP。第2パルティータをはずしたのには、なにか理由があったのか。
 彼は1980年から1999年までの19年間、ドイツのマンハイム国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターを務めており、その間に録音したもの。プライヴェート盤のようだ。

 第3パルティータはグリュミオーを彷彿させる流麗、美麗な演奏である。グリュミオーよりもぎこちないが、技術的なものというより、マイクの前でややマジメになりすぎた結果のように、私には思えた。

 残響豊かで、聴きやすい。優秀録音といえる。

(2010/08/13)





石川静
Shizuka Ishikawa

BWV.1001
1988  live
( BAYERISCHE VEREINSBANK  IMS-230  LP )


 1988年の録音。ドイツ・ニュールンベルグにある聖ゼーバルト教会に於けるライヴ。
 「シャコンヌ」以来の、石川静によるバッハ無伴奏曲の登場。演奏は、その美、その深、その高、その広……すべてで進化しており、その感銘度で比較しても、断然こちらがよい。全6曲の録音が待たれるところである。
 バイエルン社団銀行制作のプライヴェート盤。

(2008/10/08)




 

日下紗矢子
Sayako Kusaka

BWV.1005
Aug 01-03, 2008
( HERB Classics HERB-011  CD-JAPAN )


 日下紗矢子は兵庫県出身。現ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(旧ベルリン交響楽団)の第1コンサート・ミストレスとのこと。

 清澄、流麗なヴァイオリンで、音色に艶があり、とげとげしいところがまるでなく、円滑な流れが心地よい。
 正攻法そのものの演奏であり、装飾も皆無。日下紗矢子は無心に音楽をつむいでゆく。若干薄味で、特徴にとぼしいと言えなくもないが、それゆえに魅力を感じるのは、あれこれと恣意的な香りのする(と私個人が勝手に感じる)バッハにぶつかる機会が増えてきたからだろうか。
 力強さには不足するが、そのぶん、安定したテクニックと女性的な優美さ、素直さで聴かせてくれる。私的には好印象だった。

 録音優秀。
 残響豊かだが、出しゃばる性質のものではなく、そのせいか、多少ヴォリュームを上げても聴き疲れしない。
 2008年08月01日〜03日。於山梨市《花かげホール》。

(2009/11/17)




 

五嶋みどり
Midori

BWV.1003
Aug 22-23, 2005
( SONY CLASSICAL 82796-97745-2  CD-USA )


 もともと目が離せないひとであるうえ、SONY CLASSICAL のウェブサイトで、この第2ソナタの冒頭が試聴できるようになっていたのを一聴、期待が高まっていた。
 言いつつ、先行発売の国内盤を見送り、より安価で出るはずとの考えから外盤までがまんしたのはなんともなさけない。しかしまァ、予測どおり、ほどなく輸入盤の発売が予告されたので予約注文。来年(2008年)1月中旬入荷の予定が、前倒しになって年内発売となったのはうれしいかぎりである。

 第1楽章グラーヴェは、たいへん美しい。まさに祈り≠フ演奏だ。加えて、ほのかな寂寥と温雅がただよう。5分半もかけている。これはかなり遅いほうだろうが、冗長感はない。続くフーガは一転して薫風のような軽快、爽快さで驚かされる。7分を切っている。こちらはそうとう速い部類に入る。アンダンテは風がやんだような寂しさを感じさせ、アレグロでの理性的な疾走感は、雪原を駆けて踊る粉雪の光耀を連想させた。
 これは四季であるな……。
 日本人ならではの詩情あふれる演奏、と思ってみたい。

 2005年08月22&23日。於マサチューセッツ州ウォーチェスター、メカニクスホール。

(2007/12/30)




 

辰巳明子
Akiko Tatsumi

BWV.1001
1978
( TOSHIBA EMI TL-1006  LP-JAPAN )


 辰巳明子は現桐朋学園の教授。活躍する教え子を多く持つ。
 1977年、ベルリンにて、ポール・ズーコフスキーの代役として高橋アキとデュオ・リサイタルを開いた際に、尹伊桑(ユン・イサン)に認められた。現代音楽を得意としたらしい。

 スタートをきったばかりという感じで、まだ個性には欠けるものの、技巧も安定しており、なかなか聴かせる演奏だ。録音は、なにを強調するといったふうもなく、実に素直なもので聴きやすい。
 第1ソナタを1面、2面には得意の(?)現代音楽、尹伊桑大王のテーマ、湯浅譲二マイ ブルー スカイ第3番を刻んでいる。

 1979年制作のLP。たぶんプライヴェート盤だろう。
 現在は指導者に徹しておられるようだが、だからこそ、無伴奏全曲を聴かせてほしい……と思ったりする。

 1978年11月20日&12月23日、於横浜市磯子区のオーレックス・オーディオ・センター。

(2008/02/22)




 

玉井菜採
Natsumi Tamai

BWV.1002
Dec 17, 1995
( 石部町教育委員会 ISIB71217  CD-JAPAN )

 
 関西ではおなじみの玉井菜採がオランダへ留学中の1995年、一時帰国したのか、地元の滋賀(※生まれは京都だが、4歳時に滋賀県大津市へ移住)でリサイタルをおこなった。そのときの実況録音盤。
 とはいえ、不思議なことに、聴衆ノイズはまったく入っていない。ブックレットには、「その日の感動と興奮をそのままにCD化して、プレゼントさせていただきます」との、当時の石部町長の言葉が掲載されているので、やはりライヴのようである。
 
 内容的にはおとなしく、まだこのひと独自のきらめきなどは見られないが、音色は美しく、テクニックはしっかりしている。
 彼女の無伴奏は、ほかにバッハ国際コンクールにおけるシャコンヌの演奏がCDになっている。
 
 録音はひじょうに鮮明。直接音95%といった感じの、残響を排した純朴なもの。

 1995年12月17日、滋賀県・石部町文化ホールにて(※石部町はその後甲西町と合併、湖南市となった)。

(2010/08/13)




 

西江辰郎
Tatsuro Nishie

BWV.1001
Apr 05, 1993
( SUN MUSE OFFICE SMO-0001  CD-JAPAN )


 現新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターである西江辰郎は、1976年09月生まれ。
 コレルリ、バッハ、モーツァルト、クライスラー、ラロとならべたリサイタル盤。
 自主制作盤らしい。16歳での録音である。

 彼はここでバッハの無伴奏ソナタ第1番を弾いている。
 立派な演奏だ。16歳でこのレヴェルなら、会場で聴いた人は、彼の将来に大いなる期待をいだいたものと想像される。
 同時収録のクライスラーやラロもなかなか聴かせてくれた。

 録音は残響を極力抑えた明快なもの。
 アルバムの最後で派手な声援が飛んでいるのがほほえましい。身内の応援団か。

 近年、続けて発表しているデュオ・リサイタル・シリーズCDの評判がいいようだ。
 そろそろ無伴奏の全曲録音を期待していい男であろう。
 彼は↑の辰巳明子、↓の藤原浜雄、ティボール・ヴァルガらに師事している。

 1993年04月05日、於東京都セシオン杉並。

(2009/07/04)




 

藤原浜雄
Hamao Fujiwara

BWV.1001
Nov. 19, 2007  live
( fontec FOCD9374   CD-JAPAN )


 待望の再録音――というにはもの足りなく、第1ソナタのみである。
 1985年の全曲はライヴ・レコーディング、それも一夜の一発録り。演奏も、一聴してそうと感じるほどに挑戦的であり、若さとエネルギーに満ちあふれたものだった。2LPのアルバムのタイトルも、実に、藤原浜雄 バッハに挑む≠ニなっていた。
 今回もライヴを収録。
 前回との比較であるが、今回のほうが圧倒的に上と断言できる。85年盤も魅力的ではあったものの、美と格、そして、言うまでもなく熟成度が違う。歯切れの良さと哀愁が、ふんだんにたたえられており、また一つこの曲の名演奏を得た、というよろこびが胸奥から湧いてくるようだ。音色も、録音のせいか、艶がのり、みずみずしくなったように感じられた。
 テクニックのおとろえはまったくない。

 前回とのタイミング比較表である。85年のLPには時間の記載がないため、手動計時による。

 

Adagio

Fuga: Allegro

Siciliana

Presto

1985

4:09

5:24

2:55

1:40

2007

3:52

5:09

2:50

2:27

 前二楽章の時間をみればわかるとおり、今回は前回にはなかったスピードが加わり、スケール感を増した。プレストでの差が大きいのは反復実行の有無によるものである。この2007年録音では前半部のみリピートしている。
 録音は、残響を取り入れ、空間を意識したもの。ゆたかなこの残響には名状しがたい清涼感があり、すばらしい雰囲気を生んでいる。
 
 2007年11月19日、於東京紀尾井ホール。

(2008/02/14)




 

堀米ゆず子
Yuzuko Horigome

BWV.1001/03/05
1986/1987
( CBS SONY-Japan  32DC-1012  CD-JAPAN )


 このソナタ集を発売と同時に買い、そのすばらしさにおどろき、それこそ繰り返し聴いた。
 以前は、この堀米盤と、逆にパルティータ集しか録音していない漆原朝子盤を組み合わせて全集CDをつくり、聴いていたりした。
 第3パルティータも別で入れているが、なぜかあちらは今ひとつだった。ここらで全曲まとめて録音してくれぬものか。彼女のシャコンヌはすばらしい、と海外サイトで絶賛されている。

 録音データは以下のとおり。
 1986年06月17&18日(no.2&3)、1987年1月08&09日(no.1)。於宮城県中新田バッハホール。
 

(2007/10/08)




 

アドルフ・ブッシュ
Adolf Busch

BWV.1001
1948&1934  LIVE
( Music & Arts CD-1244  CD-USA )


 アドルフ・ブッシュのバッハ無伴奏は、パルティータ第2番とソナタ第3番がディスクに刻まれていて、ながらくその2種しか聴くことができなかった。それが、最近になって、ソナタ第1番が発見された。
 だが、当初は完全ではなかった。
  
 この録音が現在のかたちで世に出るまでには、ちょっとしたいきさつがあったようである。
 1995年ごろ、第1楽章が欠落した未完成版が発見されてMusic & Arts社などがCD化(M&A社のはCD-877)、市場に出まわっていたのは、ずっとその未完成版だったらしい。デンマークでのライヴだった。
 ところがおよそ15年後の2010年(ごろ)、第1楽章の演奏が見つかった。こちらはアメリカで録られたものだった。
 そこでMusic & Arts社は両者を合体させて完成版≠ニし、既発盤収録の未完成版≠ニ差し替えることにした。さらに、この15年間にあらたに発見されたかどうしたかの未発表録音を追加サービス。番号も変更、出直しリリースした。ディスクは3枚組だったのが4枚になったが値段は据え置いた。
 それが、この演奏を収録した4枚組のセット(CD-1244)である。
 
 足りなかった第1楽章だけがうまい具合に見つかるなんてできすぎたような話だが、それはさておき、ともかくブッシュの第1ソナタ全楽章が聴けることはこの上ないよろこびと言わねばなるまい。
 演奏者が同じとはいえ、別の時代、別の場所で演奏されたものをつなげて仕上げるというこの苦しい細工をどうとるかは人それぞれであろうが、アドルフ・ブッシュの第1ソナタを最初から最後まで聴ける魅力には抗しがたく、私自身はありがたいものとして受容している。
 
 頑固一徹、厳格そのもの、融通の利かぬバッハは、文句をつけるとゲンコツが飛んできそうな雰囲気がある。有無を言わさぬ圧倒的な説得力は、時代、スタイル、技巧、すべてを超えて聴き手の心を直撃する。
 表現者としての矜持、情念、生きざまを感じさせる、きわめてドラマティックな音楽となっている。
 
 このセットでは、ほかにもブラームスやシューベルトなど、今もって輝きをうしなわぬ名演奏を聴くことができる。ゼルキンのピアノもすばらしい。
  

(2011/12/03)




 

アドルフ・ブッシュ
Adolf Busch

BWV.1005
1946
( CBS SONY-Japan  SOCU 17  LP-JAPAN )


 バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタの演奏史を語るうえで、絶対に欠かすことのできぬアドルフ・ブッシュ。
 彼の無伴奏は、ながらくこのソナタ第3番、パルティータ第2番の2曲しか聴けなかったが、最近、ソナタ第1番のライヴがCDになっている。
 
 演奏は、文句なしにトップクラス。ひょっとすると、この曲のベストか。
 ともかく、さすがはブッシュである。
 1946年の録音というが、驚異的と言っていい高音質。
 
 余計なことながら、同時代のエネスコの人気が今なお高い。だが私自身は(すくなくとも無伴奏演奏においては)、ブッシュのほうが一段上とみている。
 

(2011/04/02)




 

ミハイル・フィヒテンゴルツ
Mikhail Fikhtengoltz

BWV.1001&1002
1984
( MELODIYA C10 21163 005  LP-USSR )


 名手・フィヒテンゴルツによるすばらしいバッハ。
 第1ソナタと第1パルティータの2曲をLP1枚に刻んでいる。
 
 彼は第2ソナタ&第3パルティータをメロディアに残しているほか、第1パルティータ&第2パルティータ(※GREAT HALL。いずれもライヴ)が1枚のCDになっている。本盤はスタジオ・レコーディングなので、CDとは別演奏。
 つまり、あと第3ソナタが発見されれば、フィヒテンゴルツによる全曲が出そろうことになる。
 
 ともかく、いずれにおいても、最高ランクのパフォーマンスを聴かせてくれており、とりわけすぐれているのはここに入っているソナタ第1番だ。この曲には名演が多数存在するが、そのなかでも、フィヒテンゴルツによるこの演奏は一頭地を抜いており、現在のところ、第1ソナタの私的ベストとなっている。
 第1パルティータも劣らずすばらしい。
 
 録音もきわめて優秀である。
 名盤。
  

(2011/04/24)




 

ゲルハルト・ヘッツェル
Gerhart Hetzel


BWV.1003
1962
(DGG 004 224)


 不慮の事故で亡くなったゲルハルト・ヘッツェルの残した貴重なバッハ。
 ウィーン・フィルハーモニーの名コンマスとして知られているが、これは1962年の録音。
 彼は22歳、ウィーン・フィル入団の7年前、その前のベルリン放送交響楽団入団の前年の演奏である。そうとうに有望視されていたのに違いない。

 演奏はそれほど完成されたものではないが、なにぶんヘッツェルの無伴奏である。「聴けるだけマシか」と納得せざるをえない。

 52歳で亡くなっている。登山中の転落事故だった。その数ヶ月前に入れたモーツァルトのディヴェルティメント(DENON)を好きでよく聴く。このころに、バッハの無伴奏をもし……と考えてもしかたないことを考えてしまう。


(2007/10/08)




 

ユーディ・メニューイン
Yehudi Menuhin

BWV.1001
1933
(HIS MASTER'S VOICE D.B.2007/8  78s)


 メニューインによる第1ソナタのファースト・レコーディング。
 SPレコードである。12インチ2枚四面。ちなみに、フーガは二面にまたがっている(第2面すべてと第3面の途中まで)。

 1933年の録音であり、最初の全曲セットにふくまれているものとは異なる。あちらは1935年だ。
 彼は1916年生まれであるから、17歳時の演奏。さすがにヤング・メニューインはすばらしく、この歳でこの貫禄とは恐れ入るばかり。

 この33年盤は未CD化のはずで、ひょっとするとLPにもならなかったのではないか。
 35年盤と比較してみて、両者の演奏自体に差異は認められるものの、それは大きいものではなく、再録音せねばならぬほどだったかどうか……。
 録音が気に入らなかったのだろうか。35年盤のほうが直接音に迫力がある。一方、この33年盤はマイクとの距離がやや遠い。が、そのぶん、その場の雰囲気もろとも盤面に刻まれている感じがあり、自然と言える。
 いずれにしても、メニューイン自身、なにかが気に食わないから入れ直したのだろうが、私の判定は、ぶっちゃけ、こちら、33年盤のほうがいいような気がしている。
 ただ、SP復刻というのは、担当者のセンスに負うところ甚大であり、それゆえ復刻CDには警戒を要する。本来の姿を伝えていないケースがむしろ多く、ときとして演奏自体の印象を変えてしまうことすらあるからだ。したがって、ここにおける両者の比較は、35年盤にとってはやや不利な可能性がある、と念のためにことわっておいたほうがいいかもしれない。
 両盤のタイミングを比較表にしてみた。33年盤は実測値(※とりあえず回転数78に設定しているが、アテにはならない)。35年盤はCD(仏EMI CHS 7 63035 2)よりそのまま転載。
 

 

Adagio

Fuga: Allegro

Siciliana

Presto

1933

4:10

4:49

3:12

3:36

1935

4:22

5:11

3:01

3:51


 2年後にはやくも再録音とは、よくまあ、あの時代でそんなぜいたくが通ったなと感心するが、当時のメニューイン人気のなせる技だったか。

 

(2008/05/07)




 

ダヴィッド・オイストラフ
David Oistrakh


BWV.1001
1947
( MELODIYA D4044/5  LP-USSR )


 大オイストラフの残した唯一のバッハ無伴奏。
 息子のイーゴリも、ソナタ第1番しか残さなかった。

 スケールが大きく、腕力を感じさせる。さすがだ。
 重音奏法やヴィブラートの安定感、ときおり顔を出すポルタメントもハイフェッツのようにケバケバしいものではなく、じゅうぶんに音楽的である。

 HMVのレヴューによれば、1947年の録音という。音は、年代を考えればいいほうだ。
 かつては幻≠ニいっていい録音だった。私も入手に苦労した思い出がある。
 今では海外の廉価メーカーがCD化して販売している。

 全曲でなくても、せめてパルティータ第2番を残してくれていたらと惜しまれる。
 たしかスターンが語っていたと思うが、オイストラフは私的な場所で無伴奏をよく弾いていたとか。
 オイストラフには、まだ発掘の余地はおおいにあると思われるので今後に期待したい。
 

(2009/09/10)




 

イーゴリ・オイストラフ
Igor Oistrakh


BWV.1001
1950s
( Opera 3404  LP-W.GERMANY )


 大オイストラフJr、イーゴリ・オイストラフの残した唯一のバッハ無伴奏。
 奇しくも、親父もソナタ第1番しか残していない。

 イーゴリは偉大な親父とはだいぶ水があくように思われている節があり、それはたしかかもしれないが、この第1ソナタ(のディスク)に限っての比較では、イーゴリもかなり健闘している。
 この人の演奏をほかに聴いていないが、これは味わい深い好演だ。ポルタメントにも洒脱なセンスが感じられて、鼻につかない。このあたり親子に共通するものを感じる。

 1950年代の録音であるはずで、ひじょうに良好なモノラル。
 Operaは西ドイツのレーベルで、自主企画のほか、他社音源をいろいろとリリースしていたようであり、これなどもその一つ。オリジナルを聴いてみないことにはなんとも言えぬが、なかなかの好復刻ではなかろうか。10インチ盤である。


 ※ダヴィッドとイーゴリはそれぞれ第1ソナタしか残さなかったものの、イーゴリの息子、すなわちダヴィッドの孫であるヴァレリー・オイストラフが全曲録音を果たした。
 

(2009/09/10)




 

タチアナ・オルジッチ
Tatjana Olujic


BWV.1001
P1985
( Jugodisk LPD-0251  LP-YUGOSLAVIA )


 タチアナ・オルジッチは、旧ユーゴスラヴィアのヴァイオリニスト。
 (以下、近日掲載予定)

 

(2011/04/0)




 

ワディム・レーピン
Vadim Repin


BWV.1003
around 1989
( MCA CLASSICS-A&E AED-68009  CD-USA )


 ワディム・レーピンが、17歳時の演奏である。発行元はのちに消滅した、米ソが手を組んで設立したアート&エレクトロニクス社。
 彼はこの年、エリーザベト王妃国際コンクールで優勝している。ブックレットにはそれについての記載がないので、その直前に制作されたのだろう。だとすると、商品に思わぬ付加価値がついたわけで、A&E社は小躍りしたのではあるまいか。同社は、セルゲイ・スタドレルのバッハの無伴奏パルティータ全集を出している。

 名の知れた演奏家であるが、これまでまったく縁がなく、ディスクはこれ1枚しかもっていない。
 結論から言って、未成熟。バッハは心に響いてくるものではなく、皮相的だ。カップリングのブラームスの第3ソナタも同様であり、もう1曲のヴィエニャフスキだけはそこそこ愉しめた。

 録音もよくない。高域が鋭すぎて、ヘッドフォンで聴いた場合とくにそうであるが、鼓膜に突き刺さるような刺激がある。

 ワディム・レーピンは1971年、シベリア西部、オビ川沿岸の都市・ノヴォシビルスク生まれ。現在も活躍中で、ファンも多いようだが、このディスクは彼にとって名誉となるものではなさそうだ。
 

(2010/02/01)




 

ハンスハインツ・シュネーベルガー
Hansheinz Schneeberger


BWV.1001&1003
P1979
( ACCORD ACC 11 380  LP-FRANCE )


 シュネーベルガーは1987年に無伴奏全曲をスイスのJecklin にアナログ録音(ADD)している(→ )。そこでのシャコンヌは10分半という快速演奏だった。
 これはその約10年前に、フランスのACCORDに入れたもの。第1ソナタと第2ソナタの組み合わせ。このほかにも残しているかどうかはわからない。しかし、今まで見かけたこともない。おそらくこの2曲を入れただけではあるまいか。

 1970年代後半の録音であるはずで、こちらも当然アナログであるが、すばらしい音質だ。残響も質的に豊かであり、レコード≠フよさをあらためて確認させられた。
 演奏も、2曲ともに、87年盤のような、刺激的なものではない。あれもあれで魅力的ではあったが、私的にはこちらを採りたい。
 第2ソナタのアンダンテにおける魅惑の香りは、ちょうど、夏が終わりつつある今の季節にピッタリであり、引きこまれてしまう。
 全曲でないのが残念であるが、ここで全曲をやっていたら、87年のセットは生まれなかったかもしれない。

 以下、新旧のタイミングを比較表にした。10年たたぬうちにかなりスピードアップしているのが歴然である。


   BWV.1001 (※両盤とも、第4楽章のリピートはすべて履行)

 

Adagio

Fuga: Allegro

Siciliana

Presto

1979

3:46

5:43

2:52

3:42

1987

2:59

5:03

2:36

3:34


   BWV.1003 (※両盤とも、第3楽章&第4楽章のリピートはすべて履行)

 

Grave

Fuga

Andante

Allegro

1979

4:12

8:35

5:48

6:08

1987

3:35

7:43

5:05

5:53


(2009/09/10)




 

トッシー・スピヴァコフスキー
Tossy Spivakovsky

BWV.1001
1950s?
( COLUMBIA ML-2089  LP-USA )


 シベリウスの名演奏で知られるトッシー・スピヴァコフスキーが、正規に残した唯一のバッハ無伴奏である。
 これはおそらく、全無伴奏レコードのなかで、もっとも粗っぽくてデリカシーを欠いた演奏ではあるまいか。エエ加減さでいえば、すくなくとも私の知るかぎり、この録音の右に出るものはない。

 第1楽章アダージョの最後では弓を二度も返していたりしておどろかされるが、第2楽章ラストでもそれをやっている。
 そればかりではない。ケッタイ中のケッタイなのが、スピヴァコフスキーはここで湾曲弓を使っているらしいのに、だんだんメンドーになってきたのか、途中からこの弓の特徴である毛を弛緩させての和音一発弾きを放棄してしまうことである。
 裏面はベートーヴェンの第8ソナタ。こちらはさすがの演奏となっている。やる気を出しているようだ。

 ジャケにはなにも書かれていないので、以上は私の邪推にすぎない。
 ただ、彼が湾曲を使っているらしいことは、こちらでも触れられている。
 
 ケッタイだが、にくめない珍演。モノラル10インチ盤。
 

(2007/12/10)




 

ヴィクトル・トレチャコフ
Viktor Tretyakov

BWV.1001
Jan 14, 1965
( MELODIYA D 021491/2  LP-USSR )


 旧ソ連の大物・トレチャコフ唯一の無伴奏である。
 最近発売されたトレチャコフ・エディション(10CD)によると、このバッハは1965年01月14日の録音というから、彼がチャイコフスキー国際で優勝する前年だ。これがデヴュー盤らしい。
 確信・自信のようなものが伝わってこず、こちらのアンテナが震えるような一瞬もない。ずいぶんもの足りぬ演奏だ。裏面はパガニーニ集となっているが、こちらも平凡。ゆえに、1年後のチャイコフスキーを聴くと、いったいなにがあったのかと思うほどの成長ぶりに驚愕させられる。
 録音はモノラルのようである。
 彼はこの後、無伴奏を入れていないわけだが、現在62歳(2008年現在)か。まだ期待を捨ててはならないだろう。

 トレチャコフが優勝した1966年のチャイコフスキー国際での入賞者は、レヴェルが高かったのか、ほとんどが仕事をしている。
 第2位が潮田益子とカガン、第3位に佐藤陽子とオレグ・クリサ……と、8位までに10名の名があり、8名が無伴奏の録音を残し、うち4人は全曲録音を果たしている。
 興味のある人もおられるだろうから、列挙してみる。全曲は潮田、カガン、チュマチェンコ、ヴィンニコフ。佐藤とフリードマンがシャコンヌ。トレチャコフが第1ソナタ。クリサが第1ソナタと第1パルティータ――となる。
 

(2008/05/31)





(以下続)



chaconne

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